「FF7」の衝撃はいかにして生まれたか? 田中圭一、電ファミでゲーム業界の「青春期」描く新連載

80〜90年代に奮闘したゲームクリエイターたちの熱い思い出を描く。

» 2017年05月31日 16時33分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 漫画家の田中圭一さんが新連載「若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜」を、ゲーム専門メディア・電ファミニコゲーマーで開始しました。80〜90年代のゲーム業界を「青春期」と呼び、当時大奮闘したクリエイターたちの熱い思い出を描くインタビュー漫画。第1回のゲストは「ファイナルファンタジー(FF)」の生みの親、坂口博信さんです。



FF7 1997年に発売され、ゲーム界全体へ衝撃を与えた「FF7」。その映像美を生まんとした坂口さんの熱い思いが語られます(「若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜」第1回・11ページより)

 冒頭は田中さんがとあるゲームメーカーに勤めていた1997年当時の思い出。発売されたばかりの「FF7」の映像を見て、「今日以降発売されるゲームはすべてこのグラフィックと比較されることになるのか」と震撼するスタッフの姿が描かれます。


「FF7」の公式PV。プレイヤーだけでなく、ゲームの作り手たちも驚嘆せしめた

 そしてこの「FF7ショック」を引き起こした張本人こそ、旧スクウェア時代に同作を手掛けた坂口さんでした。美麗なグラフィックの秘訣を聞かれると、1986年に同社がPC向けに発売したRPG「クルーズチェイサー ブラスティー」の開発秘話を披露。ハードの限界を超えるアニメ表現を実現した成功体験が、映像にこだわるようになった発端と明かします。


静止画が当たり前だった当時に、ロボットの戦闘がアニメで動く高度な表現を実現したSFもの。アニメの作画は日本サンライズが担当。坂口さんはシナリオ担当として参加している

 「クルーズチェイサー ブラスティー」で成功した坂口さんでしたが、その後も高度な技術力を生かして「FF」シリーズの開発も順風満帆に――とはいきませんでした。初代「FF」の企画立ち上げ時に、坂口さんが「打倒ドラクエ」を旗印に掲げてしまったからです。当時RPGといえば「ドラクエ」が一強。スタッフが引いてしまい協力を得られなかったのも無理からず、坂口さんは求人誌を利用して開発者を募るしかなかったといいます。

 しかし地道なスカウトが奏功し、チョコボの生みの親にしてのちに「聖剣伝説」を作る石井浩一さん、「サガ」シリーズの川津秋敏さん、ドッターの渋谷員子さんらそうそうたるメンバーが集結。飛空艇の高速スクロールを、ファミコンの制約を超えて実現した天才プログラマー、ナーシャ・ジベリさんも登場します。彼らの技術は「流麗なグラフィック」という武器を作り上げ、「FF」シリーズを「ドラクエ」と並ぶ二大巨頭に押し上げたのでした。


スタッフ結集 のちにスクウェアの看板タイトルを支えるクリエイターたちが集結。特にナーシャ・ジベリさんの逸話はこのあと詳しく語られています(「若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜」第1回・7ページより)

 「FF7ショック」を生んだのは、「クルーズチェイサー ブラスティー」の成功体験から生まれた、「ハードの限界を超える」精神だったといえるでしょう。この挑戦心は「FF7」開発時にも発揮され実を結ぶわけですが、詳しくは漫画をご覧ください。

 時代を作ったクリエイターの、若き日の奮闘を明らかにするこの連載、次回更新は6月30日予定。「アクアノートの休日」で知られる飯田和敏さんがゲストとして登場します。その斬新なゲームデザインを生んだ思想や、「風雲児」と呼ばれた故・飯野賢治さんとの友情や死別が語られるとのことで、今後も見逃せません。


次回予告 涙なしには読めない展開もありそう……(「若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜」第1回・次回予告ページより)

(沓澤真二)


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