米最大のグラフィックデザイン団体が東京オリンピックのエンブレム公募に対し苦言 「プロのデザインの価値を過小評価」
五輪組織委員会会長・森喜朗元首相に当てられた書簡形式になっています。
米国最大のデザイン関連非営利団体「AIGA」の執行役員であるリチャード・グローフェ氏は、東京オリンピックにおいてエンブレムを一般公募したことに対し苦言を呈し、五輪組織委員会会長・森喜朗元首相にむけた公開書簡を発表しました。
アートディレクターの佐野研二郎さんによるデザインが白紙撤回されたという問題の経緯がエンブレムの再選定に影を落としているという一定の理解を示しながらも、今回の公募で約1万5000人もの応募者が100万円の賞金と開会式のチケットのためだけにコンペに参加しているが、作品の権利を無償譲渡することが条件になっているなど、一切のロイヤリティなどが発生しないことに言及。
これではデザイナーに対する対価が不十分で、ひいてはデザイナーの“ただ働き”につながりかねないとし、運営組織とデザイナーの関係がフェアではないとの批判が展開されています。
また、プロフェッショナルなデザイナーによる技術や経験、創作に費やすための想像以上に多くの時間など、デザインの価値を過小評価していることをはじめ、素晴らしいデザインを制作するにはクライアントとのコラボレーティブな関わりが必要不可欠だと指摘。
プロへのリスペクトを忘れず、永遠に記憶に残るデザインを作り上げるためにも組織委員会には最も適切なエンブレム選定方法を再考してほしいとする文で締めくくられています。
これまで日本人が成し遂げてきたプロによるグラフィックデザインの輝かしい歴史にも触れられていることから、単なる苦言や不満だけでなく、日本独自のデザインに対する期待も込められているように感じられる公開書簡。米国最大のグラフィックデザイン関連団体がもたらしたこの提言が、今後どのような影響を与えるのかにも注視すべきでしょう。
(高城歩)
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