クックパッドVS楽天レシピの例から見るゲーミフィケーションの有効な使い方(2/2 ページ)

» 2014年11月18日 08時00分 公開
[深澤祐援,Credo]
Credo
前のページへ 1|2       

ゲーミフィケーションを導入して失敗する原因とは

 ゲーミフィケーション導入における失敗要因には二つのものが考えられます。

  1. 利用するユーザを無視したデザインになっている
  2. ユーザがソーヤ効果にはまり、離脱率が高まる

 今回取り上げる例は楽天が展開する“楽天レシピ”というサービスです。楽天レシピは2010年10月1日にオープンし、レシピ投稿などでそのまま現金として使えるポイントを付与する点や、楽天が約7000万人の会員を持つ巨大プラットフォームであることから、「クックパッドを抜く」とまで言われていました。

 しかし、今日、楽天レシピはクックパッドほどの定着度を見せていないようです。

 以下の図はGoogleが提供するDisplay Plannerでアクセス数を推定したものです。cookie数がユニークユーザ数とほぼ同じ意味なのですが、その値に大きな差がついていることが分かります。

 何故、楽天レシピは強力な動機づけの手段となり得る現金ポイントサービスを実装したにもかかわらず、成功しなかったのでしょうか。

1.ユーザのタイプを理解していない

 楽天レシピを利用するユーザは普段から楽天を利用するユーザであると考えられます。

 楽天の中で有名なサービスは通販であること、またレシピサイトであることも考慮して本稿では楽天レシピのユーザ層を、新しいものを探すことに楽しみを覚えるエクスプローラー、商品などに関してレビューを交わし合ったりするソーシャライザーの要素が強い主婦層であると仮定します。

 こうしたユーザタイプに対して、ポイントを現金に換金できることを押し出し、他の人より多くのレシピを投稿することを促す楽天レシピの仕組みは適切でない可能性が高いです。

 そもそもレシピサイトを利用する人たちは、自分のレシピを人に見てもらうことを前提としている以上、相互的な関わりを求めていると考えられます。こういった人たちに対して、ポイントインセンティブという極めて自己利益的なシステムは殆ど魅力的に映らないのではないでしょうか。

 先ほど、バートルテストの項で挙げた図で言えば、ポイントインセンティブはどちらかと言えば主体的な関わり、つまりアチーバーやキラーに向けたシステムではないかと思われます。

 つまり、短期的には集客力があっても長期的に考えるとプレイヤータイプが合っていない人が殆どなので、離脱率が高くなってしまいます。このことは次項にも関わってくる部分です。

2.ソーヤ効果に陥るユーザ

 ダニエル・ピンク氏は著書『モチベーション3.0』の中で、ポイントやバッジなど何らかの報酬は人のモチベーションにネガティブな影響を与えることもあるという自説を次のように展開しています。

 “報酬は行動に対して奇妙な作用を及ぼすのだ。興味深い仕事を、決まりきった退屈な仕事に変えてしまう。遊びを仕事に変えてしまう場合もある。よって、報酬により内発的動機付けが下がると、成果や創造性や、高潔なふるまいでさえも、まるでドミノ倒しのようになるおそれがある。これを<ソーヤ効果>と呼ぶことにしよう”(注:マーク・トウェインの『トムソーヤの冒険』のペンキ塗りのエピソードから名前をとっている)

 これもまたユーザが定着しないことを示す一つの理由です。報酬をもらうことと自分自身の目的が一致している場合にはソーヤ効果は起きませんが、楽天レシピのユーザ定着率が低いことを考えると多くのユーザがレシピを投稿することが作業になってしまい、「楽しくない」と感じていた可能性が高いと考えられます。

ゲーミフィケーションを有効に使うために

 ゲーミフィケーションという方法論は今やわざわざ概念として理解せずとも至る所に溢れています。スマートフォンアプリには殆どにその意図が見られます。ただ、失敗した事例が示すようにただポイント制にしたり、バッジや称号システムを導入しても意味がありません。ゲーミフィケーションの最終的な目的はあくまでサービスを利用するユーザの満足度を高めることにあります。

 このことを意識しながら、皆さんも様々なサービスの中にあるゲーミフィケーションを感じてみてはいかがでしょうか。

[参考文献一覧]



前のページへ 1|2       

Copyright © Credo All rights reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/01/news003.jpg パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. /nl/articles/2412/01/news031.jpg 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. /nl/articles/2412/03/news082.jpg 「ほ、本人……?」 日本に“寒い国”から飛行機到着→降りてきた“超人気者”に「そんなことあるw?」「衝撃の移動手段」の声
  4. /nl/articles/2412/03/news111.jpg 才賀紀左衛門、娘とのディズニーシー訪問に“見知らぬ女性の影” 同伴シーンに「家族を大切にしてくれない人とは仲良くできない」
  5. /nl/articles/2412/02/news009.jpg 【今日の難読漢字】「誰何」←何と読む?
  6. /nl/articles/2412/05/news006.jpg 「今やらないと春に大後悔します」 凶悪な雑草“チガヤ”の大繁殖を阻止する、知らないと困る対策法に注目が集まる
  7. /nl/articles/2412/03/news148.jpg 武豊騎手が2024年に「武豊駅に来た」→実は35年前「歴史に残る」“意外な繋がり”が…… 街を訪問し懐古
  8. /nl/articles/2412/03/news092.jpg 大谷翔平、“有名日本人シェフ”とのショット 上目遣いの愛犬デコピンも…… 「びっくりした!!」「嬉しすぎる」
  9. /nl/articles/2412/03/news055.jpg ハローマックのガチャに挑戦! →“とんでもない偏り”に同情の声 「かわいそう」「人の心とかないんか」
  10. /nl/articles/2412/03/news179.jpg 「口座や住居が……」 坂口杏里、SNSで“重要個人情報を垂れ流し” 「かなりまずい状態」「大丈夫じゃなさそう」心配の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  4. 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
  5. 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
  6. パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
  7. アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
  8. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
  10. PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」