クックパッドVS楽天レシピの例から見るゲーミフィケーションの有効な使い方(2/2 ページ)
ゲーミフィケーションを導入して失敗する原因とは
ゲーミフィケーション導入における失敗要因には二つのものが考えられます。
- 利用するユーザを無視したデザインになっている
- ユーザがソーヤ効果にはまり、離脱率が高まる
今回取り上げる例は楽天が展開する“楽天レシピ”というサービスです。楽天レシピは2010年10月1日にオープンし、レシピ投稿などでそのまま現金として使えるポイントを付与する点や、楽天が約7000万人の会員を持つ巨大プラットフォームであることから、「クックパッドを抜く」とまで言われていました。
しかし、今日、楽天レシピはクックパッドほどの定着度を見せていないようです。
以下の図はGoogleが提供するDisplay Plannerでアクセス数を推定したものです。cookie数がユニークユーザ数とほぼ同じ意味なのですが、その値に大きな差がついていることが分かります。
何故、楽天レシピは強力な動機づけの手段となり得る現金ポイントサービスを実装したにもかかわらず、成功しなかったのでしょうか。
1.ユーザのタイプを理解していない
楽天レシピを利用するユーザは普段から楽天を利用するユーザであると考えられます。
楽天の中で有名なサービスは通販であること、またレシピサイトであることも考慮して本稿では楽天レシピのユーザ層を、新しいものを探すことに楽しみを覚えるエクスプローラー、商品などに関してレビューを交わし合ったりするソーシャライザーの要素が強い主婦層であると仮定します。
こうしたユーザタイプに対して、ポイントを現金に換金できることを押し出し、他の人より多くのレシピを投稿することを促す楽天レシピの仕組みは適切でない可能性が高いです。
そもそもレシピサイトを利用する人たちは、自分のレシピを人に見てもらうことを前提としている以上、相互的な関わりを求めていると考えられます。こういった人たちに対して、ポイントインセンティブという極めて自己利益的なシステムは殆ど魅力的に映らないのではないでしょうか。
先ほど、バートルテストの項で挙げた図で言えば、ポイントインセンティブはどちらかと言えば主体的な関わり、つまりアチーバーやキラーに向けたシステムではないかと思われます。
つまり、短期的には集客力があっても長期的に考えるとプレイヤータイプが合っていない人が殆どなので、離脱率が高くなってしまいます。このことは次項にも関わってくる部分です。
2.ソーヤ効果に陥るユーザ
ダニエル・ピンク氏は著書『モチベーション3.0』の中で、ポイントやバッジなど何らかの報酬は人のモチベーションにネガティブな影響を与えることもあるという自説を次のように展開しています。
“報酬は行動に対して奇妙な作用を及ぼすのだ。興味深い仕事を、決まりきった退屈な仕事に変えてしまう。遊びを仕事に変えてしまう場合もある。よって、報酬により内発的動機付けが下がると、成果や創造性や、高潔なふるまいでさえも、まるでドミノ倒しのようになるおそれがある。これを<ソーヤ効果>と呼ぶことにしよう”(注:マーク・トウェインの『トムソーヤの冒険』のペンキ塗りのエピソードから名前をとっている)
これもまたユーザが定着しないことを示す一つの理由です。報酬をもらうことと自分自身の目的が一致している場合にはソーヤ効果は起きませんが、楽天レシピのユーザ定着率が低いことを考えると多くのユーザがレシピを投稿することが作業になってしまい、「楽しくない」と感じていた可能性が高いと考えられます。
ゲーミフィケーションを有効に使うために
ゲーミフィケーションという方法論は今やわざわざ概念として理解せずとも至る所に溢れています。スマートフォンアプリには殆どにその意図が見られます。ただ、失敗した事例が示すようにただポイント制にしたり、バッジや称号システムを導入しても意味がありません。ゲーミフィケーションの最終的な目的はあくまでサービスを利用するユーザの満足度を高めることにあります。
このことを意識しながら、皆さんも様々なサービスの中にあるゲーミフィケーションを感じてみてはいかがでしょうか。
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