かわいい4コマと、詳細なコラム 読むだけで行った気になる? 『教会巡りin五島列島』司書メイドの同人誌レビューノート

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。

» 2015年09月18日 12時00分 公開
[eBook USER]

 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。

教会巡りin五島列島 教会巡りin五島列島

紹介する同人誌

タイトル:『教会巡りin五島列島』

サークル名:マタタビMIX

形態:A5 56ページ 表紙カラー 本文モノクロ

Webサイト:http://www.matatabimix.com

同人誌入手先:マタタビMIXさんのWebサイトから(http://www.matatabimix.com/order_round_in_church.html

連絡先(mail):cat@matatabimix.com


 風がすっかり秋めいて、どこかへ旅するにはよい季節になりました。前回は北海道の蜃気楼の本を紹介しましたが、今回は長崎の島にある教会をめぐる旅行記同人誌です。

島の教会めぐりに出発!

 長崎の島に、古い教会が多くある……というのは聞いた事があったのですが、「島の中だけで50教会がある」という冒頭に出てきた言葉に、早速びっくり。そんなにあるんですねぇ! 本では教会をめぐるモニターツアーに参加された様子を、4コマまんがとイラストがふんだんに使われたコラムでリポートされています。さすがに解説は島内の幾つかの教会に限られているのですが、さっぱりとした、親しみやすい絵柄の4コマで、出発からいきなりエンジントラブルに見舞われたフェリー様子から、実は離脱者続出のハードなモニターツアーの様子、ミサの時間を知らせるのは鐘の代わりにホラ貝で! など、目を白黒させながらも教会めぐりを楽しむ様子がいきいきと伝わってきます。

何気ない情報量がぎっちりと!

 教会はほとんどが高台にある→高台にある教会を訪ねる→心臓破りの坂登り! でもその先にあるのは、重厚な白い天井と、床に敷かれた真っ赤なじゅうたん、柱の木目が美しい教会や、椿の花のモチーフが柱についた、パステルカラー色の教会。わー! 何てすてきな描写なのでしょう。しかも道々で出会った教会の様子をはじめ、教会の建築方法、教会を建てた建築家さんのこと、名物の幻のうどんのことまで、詳細につづられたコラムページも合わせると、すごい情報量が1冊に詰まっています。2010年に発行された本なので、今では変わってしまった部分もあるかもしれませんが、時を経ても役立ちそうな情報もたくさん! 絵柄も文字もかわいらしくて、読みやすく構成されているので、キリスト教の豆知識まで、興味深く読みました。

 紙面では、ハードな教会めぐりのスケジュールに作者さんははあはあ息を切らしていますが、読者のわたしはわくわくページをめくるだけですてきな教会建築への気持ちが高まる。申し訳なくも、何と楽ちんなのでしょうか!

教会に靴を脱いで上がる! ちょっとした驚きから、教会めぐりの楽しさを感じます 教会に靴を脱いで上がる! ちょっとした驚きから、教会めぐりの楽しさを感じます

細部まで行き届いた、繊細な雰囲気の紙面

 こちらの本、写真が一枚もないんです。丁寧なリポートは全てイラストと文章で構成されています。細密に描かれた教会のイラストや、かわいい飾り枠で囲まれたコラムに、本作りへの細やかな気配りが感じられます。そして、その細やかな気持ちは、4コマやコラムで、ちょっと添えられた作者さんの一言からも強く感じることができます。「窓ガラスに手描きの花柄模様。はげかけているところがたまらない」と書かれれば、わたしも紙面のこちら側で、「そうそう、古びて味が出てくるものってありますよね。実物はどんな感じかしら〜」と思いをめぐらせ、「長崎の教会でおやっと思ったのはお祈りする女性や子供たちがベールを被っていたこと」とのコメントに、その様子を想像してみたり。「ようやくわかってきました 島の人たちの独特のおかし味が」の一言には、島を歩いて、触れ合った方ならではの視点に、ほっと息をついて、「いつかわたしも訪ねてみたいな」という気持ちになったのです。

ミソノ流ワンポイント用語解説

聖地巡礼

 「大好きな作品の舞台になった場所を見に行く」という意味でも使われますね。刑事ものが好きな方から「私の周りでは『地取り(じどり)』って呼んでるよ」と教えてもらったことがあります。大切な場所を巡礼して風景を心に刻むか、絵柄の構図やたどり着く時間などを丹念に検証しつつ足取りを追うか……。いろんな旅する楽しみがありますね。

ミソノ:いつでも優しい笑顔で、皆の心をいやしてくれる。普段は大きな図書館で司書をしており、司書ならではの本に関するお話は、日常では知る機会の少ない情報満載で、一聞の価値あり

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」