手塚治虫や藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫……トキワ荘の漫画家たちが愛したラーメン「松葉」に行ってきた
藤子作品に登場するキャラクター「小池さん」が食べているラーメンのモデルとなったお店です。
池袋からほど近い豊島区南長崎は、手塚治虫や藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫などが暮らした「トキワ荘」があったことで知られ、今では漫画家の聖地と呼ばれている街である。
この地には、今でも彼らとの関わりがあったスポットが点在している。その中でも数々の藤子作品に登場するキャラクター「小池さん」が食べているラーメンのモデルとなったお店が現存すると聞きつけ、早速伺った。
そのラーメン屋がこちらの「松葉」。店に近づいてみると……なんと、入り口に漫画のページが貼り付けてある!
このページを見てみると、トキワ荘では引越しラーメンとして食べられていたと書かれている! 同じ釜の飯を食う仲として切磋琢磨(せっさたくま)し、漫画家の道を歩んできたのだろう。この店が、世界に誇る日本の漫画界の躍進に一役買っていたことが伺えて、早くもテンションが上がる。
店内の正面の壁にはずらりと並べられているサイン色紙があった。現在、活躍する有名漫画家たちのサインが多く目立つ。
店主にトキワ荘のメンバーたちが好んだ食べたものを聞いてみると、みんなこぞって普通の「ラーメン」を頼んだというので、素直にラーメンを注文することにした。
ラーメンを待つ間、こんな写真も発見した。トキワ荘の漫画家たちが暮らしていた頃の松葉の外観だそうだ。
しばらくすると、ラーメンが登場。見た目は、昔ながらのしょうゆラーメンだ。具材は、チャーシューにゆで卵、メンマ、ワカメ、ネギとオーソドックスだが、美しく盛られていて見るからにおいしそうである。
一口食べてみると、おいしい……! 藤子不二雄A先生風に言うと、「ンマ〜イ!」だ。スープは、鶏ガラとしょうゆのバランスがちょうどよく、レンゲを持つ手が止まらない。チャーシューも肉厚で食べ応えがあって、味もしっかりしている。これなら、彼らに好まれた理由がすぐに納得できる。出てきたばかりだというのに、あっという間に完食してしまった。
カウンターの隅にはメッセージノートが積まれていた。“トキワ荘のあった街”、トキワ荘についてなんでもお書きください、と書かれてある。
メッセージノートには、「松葉」を訪れた人々が、ラーメンを食べた感想や、トキワ荘の漫画家たちへの思いなどをびっしりとつづられていた。中には、地方からやってきた人の念願かなった感激の言葉や、漫画家志望のゲン担ぎのコメントも見られた。それに、このノートに記した誰もが一様に、松葉のラーメンを「ンマ〜イ!」と書き残していることは、とても印象的だった。
そしてあらためて壁に並んでいるサイン色紙を眺めると、なぜか感慨深く思えた。既に活躍中の漫画家たちや、メッセージノートに記した全ての人が、漫画界の黎明期にいた偉人たちをリスペクトしていること、またそんな彼らが愛するラーメンを同じように共有していることの素晴らしさが同時に実感できたからかもしれない。
筆者も同じように漫画に慣れ親しんだ一人である。このような漫画界の聖地に訪れられたのは、とても貴重な体験であった。漫画を愛する者なら、一度は「松葉」へ行ってラーメンをすするべし。
「松葉」
住所:東京都豊島区南長崎3−4−11
営業時間:11時〜15時/16時〜21時
定休日:なし
(伊佐治龍/LOCOMO&COMO)
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