ディズニー最新作「ズートピア」はなぜ胸を打つのか プロデューサー・クラーク・スペンサーが明かす

特に意識した3つのポイントとは?

» 2016年03月30日 10時00分 公開
[大原絵理香ねとらぼ]

 4月23日劇場公開予定のディズニー・アニメーション「ズートピア」。かわいいモフモフの動物たちがハイテク文明社会で暮らす「ズートピア」は、"誰でも夢を叶えることができる"楽園。しかし、その楽園を恐怖に陥れるある事件。それを解決するために挑むのは、ウサギ初の新米警官ジュディと、キツネの詐欺師ニックのコンビ。彼女たちがこの事件を通して気付くこととは――。

ウサギのジュディとキツネのニック ウサギのジュディとキツネのニック

 日本公開に先駆け全米公開された同作は、「アナと雪の女王」「ベイマックス」を上回る全米オープニング興行成績を収め、3週連続1位を獲得しています。

 この「ズートピア」日本公開に先駆け、プロデューサーのクラーク・スペンサー氏を直撃。作品に込めた思いを聞きました。

ジュディとニックが代弁するものとは?

クラーク・スペンサー氏 「ズートピア」プロデューサーのクラーク・スペンサー氏。「リロ&スティッチ」「シュガー・ラッシュ」のプロデューサーも務めた

―― ミッキーマウスや仲間たちが二足歩行で生活し、人間と同じような文明で暮らすというのがディズニー共通の世界観だと思います。

 でも「ズートピア」はこの世界観にあらためてスポットライトを当て、動物たちが人間のように暮らすことを1つのテーマとしています。この理由を教えてください。

スペンサー バイロン・ハワード監督が「塔の上のラプンツェル」公開後、「二足歩行で服を着て、現代社会を生きる動物たちを描きたい」と手を挙げました。

 これをエグゼクティブ・プロデューサーのジョン・ラセターに話したところ、ジョンがバイロンをぎゅっと、まるで「ライオン・キング」のシンバのように抱きしめたくらい、そのアイデアを気に入ってくれたのがはじまりでした。

 せっかく作るのであれば、「見たことのない、今までにない動物たちの世界を作る」というのが、わたしたちの掲げた目標。だから設定を現代の世界にし、人間のいない世界で、動物たちが独自に進化したらどうなるかを考えて作っていったんです。

―― その目標のため、特にどんなことを意識されましたか?

スペンサー 「ズートピア」で動物たちを描くに当たり、特に意識した点が3つあります。

 1つ目は、動物たちの大きさ、スケール感。一般的な動物たちをモチーフとした映画は、動物のサイズを大きくしたり、小さくしたりすることが多いと思います。でも「ズートピア」では、それをしたくなかった。だから、例えばキリンはネズミ95匹分の体高にするなど、自然界の動物の実物大の大きさをそのまま映画に反映しています。だからこそ、電車を利用する動物たちに合わせてドアのサイズを変えている描写があるのです。

動物の大きさにはこだわりが 動物の大きさに応じたドア

 2つ目は、ふわふわの毛。リアルな毛をとことん追求しました。映画の製作前、64種類の動物たちの毛を1つ1つマイクロスコープで徹底的に研究し、それを作品に反映しています。例えば、シロクマの毛は普段は透明だけど日光に当たると白くなるとか、キツネの毛は根元が暗いとか、ヒツジの毛には葉っぱが紛れ込んでいてちょっと汚いとか。すべてをリアルに表現しています。

 そして最後が、動物の動き方。「ズートピア」では、人が着ぐるみを着て演じているような動きは、絶対に動物たちにさせたくなかった。だから、ジュディが鼻を動かしたりジャンプをしたり、キリンがエレガントに歩いたり、そんな動物たちの特有で、本来の動きをこの映画では描いています。

―― 「ズートピア」には肉食動物はどう猛、草食動物はか弱いなどの固定概念を打ち砕くような表現が幾つか見られました。これにはどんな思いがあったのでしょうか。

スペンサー 「ズートピア」は、自分たちの生きる現代社会を感じてもらいたいなと思い作っています。だからこそいわゆるステレオタイプな描写――ナマケモノはとっても遅い生き物だったり、キツネはずるがしこい――が含まれています。

 でもわたしたちが作った世界「ズートピア」で一番描きたかったのは、「必ずしも物事は自分の認識と一緒ではない」ということ。だからこそ、そのステレオタイプの考え方から離れた、全く逆の描写で少し遊びを加えています。

 例えば、世間一般の認識では記憶力のよいはずのゾウが何も覚えていなかったり、逆にばかっぽいヤクが、ゾウの代わりにすべてのことを覚えていたり。あとはマフィアのボスが小さいトガリネズミだったり。

 わたしがこの映画を作る上で一番皆さんに伝えたかったことは、いかに人間が相手のことを先入観によって決めつけてしまっているか、あるいは、相手のことをよく知りもせず本当の姿を見ることができていないということ。その大切なことをジュディとニックに代弁してもらっています。

ズートピア

―― 「ズートピア」には、たくさんの動物たちが出てきました。作品の中で一番自分に近いキャラクターはどれでしたか。

スペンサー ジュディ。なぜなら、わたしはプロデューサーという立場で、その一番の仕事はスタッフみんなを信じて、励ましてあげることだから。ジュディはみんなを、すべてを最後まで信じてあげている。それが彼女の信念なんです。

 世界は単純ではなく、ステレオタイプな考え方は捨てて、自分を最後まで信じてあげられるのは自分、という彼女の性格にもとっても共感できます。

ズートピア

―― 最後に、日本では毛の多いふわふわな動物を「モフモフ」といいます。日本のディズニーファン、クラーク作品ファン、そしてモフモフファンに向けて一言お願いします。

スペンサー 「ズートピア」はわたしの誇りといっても過言ではない作品です。この映画で皆さんが一番驚くのは、ストーリーの深さだと思います。コメディ、バディ(ジュディとニック)の絆、そしてミステリー。多くの要素を含んでいて、ここまでストーリーにこだわった作品は、過去のディズニー・アニメーションには無かったものです。

 このストーリーの深さがあるからこそ、老若男女問わず、必ずこの作品を気に入ってもらえると思っています。この素晴らしい作品を見に、ぜひ映画館に足を運んでください。

ジュディとニックとともに ジュディとニックとともに

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