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» 2015年07月03日 11時00分 公開

Twitter漫画の草分け「7と嘘吐きオンライン」も収録 心の距離に悩んだ時は「HERO個人作品集」をどうぞ虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第49回

「7と嘘吐きオンライン」以外も名作ぞろいですよ!

[虚構新聞・社主UK,ねとらぼ]

 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。

 まずはご報告。2014年を振り返る本連載のまとめ企画「『このマンガがすごい!』にランクインしなかったけどすごい! 2015」で、社主が1位に推薦したつくしあきひと先生の「メイドインアビス」(竹書房)の最新3巻の帯に、このたび推薦コメントを書かせていただきました!



 帯コメントは鈴木小波先生の「燐寸少女」(KADOKAWA)に続いて2度目なのですが、どちらもこの「ねとらぼ」連載を通じての縁で、編集部、そして何よりこの連載をお読みいただいているねとらぼ読者のみなさんにお礼申し上げます。「どうやら社主はマンガだけはウソを書いてないらしい」ということが知られつつあってうれしいです。

 さて、今回取り上げるのはスクウェア・エニックスから発売中、HERO先生の「HERO個人作品集」(〜8巻、以下続刊)です。先月約1年ぶりとなる第8巻「うつむく音はリンとして」が発売されました。現在以下の8巻が発売中。

  • 「7と嘘吐きオンライン」
  • 「交感ノートは喋らない」
  • 「パターンその1 駄目人間」
  • 「すべての希望にエールを」
  • 「アパートに澄む少年」
  • 「浮世メモの夢に、鬼」
  • 「褪せないシアンの少女A」
  • 「うつむく音はリンとして」

 毎巻3本の短編を収録した作品集で、初出はHERO先生の個人サイト「読解アヘン」から。単行本ではこの本編にそれぞれ「プロローグ」が加筆掲載されています。覚えている人も多いかと思いますが、先生の短編作品が注目を集めるきっかけの一つは当時「Twitter漫画」として話題になった第1作「7と嘘吐きオンライン」でした。


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画像画像 「HERO個人作品集」(〜8巻、以下続刊)→ 商品ページ


他人が信じられなくなったり、心の距離が測れなくなったときに

 さて、この「HERO個人作品集」には計24本の短編が収められていますが、その大きな特徴はコミュニケーションのあり方と言っていいでしょう。

 Twitterを通して自分の気持ちを表に出したひさこ(7と嘘吐きオンライン)、2人だけのノートを介し文字だけで気持ちを伝えあっていた三笠くんと斉藤さん(交感ノートは喋らない)、なぜか自我を持ってしまったエロゲのヒロイン・えなとディスプレイ越しの共同生活を送る“キモオタ”まひる(微熱ディスプレイの世界)、楽に死ねる薬を買うためコンビニでバイトを始める圭太(すべての希望にエールを)――。彼ら・彼女らの多くがリアルでの人付き合いが苦手、あるいは交わりを拒絶している内向的な性格の持ち主です。

 単なる内気な性格の子から、いじめが原因で家に引きこもった少年まで、相手に面と向かって言いたいことが言えない彼・彼女たちは、マスコミ的に言えば「現実に適応できない子どもたち」として、ネガティブに取り上げられるような存在でしょう。

画像 「7と嘘吐きオンライン」より

 けれど、本作に登場する少年・少女たちがそのような社会不適合者として描かれることはありません。声には出せないけれど心の中には確たる自分を持っている――、自己を表に出すことが苦手な彼ら彼女らを世の中に結びつけるきっかけとして、本作にはTwitterがあり、エロゲがあり、自殺薬があり、それら物語の結末のほとんどは臆病な自分が他人と向き合うことを後押ししてくれる和解と赦(ゆる)しに満ちています。

「日の光すら入り込まなかった引きこもった生活に ディスプレイ越しの明かりを与えてくれた 彼女に ありがと なんて」(微熱ディスプレイの世界)

「自殺手伝ってくれてありがとうございました」(すべての希望にエールを)

「何かが変わるということは こわいことだけではないのだということ」(マリアと過ごした3日間)

 おそらくHERO先生の作品はその登場人物と同じ10代〜20代の若い世代から共感と支持を集めていると思うのですが、読んだ人の中には「でもハッピーエンドなのはマンガ(フィクション)だからじゃん」とか「本当のコミュ力不全の気持ちが分かるものか」なんて考える人もいるでしょう。

 社主自身も10代後半から20代前半にかけて、そんな人付き合いが極端に少ない暗黒の思春期を過ごした人間なので、そう言いたくなる気持ちはとてもよく分かります。しかし、その暗黒の思春期を脱したきっかけは、表に出せない自分をさまざまなしがらみから解き放ってくれたインターネットという世界に入ったことでした。

 実際の利害関係にある人を前にして出したい自分を出すというのは大変勇気のいることで、「ドン引きされたらどうしよう」とか考えれば考えるほど、結局何もしないことがベストだという気になってしまいます。そんな自分にとってそのおびえのハードルをかなり下げてくれた画期的な出来事がインターネットの登場でした。内向的な性格とネットと言うと負の側面ばかりが強調されがちですが、決してそんなことはありません。

 確かにマンガはフィクションです。けれど、本作が描く人と人の新しい繋がり方はフィクションではない、とインターネット老人会青年部所属の社主は思うのです。

 「私だけの友達」だった幼なじみのスズが「みんなの友達」になっていったことへの仄暗い気持ちから、彼女の前で声が出せなくなってしまった少女・トキ(うつむく音はリンとして)、人前ですぐに赤面してしまうことをいじめられて以来ずっとマスクを着けたまま学校生活を送るようになってしまった咲口さん(くれない夕日のブラインド)――。2010年発売の「7と嘘吐きオンライン」から数えて8作目となった今巻「うつむく音はリンとして」でも、彼女たちの物語を通してその勇気ある一歩を支えてくれるHERO先生のスタンスは健在です。

 他人が信じられなくなったとき、心の距離が測れなくなったとき、そんなときに一度読んでみることをお勧めします。ちなみに約2作だけ異色のガチ怖い短編がありますが、どれかはあえて言いません。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。


(C)HERO・OOZ


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