ニュース
» 2015年10月08日 00時17分 公開

「社員のアイデアに1000ドルを掛けられないなら、雇わない方がいい」――Adobeが提唱する「Kickbox」とは

ロサンゼルスで開催中のイベント「AdobeMAX」で、Kickboxを考案したAdobeのMark Randall氏に話を聞いた。

[太田智美,ねとらぼ]

 Adobeには、イノベーターをつくるための方法があるという。その方法の名前は「Kickbox」。Kickboxは全社員を対象としたもので、2日間の研修の際に「砂糖」「カフェイン」「1000ドルのクレジットカード」が入った赤い箱が配られるという。

 無料で配られる「砂糖」「カフェイン(=スターバックスカード)」「1000ドルのクレジットカード」が入った謎の赤い箱。これは何を示すのか。Kickboxを考案したAdobeのMark Randall氏に話を聞いた。


画像

 Randall氏はスタートアップ企業からAdobeに入社。これまで数え切れないほどの失敗を繰り返し、今では失敗の達人のようになっているという。そんな彼がAdobeに入社し思ったことは「階層的で古い会社」ということ。当時のAdobeにはどんどん失敗するという社風がなかったという。

 「失敗率を上げたい」――そう思ったRandall氏は、時間をかけてでも「優雅に失敗する文化」をAdobeに作ろうと決意した。こうして生まれたのがKickboxだった。

 Kickboxで彼が提案したのはアイデアへの投資。社員がどんなアイデアを出してくるのか分からない状態で、砂糖、カフェイン、そして1000ドル分のクレジットカードの入った赤い箱をプレゼントする。

 「砂糖と、カフェインは、人間の身体に重要なもの。そして一番重要なことはお金をあげることだ。赤い箱の中には1000ドル分のクレジットカードが入っている。人はまだ見ぬアイデアに対しこれだけの投資をすることをクレイジーだと言う。でもこれは、アイデアを育てるのに本当に大きな効果をみせる」(Randall氏)――もちろん、財務担当者からは猛反対をくらったそうだ。


画像

画像

 しかし彼は言う――「社員のアイデアに1000ドルを掛けられないほど信頼できないなら、雇わない方がいい」(Randall氏)。

 Randall氏によれば、ここが大きくスタートアップの文化と違うところだという。スタートアップは仲間の信頼から始まるが、大きな会社ではそこが1つのハードルとなる。もしかしたら社員の中に、その1000ドルをラスベガスで使ってしまう人がいるかもしれない、とつい考えてしまうのだ。しかしこれまで1300人中そんな人は1人もいなかった。


画像 Kickboxを考案したAdobeのMark Randall氏

 こうして赤い箱を手に入れた社員は、同封されている6つのチェックボックスに1からチェックを入れていく。その6つのチェックボックスは、1から「Inception(発端)」「Ideate(想像する)」「Improve(改善)」「Investigate(調査)」「Iterate(反復)」「Infiltrate(浸透)」と書かれている。赤い箱は友だちではない。チェックボックスが全て埋まったとき、その「強敵」を倒したことになる。こうしてそのチェックボックスをクリアし、一定の水準に達すると「ブルーボックス」を手に入れることができる。


画像

画像

 ブルーボックスの中身は秘密。これまでに25個のブルーボックスが手渡されている。

 実は、このKickboxという手法は2015年2月にオープン化。「私がやったことはドキュメントで読んでくれればいい」とRandall氏は言う。資料を見れば誰でも実践可能で、実際にKickboxを取り入れている組織もあるようだ。

 これまでのやり方では10〜25のアイデアの中から6つほどに絞り、プロトタイプ開発に至るまで約50〜200万ドルをかけてきた。このやり方ではアイデアの母数が少なく、実現するまでの確率が高すぎる。Kickboxでは1000の中から1つの宝を見つける。この方がポテンシャルが大きく、マネージャーもシステムもいらない、そしてお金もかからないのだとRandall氏は話す。

 「Kickboxのゴールはイノベーションを生み出すことではない。イノベーターをつくること。私たちは、私たちの社員と『失敗してもいい』関係を築いている。本当に革新的なことは失敗するものであり、その失敗をたくさんしなければ成功はない。美しく、カッコよく失敗する。失敗したら『またやっちゃった』と思えばいい。スタートアップのいい文化とAdobeのいい文化を混ぜる。『Failure』ではなく、『Learning』」(Randall氏)。

太田智美

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2108/03/news132.jpg 海外記者「最高のコンビニアイスを発見した」 森永チョコモナカジャンボ、ついに世界に見つかってしまう
  2. /nl/articles/2108/04/news073.jpg 伊東美咲、12年ぶりのテレビ出演に大反響 “不変の美貌”に「44歳信じられない」「本当に美しい人」の声
  3. /nl/articles/2108/04/news015.jpg 柴犬「メシ、よこさんかーい!!(激怒)」 ごはんを忘れた飼い主に皿をぶん投げる柴犬、荒ぶる姿に「爆笑した」
  4. /nl/articles/2108/03/news023.jpg その人はやめとけって! 漫画「情緒をめちゃくちゃにしてくる女」シリーズを読んでキミもめちゃくちゃになろう
  5. /nl/articles/2108/04/news104.jpg 辻希美、自宅リビングが規格外の広さ 子ども3人が余裕でブランコ遊びできる室内に「羨ましい限り!!」
  6. /nl/articles/2108/03/news029.jpg もしや女として見られていない? 突然の別れ話に「勝負メイク」で抵抗する漫画 彼氏の言葉がじんと響く
  7. /nl/articles/2108/04/news138.jpg アゼルバイジャン五輪代表チーム内で、意外な日本語がトレンドに 「落ち込んじゃったら日本のみんなはなんていうの?」
  8. /nl/articles/2108/04/news103.jpg 世界のミフネ刺されまくり! 三船美佳、父・敏郎さんの“パパの顔”を引き出した親子ショットに反響
  9. /nl/articles/2108/04/news028.jpg 宿題の日記に適当な妄想書く → 感動した先生がクラスの前で読み上げ 小学校の思い出を描いた漫画がこっちまで叫びたくなるつらさ
  10. /nl/articles/2108/04/news107.jpg 輪になって踊ろう! 太田雄貴、五輪選手村でスペイン代表選手と国際交流「悲壮感なく楽しむ彼女達が眩しかった」

先週の総合アクセスTOP10

  1. 「くたばれ」「消えろ」 卓球・水谷隼、SNSに届いた中傷DM公開&警告「然るべき措置を取ります」
  2. 「貴さん憲さんごめん。いや、ありがとう」 渡辺満里奈、とんねるずとの“仮面ノリダー”思い出ショットが大反響
  3. 怖い話を持ち寄って涼もう→「オタバレ」「リボ払い」 何かがズレてる怪談漫画がそれはそれで恐ろしい
  4. おにぎりパッケージに四苦八苦していた五輪レポーター「日本の素晴らしい人々に感謝」 大量アドバイスで見事攻略
  5. 「助けてください」 来日五輪レポーター、おにぎりパッケージに四苦八苦 海外メディアにコンビニが大人気
  6. 「うちの子に着せたい」の声殺到 五輪会場で編み物をしていた英金メダリスト、作っていたのは「ワンちゃんの服」
  7. 五輪飛び込み金メダリスト、“手作りメダルポーチ”披露 英国と日本にちなんだデザインが「これまた金メダル級」と反響
  8. 武井壮、行方不明だった闘病中の父親を発見 「電気ついてるのに鍵閉まってて……」本人は自宅外で休憩
  9. 「涙が止まらない」「やっと一区切り」 東原亜希、夫・井上康生の監督退任で“17年分の思い”あふれる
  10. 水谷隼スタッフが一部マスコミの“行き過ぎた取材”に警告 住民を脅かすアポなし行為に「しかるべき措置を検討」

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「竜とそばかすの姫」レビュー 危険すぎるメッセージと脚本の致命的な欠陥
  2. 笠井アナ、日比谷公園で「信じられないことが…」 サンドイッチを狙う集団に「何? えーっ! まさか、それはないでしょ!」
  3. 62歳の宮崎美子、マクドナルドCMで初々しい中学生少女を見事に演じる 「暖かい目でぜひ見てください」
  4. 瀕死のスズメのヒナを助けたのに…… 「助けたヒナたちに完全にナメられた」動画がほほえましくて面白い
  5. ハート打ち抜かれました! コロンビアのアーチェリー女子選手が「かわいい」「エルフ」と注目の的に
  6. 散歩中のラブラドール、助けを求める子猫を発見→保護 親子のような仲むつまじいふたりに涙が出る
  7. 宮迫博之、美容整形から2週間のビフォーアフター公開 手術直後の腫れ&炎症だらけな顔に「暴漢に遭ったんかって」
  8. 上野樹里、“娘”の誕生日に愛情たっぷり手作りオムライス公開 「がんばろうね ママより」と祝福メッセージ
  9. 出勤時、妻にいつになく強く抱きしめられた夫→妻が家に帰ってくると…… 何気ない日常を描いた漫画にツッコミつつもジーンとする
  10. 「本人にしか見えない」「めっちゃ似てる」 霜降り明星せいや、オリンピック開会式に“ガチのそっくりさん”を発見する