インタビュー
» 2015年02月27日 07時00分 公開

『学校へ行けない僕と9人の先生』を描き終えた棚園正一さんに聞く9つの質問

小〜中学校時代、不登校だった著者の実体験を基にした『学校へ行けない僕と9人の先生』。連載が終了し、単行本の発売を控えた今、棚園正一さんに聞いた。

[西尾泰三,eBook USER]
学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一 学校へ行けない僕と9人の先生 単行本の書影

 不登校だった著者の実体験を基にした棚園正一さんのマンガ『学校へ行けない僕と9人の先生』。双葉社の「WEBコミックアクション」で2014年1月から11月まで連載されたこの作品が、単行本として2月27日に発売される(なお現在、WEBコミックアクションでは1〜3話が試し読みとして公開されている)。

 eBook USERでは、この作品に早くから注目し、過去には棚園正一さんへのインタビューもお送りした。同作を描き終え、単行本発売に至った今、棚園さんの胸に去来したものはどんな思いなのだろう。作品名になぞらえて9つの質問を投げかけてみた。


みんな違うのが当たり前、自分で見つけて気づくことが大事

―― 棚園さんお久しぶりです。前にインタビューさせていただいたのはもう1年前になるんですね。

 『学校へ行けない僕と9人の先生』の連載お疲れさまでした。連載を終えられ、今回コミックスとして発売されるということで、少しお話をうかがえればと思います。この作品はWeb連載で公開され、Web上では反響もよく見かけました。描いている途中、あるいは描き終えて、何か思うところなどはありましたか?

棚園 皆さまから多くの感想を頂き、作品を自分へのメッセージのように受け止めて頂いた方もいらしたようで、とても励みになりました。

 この作品で描いた出来事、そして先生、家族、友達の誰が欠けていても、今、漫画を描き続けられている自分はなかったと思うので、自分は周りの人に恵まれていたのだなと改めて感じました。

学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一

―― 本作では、フツウでありたい、フツウでいたい、といった「普通(フツウ)の呪縛」とでも呼ぶべき悩みが随所に出てきますよね。今の棚園さんから見て、普通、とはどんなイメージで、それは人生においてどれくらい重要な価値観でしょう。

棚園 幼いころの自分には、大多数の皆がやっていることが「フツウ」でした。そして、幼い故に思考の幅が狭いため、それができることが人としての合格ラインだと思い込んでいたんです。

 でも、いろいろな人がいて、それぞれに悩みや上手くいかないことがあって、結局「フツウ」なんてないんだと気付きました。だから、周りと比べたりせず、精一杯、自分が納得できるように過ごすのが大事なのだと思っています。上手くいっていない時は、なかなかそう思えず苦しい時もありますが、その繰り返しだと思いますね。

学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一

―― 以前、松岡正剛さんにインタビューさせていただいたのですが、その中で、「心の中にわだかまっているものは自分で物語が上手な方へ向かえない」という旨のお話がありました。幼かったころの棚園さんも、自分で(自身の)物語を上手な方向に進めようとする際にストレスを感じたのではないかと想像するのですが、それはどのようにしてよい方向に進み得たのでしょうか。

棚園 鳥山(明)先生とお会いしたことで、こんな特別なことが自分に起こるだなんて、きっと漫画の神様は自分を見守っていてくれているのだなと、勝手に思い込むようになりました。ここでいう神様は、鳥山先生や手塚治虫先生のような具体的な人物ではなく、もっと抽象的なものです。

 その後も上手く行かないことはたくさんありましたが、描くことを辞めさえしなければ、今は上手くいっていなくても必ず良い方向へ向かうと信じ切っていました。その気持ちが強さにもなっていったのだと思います。

学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一

―― 学び、という観点でお聞きしたいのですが、学びの機会というのは、必ずしも学校の中だけにあるのではないと思います。棚園さんもさまざまな体験を通して学ばれてきたわけですが、棚園さん自身にとって、最も重要な“学び”を1つ挙げるとすれば?


棚園 「ひとつのことを続ける」ということです。それが僕の場合はマンガでした。先ほどお話ししたように、なかなか上手くいかなくて、辞めようと思ったことも数知れないんですが、鳥山明先生に出会えたのだから自分がマンガを描くのは運命なんだ、ここで辞めたら人生もっと上手くいかなくなる、と自分に言い聞かせることで続けることができました。

―― 9人の先生たちとの出会いは、どれも意味があるものだと思いますが、もしいずれかの出会いがなかったとしたら、棚園さんの現在はどう異なるものになっていましたか? (第1話で描かれた)分からないことを分からないと正直に言って先生から突然のビンタを食らったのも意味があったということでしょうか。

学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一 第1話より

棚園 間違いなく違うものになっていたと思いますね。少なくとも、こんなふうに漫画を描き続けてこなかったでしょう。第1話で登場した「大嶋先生」に対しても、恨みに思う感情はなくて、漫画を描く人生を選んだ自分に必要な出来事だったと思っています。

―― 現在の棚園さんが、同様の苦しみを感じている方に“先生”として接するとして、どんな心構え・姿勢で、どんなことを伝えようと思いますか?

棚園 「みんな違うのが当たり前」ということです。何が正しいとか人に押し付けることで伝わるものはないと思うんです。自分で見つけて気づくことが大事なので、もし何かできるとしたら、そのための手助けだと思いますね。

もう十分頑張ってるけどな――再び心に刺さる鳥山先生の言葉

最終話では鳥山さんについに会うことに

―― 先ほどお話に出ましたが、この作品は、『ドラゴンボール』などの作品で知られる漫画家の鳥山明さんが9人の先生の1人であることも話題を集める一因となりましたよね。

 以前のインタビューでは、「自分がいつか漫画を連載して、その作品が単行本になるときに、鳥山先生に紹介文を書いていただく」ことを漫画家としての自分の夢だと思っていたと語られていますが、単行本には鳥山さんの寄稿による1600字超のコメントが収録されていますよね。夢がかなってしまったんじゃないですか?

棚園 鳥山先生のメッセージについては自然体な文章が、とても鳥山先生らしいと感じました。嘘がなくて嬉しく思いました。

 少し話が逸れますが、Web連載を描き終えた時に鳥山先生にお礼のお電話をしたんです。僕が「これからも頑張ります」と言った時に、鳥山先生が「もう十分頑張ってるけどな」とおっしゃってくれました。何気ない会話の中の一言でしたけど、僕にとっては、このときほど心の底から描き続けて来て良かった! と感じたことはなかったんです。自分にとって、とても大きな瞬間でした。

―― 今、描き続けること以外に新たな夢や目標などは生まれましたか?

棚園 正直、これまでの目標が具体的すぎていた分、今はまだ次の目標を探している途中です。ただ今回、初めての連載で実際に読者さんからの反響を聞き、より多くの人に喜んでもらえる漫画が描きたいと思うようになりました。

―― 次の作品がどんな方向性になるかも楽しみです。最後に、読者の方へメッセージをお願いできますか。

棚園 今、一番描きたいことを描き切りました。いろいろな方の、それぞれの経験に重なる瞬間があれば嬉しいです。

 ぜひ、読んでみてください。

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