美と恐怖は隣り合わせ コスプレイヤー・るしゃが読む、伊藤潤二の傑作「富江」
作中の恐怖シーンを再現したコスプレはさすがのクオリティー。
日本を代表するホラー漫画家の伊藤潤二さん。その代表作である「富江」は1987年に漫画の連載がスタートして以来、現在までに幾度となく映像化されるなど、長年に渡り高い人気を誇っています。
同作は、長い黒髪と怪しげな目つきで男性たちを翻弄(ほんろう)してゆく魔性の美少女・富江が巻き起こす、世にも奇妙な恋物語。富江の美しさにひかれる男性たちは、例外なく彼女に異常な殺意を抱き始め彼女を殺害します。しかし、何度殺されても甦(よみがえ)る富江。バラバラに刻んだ遺体の肉片一つ一つが再生し別々の富江となってゆくのです。富江に出会う事により人生を狂わせられる男性たちと、彼らを取り巻く人々の人間模様を描いた同作。
人気ホラー漫画「富江」の一度読んだら忘れられないストーリー展開と、傲慢(ごうまん)な性格でありながらもなぜかひかれてしまう富江という登場人物の魅力を、コスプレイヤーのるしゃさんに独自の目線で語っていただきました。
黒髪ロングはホラー漫画の影響
―― 「富江」をチョイスした理由は?
私はホラーが好きというよりも、怖いものときれいなものが組み合わさった作品が好きなんですけど、ホラー漫画ってさまざまなジャンルの漫画がある中で、特にきれいな女の子がいっぱい出てくるんですよね。中でも「富江」は“きれいな女の子”というのをテーマにした作品ということもあって特に好きな作品なんです。
―― 「富江」って、ストーリーが他のホラー漫画とは一味違っていて、一歩間違ったらコメディーになっちゃいますよね。
そうですね。ゴミ箱に頭だけ置かれていたりとか、どんどん富江が増えていって街中富江であふれてしまったりとか。それでもなぜか美しいと言われる富江……。シュールではありますよね。
―― 好きな話はありますか?
上巻に収録されている、富江が絵のモデルになる「画家」という回です。それが私の考える富江のイメージにぴったりで。もともとその画家にはお気に入りの専属モデルがいたのですが、富江が現われると急に彼女がかすんで見えてしまって……。
―― 修羅場の予感……。
富江もわざわざ画家とモデルの所まで乗り込んで行って「私の方がきれいだから! 私がモデルになった方がいいんじゃない?」って言ったり。そういうちょっと性格がキツいところにもひかれます。
―― 憧れたりも?
富江は自分が美しいというのを理解した上で悪事を働いてるじゃないですか。そこがすごく分かりやすいというか、突き抜けている感じがして。富江は悪者でしかないので、その“なりきってる”部分に対する憧れはあります。
―― なるほど。自分と似てるなと思うことってありますか?
それは……ないですね(笑)。でも、ないからこそひかれるのかもしれないです。“ここまで行けたらいいな”っていう憧れの方が強くて。私実は、自分が黒髪ロングなのも、ホラー漫画が好きだからなんですよ。
―― え、そうだったんですか! いつごろからその髪型に?
気付いたときには、もう(笑)。染めたりパーマをかけたりしてほかの髪型にしたことも過去に何度かあったんですけど、なんかしっくりこなくて。自分の思い描く美しさと違ったので、結局黒髪ロングに戻したんです。
キレイと怖いは紙一重
―― 今までに富江のコスプレをした経験はありますか?
ないんです! なので今回が初めてです。今まではほかのコスプレイヤーさんの富江コスを見て満足していました。今回カメラマンさんと話していたのが、“るしゃと富江の区別をどう付けるか”ということです。髪型が一緒なので(笑)。
―― 「もしかしたら今日、最初から富江コスで来られたのかな」と思ってました(笑)。
うれしいです! いつもこうなんですけどね(笑)。富江っていつも自信満々な人なので、表情とかでそれを出せたらなって思っています。
―― 「富江」って他のホラーと比べても独特な描写が多いですよね。
富江が美しすぎるあまり、周りの男の人たちが最終的に富江を殺すことになってしまう。最初は美しい少女だから近付いたのに、顔が二つになったりとか徐々におかしくなり始めて……。それでも男の人はみんな富江が美しいって言うんです。その狂気に引き込まれるというか。
―― るしゃさん自身、作品に出てくる男性と同じ気持ちになった経験はありますか?
一歩間違えればそうなりそうだなって思ってます、いつも。
―― いつも!?
きれいなものにひかれてそれを追い求めるあまり、ちょっとおかしくなるって気持ちは分かりますね。
―― 周りの人が何を言おうと“自分はこれが大好きで美しい”と信じて何かにハマった経験はありますか?
ホラー漫画自体がそうです。きれいな女の子がいっぱい出てくるジャンルの漫画なのに、そういう目で見てない人が多いというか……。でも、あるホラー漫画家さんとお話させていただいた時に「キレイと怖いは紙一重」って言ってたんです。その言葉が私にはすごく納得できて。“お花がきれい”とかいったものとはまた違ったきれいさがホラー漫画にはあるんです。きれいすぎて怖いとか。
「富江」を読むときは男性側の気分で
―― 今まで何度も実写化されてきましたけど、どの作品がお気に入りですか?
全作品見ましたけど、私は仲村みうさん主演の「富江 アンリミテッド」(2011年)がお気に入りです。イメージ通りで、「死ぬシーンとかも、最高! 死に方美しい!」みたいな。
―― 死に方が美しいってなんだか新鮮ですね。ちなみに、るしゃさんは富江のように誰かに狂うほど思われたりしたいですか?
いえいえ、実際されたらさすがに警察に通報……ってなっちゃいます(笑)。というか私は富江がタイプです。美少女がもともと好きだし。
―― 男だったら富江に振り回されてみたかったり?
そうですね。ちょっとひねくれていてもそれすらいいというか、キレイだけじゃなくて毒があったり。人間の内面を描いた作品が好きなんです。ちょっとグロイところも含めて。
―― なるほど。もしかして、るしゃさんは完全に男性目線で富江を読んでいます?
気持ちは富江寄りじゃなくて男性寄りです。男性の立ち位置で読んでます。「こんなにきれいだったら仕方ないよなー」って。顔がきれいなだけの人はいっぱいいるけど、富江はにじみ出る狂気が周りの人をおかしくしちゃう。富江って、「なんでこうなったの?」って分からない部分も多いのでそこも面白いです。
―― 「富江」に出てくる男の人たち、みんな狂ってしまいますからね(笑)。
男の人がここまで狂うともはや気持ちいいですよね。ほかの漫画だと女の子が恋に悩む話が多いですけど、逆に男が悩んで狂気に走っちゃう感じが読んでいて爽快です。
―― 今までホラー漫画を読んだことがない人に「富江」をおすすめするとしたら?
こういう作品を読んだことない人がいきなり読むとビックリすると思いますけど、ホラーに触れてない人なら尚更普段このような作品を読む機会って無いと思うので、一度味見をするような感じで読んでみてほしいですね。飾っておきたい美しさ。きれいなものがおかしくなっていくっていう展開に引き込まれると思うので、ぜひ手に取って読んでみてください!
―― 本日はありがとうございました!
ハッとするほどの美貌に黒髪ロングヘアーという姿がよく似ている富江とるしゃさん。しかし実は、るしゃさんは男性目線で「富江」を読んでいた、というエピソードが意外でしたね!
異性を狂わす側と異性に狂わされる側、どちらの目線で読んでもスリルを味わえる同作は、まさに名作と呼ばれるにふさわしいホラー作品です。ホラーは読んだことないけど、だけど美しい物は好き、というアナタ! ぜひ読んでみては?
というわけで美女マンガは用意しました! 先生に許可をいただき第一話を無料お試し読みできます。先生! 本当にありがとうございます!
るしゃさんは、3万5000サークルが出展する2015年最後のビッグイベントのコミックマーケットに出演予定。2015年のるしゃさんの見納めにいきましょう♪
コミックマーケット89
2015年12月31日(火)@東京ビッグサイト コミックマーケット 東19a
りんかい線 国際展示場駅 から徒歩7分
ゆりかもめ 展示場正門前駅 から徒歩3分
都営バス 東京ビッグサイト
水上バス 東京ビッグサイト から徒歩2分
るしゃさんプロフィール
名前:るしゃぴぴ・にゃりルー・レロ
ニックネーム:るしゃにゃん
身長:150センチ
好きなもの:美しいもの、ホラー
美しいものとホラーを愛するコスプレイヤー&モデル&シンガー。
コスプレイヤーとしての定評とビジュアルの良さから企業の各種イベントやイメージモデルなども務めている。
2014年8月からバンド「初音階段」のボーカルとして加入。
活動の場は日本国内だけに止まらず、スイス、イギリス、ポーランド、ドイツ、香港など海外でもライヴを展開している。
フォトギャラリー
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伊藤潤二さんは誘いに対して「感謝しかない」とコメント。
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