comicoの世界観を広げるキーとは? 稲積社長が語る「comicoワールド」への道程(1/2 ページ)

完全オリジナル、フルカラー、縦スクロールといったユニークな特徴の無料コミックアプリで1000万ダウンロードを達成した「comico」。comicoは今、どんな課題を感じているのだろうか。comicoを運営するNHN PlayArtの代表取締役社長の稲積憲氏にeBook USER編集長の西尾が再び聞いた。

» 2015年07月23日 06時00分 公開
[西尾泰三eBook USER]
comico comico

 2013年10月にNHN PlayArtがリリースした無料のマンガアプリ「comico」。時を同じくしてリリースされた無料のマンガアプリが多数存在する中、comicoは2015年6月にアプリのダウンロード数1000万を突破。この領域で強烈な存在感を放っている。

 完全無料、毎日更新、フルカラー、縦スクロールで読み進めるスタイル――既存の出版ではほとんど見られなかったユニークな要素をたくさん持つcomicoが登場したとき、期待と不安が入り交じった声が多く見られた。しかし今や、1つの大きなムーブメントになったといってよいだろう。

 eBook USERでは約1年前、NHN PlayArt代表取締役社長の稲積憲氏にインタビューを行い、当時注目が高まりつつあったcomicoの取り組みについてじっくりとお話を伺った(『コミックはエンターテインメント――comicoはマンガをこう変える』参照)。

 あれから1年、ユーザーだけでなく、作家、業界からも注目を集めるようになったcomicoは今どういったフェーズにあるのか。稲積氏に再び話を伺う機会を得て、comicoのこれまでとこれからを聞いた。

NHN PlayArt代表取締役社長、稲積憲氏 NHN PlayArt代表取締役社長、稲積憲氏(撮影:矢野渉)

1000万ダウンロード突破、comicoに去来するものは

―― 前回インタビューさせていただいてから約1年。この間comicoは1000万ダウンロードという大台を超えてきました。すばらしい数字ですね。

稲積 1年前に取り上げて頂いてからさまざまな形で応援してくださる人が増え、本当にありがたく思っています。当初、「こういう風に成長できればいいな」と考えていたものが、ある意味想定した形、理想に近い形で実現できていると思っています。

―― 予定通りのペースだと。

稲積 「予定通り」という感覚はあまりなくて、「想定よりもいい形」だなと。

 comicoの場合、出版社さんのように有力なIPがあるわけでもなく、完全オリジナルのコンテンツを従来とは異なる形態で提供するところから始めました。そこにニーズは存在し、大きくしたいとも思っていましたが、本当に多くの作家さんに参加頂き、たくさんのユーザーさんに見て頂けるようになったことは想定以上によかったと思っています。

―― この1年を振り返ると、どんなことが大変でしたか?

稲積 一番難しいところは、ヒットコンテンツをいかに増やしていくか、ですね。幸い、『ReLIFE』という総合的にバランスやレベルの高い作品に恵まれました。この1年は、投稿作品の上位のものを定期的に公式作品化していくことに取り組んできましたが、それでもまだ今トップは依然として『ReLIFE』です。作品の数は増えましたが、本当にいい作品、愛される作品、突き抜けた作品を生み出すのは時間が掛かるものだと改めて感じています。

2016年にアニメ化も決定している『ReLIFE』はコミックス第4巻が8月12日発売予定。アプリでは全話無料で読むことができる

―― 『ReLIFE』とは異なる魅力を持った作品も多数生まれてきていると思いますが、comicoで人気になる作品に傾向などはありますか。

稲積 やはりティーンの方、もしくは20代前半の方が親近感を覚えるようなコンテンツが比較的人気になる傾向があるように見受けられます。ジャンルでいうと、日常ものだったり、学園ものが人気がありますね。

―― 既存の紙媒体で人気のジャンルとは違うものが出てきている印象ですか?

稲積 そうですね。少し違うテイストの作品が多いと思っています。これはスマートフォンで漫画を読もうとする読者層が関係しているのかもしれません。週刊のコミック誌などですと、購入が最初にくるわけですが、comicoは無料なので本当に気軽に見られる。コアな漫画のファンだけでなく、少しライトな層にもご利用頂いているからだと思っています。

数字で見るcomico(2015年5月末現在、画像出典:NHN PlayArt) 数字で見るcomico(2015年5月末現在、画像出典:NHN PlayArt)

comicoが今課題だと考えているのは?

comicoの課題を「IPの育成」「マネタイズ」「サービスの多様化」の視点で語る稲積氏 comicoの課題を「IPの育成」「マネタイズ」「サービスの多様化」の視点で語る稲積氏

―― comicoアプリ1000万ダウンロードはすごい数字ですが、とはいえこれがゴールではないですよね。この領域で先頭を行くcomicoが今、どんなことを課題としてとらえているのかをお聞きしたいです。

稲積 大きくは3つ、「IPの育成」「マネタイズ」「サービスの多様化」です。

 まず、IPの育成ですが、それぞれのIPをわれわれがエージェント的な役割を担って、世の中に打ち出していくことが重要になってきます。書籍化やアニメ化される作品も複数出てきて、実写化やゲーム化なども視野に入ってきたわけですが、こうしたアプリの外側での活躍の機会をもう少し増やしていきたいですね。

―― ゲームは御社の元々の強みもありますしね。

稲積 そうですね。まさにわれわれが得意としているところでもありますから。ただ、ゲームにフイットするものとそうでない作品がありますので、強引に推し進めるのではなく、作品ごとに見極めながら取り組んでいきたいと考えています。

―― 『ReLIFE』を筆頭に紙のコミックスとして出版されるものも増えてきました。ここにはどんな手応えをお感じですか。

稲積 最初にコミックスを出すときは、出版社さんから「アプリでは無料で公開されているのに本当に売れるの?」という懐疑的な声を頂くことがありました。しかし、スマートフォンで無料で公開していても、媒体や形式を変えてご提供することで買ってくださるお客さまがたくさんいらっしゃることが、まずは業界の方、特に書店さんにもお分かり頂けたのではないかと思います。ですので、comicoは出版社さんや書店さんとともに業界を活性化していくひとつの存在と思って頂けるとありがたいですね。

 同じくアニメについても、comicoの中でたくさんのタイトルが人気ランキングの形で紹介されていますので、ある程度ファンの確保だったり支持層の想定がしやすい状況の中で乗れるんじゃないかと思っています。

―― comicoの登場時に業界が抱いていたであろう意識はかなり変わったというところでしょうか。

稲積 まだまだです。恐らく当時のcomicoは何のイメージもされていなかったと思うんですよ。スマートフォン上のサービスであるcomicoが、紙の方でも積極的にやってきているんだなというのを少しずつ感じて頂けているのならありがたいですね。

―― 2月にはローソンとのコラボキャンペーンも展開されていましたよね。チャネル別に取り組みの温度差があるのかなと思いましたが。

稲積 そうではないですね。ローソンさんとやらせて頂いたのは、どちらかというと書籍販売というよりはcomico自体のプロモーションを意図したものです。日常の中でcomicoを浸透させたいという目的で、新規のユーザーや過去にアプリをダウンロードしつつも、しばらく使っていなかった方に興味を持って頂くことを意図しました。

―― 市場を見回すと、IPを外に出して露出を増やそうとする動きもみられます。comicoはまだそうした動きは見られませんが、この辺りにはどんな見解をお持ちですか。

稲積 漫画というコンテンツ自体が強い引きのあるものだというのが恐らくベースにあると思います。だからこそ媒体側もそれを求めるのでしょう。提供側からすると、どちらかというとプロモーションだと思いますので、comicoの場合も作品およびcomicoのプロモーションになるのなら、外のメディアに載っていても問題ないと思います。

―― わたしはてっきり、自社のプラットフォームにコアなユーザーが集まる仕組みを作るのが重要で、対外的な取り組みはさほど優先度が高くないのかなと思いましたが、そこはケースバイケースであると。では、作品を作るエコシステムという視点で考えたとき、投稿機能はどうでしょう。他のサービスでも投稿を受け付ける仕組みが作られつつありますが、そこでcomicoはどう違いを出せるのでしょう。

稲積 これは、comicoうんぬんではなく、スマートフォン向けのマンガサービスらしいものだなと思います。従来の紙出版ですと、ページ数にも制約があるからこそ出版社が選別していたわけですが、スペースの制約がないからそういう形にできると思いますし、そういう意味では各社さんがやられているのも当然という感じもします。

 われわれとしては、やはり大きなトラフィックがあり、これまでノベルを含め200人以上の方々にcomicoを通じてプロの作家としてデビューして頂いていますので、他のプラットフォームよりもデビューしやすい点や、多くの人に見てもらいやすいところを差別化のポイントとして挙げられるのではと考えています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  2. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  3. /nl/articles/2412/12/news089.jpg フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/14/news081.jpg 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  5. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/14/news038.jpg 「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
  8. /nl/articles/2412/14/news063.jpg 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  9. /nl/articles/2412/14/news002.jpg 【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
  10. /nl/articles/2412/15/news024.jpg おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」