本屋=楽な仕事だと思ってませんか? 寝言はこの「ガイコツ書店員本田さん」を読んでから言え!!!虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第67回

本屋という仕事についてあなたはどれくらい知っていますか?

» 2016年05月07日 11時00分 公開
[虚構新聞・社主UKねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。

 最近テレビドラマと言えば「真田丸」くらいしか見ていなかった社主ですが、今期放送中の「重版出来!」(TBS系)は、すごくおもしろいです。 松田奈緒子先生による同題マンガのドラマ化で、マンガ雑誌編集者の仕事やマンガ家との関係など、我々があまり知らない「マンガができるまで」を描いた良作なので、まだ見たことのない方は原作ともどもぜひご覧ください。

 「重版出来!」を見るにつけ、「おもしろいマンガを作るのって大変なんだな……」と、マンガ好きとしてしみじみ、出版社とマンガ家さんには足を向けて寝られぬ気持ちになるのですが、それに加えて最近、さらに足を向けて寝られない方面が増えました。それは本屋さんです。

 そんな気持ちになったのは、今回紹介する本田先生の実録マンガ「ガイコツ書店員本田さん」(〜1巻、以下続刊/KADOKAWA)を読んだから。「月刊コミックジーン」がpixivで展開する「ジーンピクシブ」にて連載中の本作、自画像はガイコツ、書店員でもある作者・本田さんがコミック売り場のリアルを描いておられます。マンガ家と読者をつなぐ「ラスト1マイル」の現場を知るにつけ、「もうこれはL字で寝るか、立って寝るしかないな」と。


ガイコツ書店員本田さん 「ガイコツ書店員本田さん」(〜1巻、以下続刊/)(本田/KADOKAWA)→試し読み


「銀●」のR18同人誌(触手もの)を探して

 さて、そんなコミック売り場を舞台に展開する本作のリアルエピソードの中で、特に興味深いのは外国人客とのやりとり。

 「くしくもジャパニーズ・マンガは名産品として世界にその信頼性を轟かせ(後略)」「なのでこのご時世 漫画売り場は人種のサラダボウルと言えなくもない」のだそうで、第1話にも早速娘に頼まれたジャパニーズ・マンガを探しにやってきた西洋系イケメンおじさまが登場します。

 お目当ての作品が表示されたスマホを手に、どれほどの書店を尋ね回ったのか、疲れた表情のイケメンおじさま。その果てにたどり着いた本田さんに見せた画像は「銀●」のR18同人誌(触手もの)! 


ガイコツ書店員本田さん お求めは「銀●」の18禁同人誌(触手もの)でございます

 触手がからんだ表紙画像をにこやかに掲げるこの紳士に、一般の書店に「薄い本」は置いていないこと、おじさまの娘に18禁作品はアウトであること等々、まず日本の出版事情からご説明して差し上げないとならない(しかも英語で)という、この「難易度:ナイトメア」な状況は察するに余りあります。「ていうか娘おまえええ」という、本田さんの心の叫びもさもありなん。

 この後もコミック売り場には、国籍や人種を超えてBLコーナーで堂々と「攻め/受け」について語り合うヤオイガールズ、棚一列まるまる全巻買いしていくアジア系爆買い団体客など、ワールドワイドなお客様が次々押し寄せます。そしてこれら面白くも心温まる(?)エピソードの中にも、彼らをひきつけてやまないジャパニーズ・マンガの強い影響力を感じずにはいられません。



「漫画迷子」との戦い

 社主は書店員でないですが、読んでいて「これはきついな……」と共感せずにいられなかったのは、マンガは読みたいけれど何を読んでいいのか分からない「漫画迷子」なお客さん。社主もこの連載がきっかけでマンガ好きであることが知られた結果、「今おすすめのマンガって何ですか?」と聞かれることがあるのですが、この質問に答えるのは本当に難しい。


ガイコツ書店員本田さん 「なんかおもしろいマンガないかなー」。難問である

 そもそも「格闘好き」「恋愛好き」「ギャグ好き」「日常系好き」など、相手の好みや傾向が分からないことには、何をおすすめしていいのやら皆目見当が付きません。で、そんな手探りから何とか知恵を絞り出し、好きなマンガをいくつか紹介した後日「この前の××、どうだった?」と尋ねて、「んー、まあまあ」と返ってきたときのあの無力感……!

 本田さんは、そんな漫画迷子たち、しかも外国人の漫画迷子たちと日々戦っているのだから、本当にすごいとしか言いようがありません。相手と雑談しながら少しずつヒントを得て、その嗜好を絞っていくのは基本ですが、特に感心したのは、好みのジャンルだけでなく、「漢字にふりがなが振ってあるかどうか」もひとつの目安になっているということ。いくらマンガ好きとは言え、外国人にとってふりがな無しの漢字を読むのはやはり難しいようで、こういう何気ないところに普段から外国人の接客をしているリアルな経験がすっと表れてくるのが本作のおもしろさでもあります。



書店員という仕事への愛

 外国人の無茶振り、毎日押し寄せる新刊の準備と補充と残業、出版社営業とのつばぜり合い、笑顔絶やせぬ接客など、本作のエピソードをこうして活字で羅列してしまうと、書店員という職業はただひたすらにきつい仕事でしかないように見えます。

 しかしそんな修羅場でさえ楽しく読めてしまうのは、書店員という仕事への愛が筆致の奥からにじみ出ているからです。こういう書店員さん一人一人の血ヘドの上に、社主の日々のマンガ生活が成り立っているわけでもあり、その点においては本当に感謝せずにはいられません。作品世界の神であるマンガ家さんは言うまでもなく、その才能を商品として落とし込む編集さん、そしてそれを我々の手元まで届けてくれる書店員さんにもそれぞれ敬礼しつつ、今日はこれにて筆を置きます。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。


(C)本田/KADOKAWA


関連キーワード

漫画 | 書店 | pixiv | 虚構新聞


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」