「嫌な人のことを考え続けるといとおしくなる」――芥川賞作家・村田沙耶香と気鋭の漫画家・米代恭が意気投合
熱い視線が注がれている2人の女性作家。先日対談が行われました。
7月23日、漫画「あげくの果てのカノン」の刊行を記念して、作者の米代恭さん(24)と小説家の村田沙耶香さん(36)の対談イベントが行われました。プライベートでは一緒に演劇を見に行くなど仲が良いという2人。対談はそれぞれの作品や「この世界を自由に生きるとはどういうことか」をテーマに行われ、会場となった本屋B&B(東京・下北沢)を沸かせました。トークの盛り上がった部分をピックアップして紹介します。
人物・作品紹介
- 米代恭
1992年生まれ。西島大介・さやわか主催の「ひらめきマンガ学校」一期生。2012年にアフタヌーン四季賞佳作「いつかのあの子」でデビュー。2015年から「あげくの果てのカノン」(月刊!スピリッツ)を連載中。
- 村田沙耶香
1979年生まれ。千葉県出身、玉川大文学部卒。主な作品に「しろいろの街の、その骨の体温の」(第26回三島由紀夫賞)、「コンビニ人間」(155回芥川龍之介賞)など。作家活動の傍ら、週3日コンビニで働いていることで有名。
- 「あげくの果てのカノン」
世界が危機的状況を迎えた中で、高月かのん(23歳)が恋の泥沼にハマっていく物語。かのんが好きな先輩(高校時代から8年間ずっと片思い)は、人類を守るべく闘う特務部隊の凄腕で、かつ既婚者――。※参考 ねとらぼレビュー:いつの世も人は不倫にドハマリする 一途ストーカー女子が恋の泥沼に沈むSF「あげくの果てのカノン」。
小学生時代の恋愛
村田:
かのんを見ていると、小学生くらいの時、恋愛ってこういうことだった気がするんですよ。小学生時代、たまたま席替えで友達が好きな子の隣の席になったら「何でもいいから盗んで」って言われて。「分かった」って言って。シャープペンシルとかいろいろ文房具を盗んでたんですよ。それで「沙耶香ありがとう」と友達に感謝されて。あげればあげるほど友達が喜んでくれるから、全く良心の呵責なく泥棒していた。女子の恋愛ってそういうところがあった気がします。
担当編集:
盗まなかったかもしれない(笑)。
村田:
本当ですか? この話を他の編集さんにした時、「私も好きな先輩の絵を美術室で盗んだことある」って言われました。
担当編集:
好きな人の机に座ったり、下駄箱のサイズを見たり、情報は集めてました。しゃべらなくて全然いいんですよね。
村田:
「今理科室にいるらしい」と聞いて走っていったり。断片的な情報だけで生きられた。
米代:
そんな感じでした。
村田:
恋をしてるから許されると思ってるんですよ。「(盗んだものでも)別に大切にするし?」と、悪いって感覚が全然なかった。
かのんに共感するところが多いという村田さん。先輩との会話を録音して、1人で再生しては悶える作中の名シーンにも「好きな声優のCDを聞くようなもの」と納得していました。
嫌な人のことを考え続けると――2人の意外な共通点
村田:
(「コンビニ人間」の白羽のように)嫌な人間を書くのがすごく好きなんです。人間の醜い感情を書いていると人間のことがどんどん好きになってくる。変な感じなんですけど、グロテスクであればあるほどかわいく、皆いとおしくなる。
米代:
分かります。私は人と接していてイラっとしたことをずーっと掘り下げていくのが好きなんです。それで相手がなぜあんな発言をしたのかなど分かった瞬間にすごくいとおしくなります。
村田:
分かる。小さいころから「嫌いだなー」と思った人のことをいとおしいなって思えるまで考える続けるのが好き。
米代:
分かります、分かります。ある瞬間に切り替わるんですよね。そこのカタルシスがすごいんです。
村田:
この話、共感してくれた人に初めて会った。うれしい。
いとおしい境地に到達するには「問いかけ続ける」「個人のレベルを超えて認識する」などが重要とのこと。ちなみに、好きな人のことを考えるのか問われると「好きってあまり理由がないですよね。感じのいい人には疑問がないから、考えている時間でいったら嫌いな人の方が長い」(村田)。一方、コンビニで働いている際、嫌な客に遭遇したらどうするのか、「あげくの果てのカノン」に嫌なキャラが出てこない理由とあわせて。
村田:
お客さまのことは店員としていかに対応するかを考えていて。とはいえ歌舞伎町のコンビニ時代、酔っぱらっているお客さまは警察呼ぶか……みたいな。めちゃめちゃに店内で殴りあっていて、やっぱり歌舞伎町は日本一治安悪いのかなって。その経験があるので今はどのお客さんもいい人に見えます。
米代:
私の場合、悩みでもあるんですがあまり嫌な人を描けない。なぜなら、いとしくなってしまうから。背景を掘り下げて考えると完全に嫌なキャラにならない。(略)悪意がない人の方がやっぱり怖いんですよ。そこに理由がないから。「コンビニ人間」でいうと周りの友達とか、主人公の妹とかのほうが怖いなって。
村田:
ありがとう。「普通の人が普通にしてるのが怖い」という感覚は書きたかった。
独特の感性を持つ2人に対し、会場からはさまざまな質問が寄せられました。以下、主な質疑応答をまとめてどうぞ。
プロ作家でも自己評価は低い
――恐怖とは? 嫉妬する? 自分に自信ある?
村田:
恐怖は日常。恐怖に囲まれて生きてきたというか、恋人や家族以外の人間が全部怖かったんですよ。それを分析することで今に至っています。嫉妬はあまりしません。なぜなら自分に自信がないから。私は世に生きてる人間全てが自分より上だと思っていて……。
米代:
視線や集団は怖いですね。特に集団は有無を言わさず「そうでしょ?」みたいに迫ってくる。今漫画家をやっているのも集団生活が嫌だからという部分が大きい。私は自己啓発系なので自信を持とうとしているけれど自己評価は低いです。嫉妬は時々しちゃいますね。そして嫉妬する自分に自己嫌悪したり……。
気鋭の作家が考えていること
――表現するとはどういうことなのか
村田:
表現より「創作している」感覚の方が強い。物語を作ることは奇跡みたいな事を起こしていく作業なんです。私はラストを一切決めずに書いていくのですが、そのうち「この言葉をもっと濃厚にしたい」「表現したい」という感情が生まれてくる。物語が持っている奇跡に引きづられる感じです。
米代:
自分のイメージを超えたものが紙の上に現れた時にものすごい快感がある。それが好きでずっとやってます。
――作品を書くときにの根底にあるものは
村田:
書くことを通じて「人間はこうだったのか」「人間はこの時こんな表情をするんだ」など、現実世界では知ることができないことを知れる。この“知りたい”が原動力ですね。
米代:
どれだけ人間について真摯になれるかを考えています。他人のことを考えだしたのは漫画を描き始めてから。漫画を描くにあたってそこはちゃんとしたい。
余計な干渉はNG
――世間の恋愛観に対しての違和感は?
米代:
経験人数で格付けが決まり、マウンティングされること。「だからダメなんだよ」と言われやすい。男だと「だから童貞なんだよ」とか。でも、本人的には切実でどうしようもなかったりする。「勉強ができる/できない」「運動ができる/できない」と同じようなもので、簡単にできてしまう人を基準にダメさを決めるのは嫌だなと思います。
村田:
恋愛ってある種のパターン化されていて、そのパターンになぞらえて恋愛している人もたくさんいると思うんですが、私は基本的になんでもありだと思っています。だから、本人同士が話し合って、例えば夫婦が「外でセックスしてもオーケー」と約束したり、個人が「処女だけど子どもを産もう」として人工授精したり、当事者の中でちゃんと解決していることに対して干渉するのは……。悩んでいる人にアドバイスするのは分かるけど、「世界がそうだから」という理由で裁くのはグロテスクで一番怖いことだと思っています。
(高橋史彦)
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