Twitter漫画の草分け「7と嘘吐きオンライン」も収録 心の距離に悩んだ時は「HERO個人作品集」をどうぞ:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第49回
「7と嘘吐きオンライン」以外も名作ぞろいですよ!
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
まずはご報告。2014年を振り返る本連載のまとめ企画「『このマンガがすごい!』にランクインしなかったけどすごい! 2015」で、社主が1位に推薦したつくしあきひと先生の「メイドインアビス」(竹書房)の最新3巻の帯に、このたび推薦コメントを書かせていただきました!
帯コメントは鈴木小波先生の「燐寸少女」(KADOKAWA)に続いて2度目なのですが、どちらもこの「ねとらぼ」連載を通じての縁で、編集部、そして何よりこの連載をお読みいただいているねとらぼ読者のみなさんにお礼申し上げます。「どうやら社主はマンガだけはウソを書いてないらしい」ということが知られつつあってうれしいです。
さて、今回取り上げるのはスクウェア・エニックスから発売中、HERO先生の「HERO個人作品集」(〜8巻、以下続刊)です。先月約1年ぶりとなる第8巻「うつむく音はリンとして」が発売されました。現在以下の8巻が発売中。
- 「7と嘘吐きオンライン」
- 「交感ノートは喋らない」
- 「パターンその1 駄目人間」
- 「すべての希望にエールを」
- 「アパートに澄む少年」
- 「浮世メモの夢に、鬼」
- 「褪せないシアンの少女A」
- 「うつむく音はリンとして」
毎巻3本の短編を収録した作品集で、初出はHERO先生の個人サイト「読解アヘン」から。単行本ではこの本編にそれぞれ「プロローグ」が加筆掲載されています。覚えている人も多いかと思いますが、先生の短編作品が注目を集めるきっかけの一つは当時「Twitter漫画」として話題になった第1作「7と嘘吐きオンライン」でした。
他人が信じられなくなったり、心の距離が測れなくなったときに
さて、この「HERO個人作品集」には計24本の短編が収められていますが、その大きな特徴はコミュニケーションのあり方と言っていいでしょう。
Twitterを通して自分の気持ちを表に出したひさこ(7と嘘吐きオンライン)、2人だけのノートを介し文字だけで気持ちを伝えあっていた三笠くんと斉藤さん(交感ノートは喋らない)、なぜか自我を持ってしまったエロゲのヒロイン・えなとディスプレイ越しの共同生活を送る“キモオタ”まひる(微熱ディスプレイの世界)、楽に死ねる薬を買うためコンビニでバイトを始める圭太(すべての希望にエールを)――。彼ら・彼女らの多くがリアルでの人付き合いが苦手、あるいは交わりを拒絶している内向的な性格の持ち主です。
単なる内気な性格の子から、いじめが原因で家に引きこもった少年まで、相手に面と向かって言いたいことが言えない彼・彼女たちは、マスコミ的に言えば「現実に適応できない子どもたち」として、ネガティブに取り上げられるような存在でしょう。
けれど、本作に登場する少年・少女たちがそのような社会不適合者として描かれることはありません。声には出せないけれど心の中には確たる自分を持っている――、自己を表に出すことが苦手な彼ら彼女らを世の中に結びつけるきっかけとして、本作にはTwitterがあり、エロゲがあり、自殺薬があり、それら物語の結末のほとんどは臆病な自分が他人と向き合うことを後押ししてくれる和解と赦(ゆる)しに満ちています。
「日の光すら入り込まなかった引きこもった生活に ディスプレイ越しの明かりを与えてくれた 彼女に ありがと なんて」(微熱ディスプレイの世界)
「自殺手伝ってくれてありがとうございました」(すべての希望にエールを)
「何かが変わるということは こわいことだけではないのだということ」(マリアと過ごした3日間)
おそらくHERO先生の作品はその登場人物と同じ10代〜20代の若い世代から共感と支持を集めていると思うのですが、読んだ人の中には「でもハッピーエンドなのはマンガ(フィクション)だからじゃん」とか「本当のコミュ力不全の気持ちが分かるものか」なんて考える人もいるでしょう。
社主自身も10代後半から20代前半にかけて、そんな人付き合いが極端に少ない暗黒の思春期を過ごした人間なので、そう言いたくなる気持ちはとてもよく分かります。しかし、その暗黒の思春期を脱したきっかけは、表に出せない自分をさまざまなしがらみから解き放ってくれたインターネットという世界に入ったことでした。
実際の利害関係にある人を前にして出したい自分を出すというのは大変勇気のいることで、「ドン引きされたらどうしよう」とか考えれば考えるほど、結局何もしないことがベストだという気になってしまいます。そんな自分にとってそのおびえのハードルをかなり下げてくれた画期的な出来事がインターネットの登場でした。内向的な性格とネットと言うと負の側面ばかりが強調されがちですが、決してそんなことはありません。
確かにマンガはフィクションです。けれど、本作が描く人と人の新しい繋がり方はフィクションではない、とインターネット老人会青年部所属の社主は思うのです。
「私だけの友達」だった幼なじみのスズが「みんなの友達」になっていったことへの仄暗い気持ちから、彼女の前で声が出せなくなってしまった少女・トキ(うつむく音はリンとして)、人前ですぐに赤面してしまうことをいじめられて以来ずっとマスクを着けたまま学校生活を送るようになってしまった咲口さん(くれない夕日のブラインド)――。2010年発売の「7と嘘吐きオンライン」から数えて8作目となった今巻「うつむく音はリンとして」でも、彼女たちの物語を通してその勇気ある一歩を支えてくれるHERO先生のスタンスは健在です。
他人が信じられなくなったとき、心の距離が測れなくなったとき、そんなときに一度読んでみることをお勧めします。ちなみに約2作だけ異色のガチ怖い短編がありますが、どれかはあえて言いません。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
関連記事
- 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第48回:これがギャップ萌えなのか……! 御年64歳「長閑の庭」の榊教授に思わずキュン!(※社主は男です)
こんな64歳になりたい! - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第47回:全キルミストの必読書 「キルミーベイベー」のカヅホ先生が描く科学コメディ「カガクチョップ」は劇薬注意!
これキルミーよりアカンやつじゃないですか! - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第46回:私が今日死ぬからみんな優しくするの? 少年少女に突きつけられる「五時間目の戦争」の(非)現実
毎週金曜、五時間目。もしも「戦争へ行け」と言われたら……。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第45回:メガネ好きのメガネ好きによるメガネ好きのための漫画 松本救助「メガネ画報」がメガネホイホイすぎる
まぁまぁメガネどうぞ。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第44回:表現したいもの or 売れるもの バンドマンガ「フジキュー!!!」は創作者のジレンマといかに向き合うか
今回は別冊少年マガジンで連載中の「フジキュー!!! 〜Fuji Cue's Music〜」をご紹介。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第43回:あえて言おう! 百合にハズレなしと! 「ウソだと思って読んでみろ!」的・オススメ百合マンガ3選(2015年春版)
いやあ、百合って本当にいいものですね。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第42回:「人工心臓」をめぐる親子と姉弟の物語 「オルガの心臓」の続きが気になって眠れないので3巻はよ!
今回はITAN WEB COMICから、雨宮もえ先生の「オルガの心臓」を紹介します。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第41回:オチが見える? いいえ、真骨頂はその先です 個性派・中野でいちが描く、強くてはかない「十月桜」は2度咲く
ネタバレ厳禁! 第41回は、小説のような美しいセリフ回しと、デフォルメの効いた独自の絵柄で、人間の闇と美しさを描いた「十月桜」を紹介します。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第40回:その魅力、毒針のごとし ストライクゾーンは超狭いけど刺さる人にはクリティカル「死神ナースののさんの厄災」
担当患者が次々と死んでしまう“死神看護婦”野ノ崎のの。ある日、隔離病棟に入院している12歳の少年・左桂鶫(ツグミ)の世話を命じられ……。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第39回:あなたのことが食べたいの…… 「恋した相手を食べずにはいられない」ヒロインとの極限ラブコメ「壊れていてもかまいません」
「わたしが異星人でしかも八重蔵くんのこと食べたいとか言うから引いてるんだもん!」 → いや引くとかそういう問題じゃないから……!
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
-
ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
-
夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
-
ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
-
妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
-
人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
-
「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
-
「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
-
160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
-
「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた