伝説の漫画「MMR マガジンミステリー調査班」はこうして作られていた タナカ・イケダ・トマル隊員が語る「MMR」制作の裏側(前編)(2/3 ページ)

» 2016年03月10日 10時00分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

福岡のミステリーサークルは、実は青森だった!

―― 「MMR」のスタートは、90年代のUFOブームが背景にあったわけですよね。

タナカ そうですね、当時は矢追純一さんのUFO番組が人気でして。それでキバヤシがUFO特集の読み切りをやったところ、読者の反響がものすごく良かったので、シリーズものにする企画が通って。読み切りのときのメンバーはいったん抜けて、編集会議で募集をかけたとき、私も興味ありましたので参加させてくださいと立候補しました。それで(キバヤシ、ナワヤ、タナカの)3人で始まることになったんです。

―― 読み切りの時点で、読者の反響は圧倒的だったんですか。

タナカ 私の入社前のことですけど、電話が鳴りっぱなしだったそうです。「うちの地元にUFO見に来てください」という手紙も来て、確かな手応えがあったと。それでUFOや超常現象を中心に始まったんですが、連載で毎週やるにはネタ的に厳しいということで、年3〜4回のシリーズものに決まりました。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 読み切りとして掲載された「UFOからのメッセージ」(1巻7ページ)

―― もともとタナカさんはオカルト的なものがお好きだったんですか?

タナカ ええ、大学は考古学を専攻していましたので。専門書を探していると、よく隣にちょっとトンデモな本が置いてあるんですよね(笑)、それも一緒に買うと。「古代に核戦争があった」とか「飛行機みたいな遺物があった」とか言うので、ええっ? と思って。実際、今でも意味不明な、オカルト的なものが発掘されていますよ。

―― 「MMR」といえばノストラダムスが人気キャラですが、漫画では第3話でタナカさんが最初に持ち込んだことになってましたね。

タナカ ファミレスで打ち合わせをしてたんですけど、毎回ネタに困ったんですよね。次どうしようかという中で、ちょうど五島勉(※)のブームがありましたので、じゃあノストラダムスを取り上げてみようかと。それで実際に資料を集めて、自分たちで解釈してみて漫画を作ったところ、初めて人気投票の1位を取りまして。これは行けるぞということで、それからはノストラダムス推しになったんですね。

※「ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月、人類滅亡の日」の著者

MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 予言に関する書籍を広げるタナカ隊員(2巻6ページ)

―― みなさん編集者として漫画を担当されてましたが、その合間をぬって各地に取材に行かれたんですよね。

タナカ いちばん最初に行ったのは福岡県のミステリーサークルですね、漫画では青森ということにしてあるんですけど。朝会社に行ったら、スポーツ新聞を持った編集長がやってきて。ミステリーサークルが現れたぞ、今から行けということで、そのまま飛行機で行きましたね。あのときは日帰り出張で、予約もしてなかったので、便を手配するのも大変でした。

―― 週刊漫画誌の編集者さんが、ニュースを聞いて飛んでいったという。

タナカ 現地に着いたのが夕方ぐらいで、報道陣がたくさんいましたね。ちょうど他のメディアの方が取材を終えたところだったので、ちょこちょこ中に入っていって、稲の倒れ方がこんなふうになっている、とか真面目に取材をしながら。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 実際に撮影されたミステリーサークル(1巻69ページ)

―― 漫画では読者が手紙で教えてくれて、現地でミステリーサークルを調べていたら農家の人に追い出されたことになってましたね。

タナカ 現地の人が怒ったとかはなくて、あれは脚色ですね。その後にキャトルミューティレーションにもつなげたかったので、福岡という場所は出さなかったんです。

―― キャトルミューティレーションの写真は、実際に撮ってきたものなんですか?

タナカ あれは違いますね、写真をお借りしてきたんです。あれは見たらギョッとしましたね。あくまで「事実を元にしたフィクション」なんです。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー このページでギョッとさせられた読者は多いはず(2巻89ページ)


写真を入れると本物っぽくなる

―― 「MMR」では学者や識者にも取材をしていましたが、いまネットで名前を検索しても見つからないんですよね。あの学者さんたちは実在されたんですか?

イケダ 話によって実際に取材した場合もありますが、少ないですね。どちらかと言うと、モデルとなる人がいらっしゃったと。ある分野を調べていくうちに、それに関する記事や論文、本とかを見つける。でも、本当の学者さんは真面目なことしか言ってないので、最後にちょっと付け加えたり、それを拡大解釈したら、という感じで膨らませるという。なんとなくモデルの方は決めて、キャラクターを作っている場合が多いですね。

―― 最初は量子論やマトモなことを言ってたのに、いきなり「幽子」とか言い出して、この人クビにならないかと心配になりました。

イケダ そういったときにいろんな問題が出てくるので、実名はボカしておく場合もありましたね。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 唐突に出てくる「幽子」(2巻23ページ)

―― 「MMR」は、実は基礎となるロジックがしっかり固められてますよね。地球温暖化にしても量子論にしても途中までは正しくて、そこから斜め上に飛躍するという。

イケダ 論文を読みこんだり、インターネットがなかったころはパソコン通信を使ったり、資料室に行って探したりして、なるべく学者さんが言ってる論理はお借りしてましたね。それで、読んだ感じは本物っぽくなる。実際に取材してOKだった方は、そのまま名前や写真を載せてます。多いのは霊能力者の方ですね、宜保愛子さん(2巻に登場)とか、占星術師の鏡リュウジさん(6巻)とか。

タナカ そういう写真は活版にすると見にくいんですが、結構やってましたね。ピンぼけな感じが、また怖いという。

―― キバヤシさんご本人の写真も出てましたね。前田和慧さん(霊感があるという尼僧。第5巻に登場)の写真も黒目が怖くて、トラウマになりました……。

トマル あの写真は僕が撮ったんです。あの辺りから、僕も入ってまして。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビューMMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 宜保愛子さん、前田和慧さんの登場シーン(2巻42ページ、5巻29ページ)

タナカ 風水ブームのころに風水取り上げたことあるけど、バラエティ色が強くなっちゃって。

イケダ 怪しさよりもそっちに行っちゃって、ちょっと違う感じだったかもしれないですね。

―― 心霊特集のおかげで、宜保愛子さんの姿が「MMR」に残ったのも貴重ですね。

イケダ 後々キバヤシさんが、宜保愛子さんが一番本物っぽかったとよく言ってましたね。あの人は本物じゃないかと。他の人が全部怪しいってわけじゃありませんが、一番その雰囲気はありました。「MMR」ではないですけど、除霊能力があるという寺の住職さんにも取材しましたね。

タナカ あれは「週刊少年マガジン」のグラビア企画にしようとしてたんですよ、12ページぶち抜きで。それで取材に行ったのですが、編集長はクッキリと霊が写っている写真を期待していたらしく、何だこれはと怒られて、12ページが3ページに減らされちゃった。ビジュアル的に映えなかったんですね。

―― それでも写真の使い方が上手かったですよね。文章を読んで、本当かな? と思ったタイミングで写真が出てきて、本当なんだ! と。

タナカ そうですね、狙ってやってました。

―― ナワヤさんがスナックの階段から落ちて入院したとき(第3巻)も、スナックの看板や階段の写真が載ってましたよね。あの事故は本当に起こったんですか?

タナカ 本当に、酔っ払って落ちてますね。

イケダ あの事故、大変だったんですよ。ちょうど私が「MMR」に入る直前ぐらいで、頭蓋骨にヒビ入っちゃったと言ってましたね。あれは中野にあるお店です。私もナワヤさんに連れて行ってもらったとき「ここで落っこちちゃったんだよな」とか言ってたから。

―― よくそれをネタに盛り込みましたね。

トマル そこはキバヤシさんの貪欲さなんですよ。

イケダ そこに本物が入ってるじゃないですか。なんとなく、全体も本物っぽくなるのが上手いんですよね。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビューMMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 本当に階段から落ちていたナワヤさん(3巻68、73ページ)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた