「諸悪の根源は製作委員会」ってホント? アニメ制作における委員会の役割を制作会社と日本動画協会に聞いた(1/3 ページ)
製作委員会ってそもそも何をする組織なの。
「アニメがヒットしても製作委員会がもうかるだけでアニメーターには還元されない」「製作委員会の利益搾取」「広告代理店の中抜き」などアニメ制作の現場からしばしば聞こえてくるこれらの意見。アニメ制作において製作委員会の役割とはなんなのか、製作委員会は本当に悪なのか、中堅制作会社の役員と日本動画協会を取材しました。
6月7日に放送されたクローズアップ現代+「2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働”」でも、製作委員会の構造についてパネルで説明するくだりがありましたが、視聴者からは「問題点、このパネルで一目瞭然なのに」「やりがい搾取の典型」「製作委員会のシステムが一番の問題なんじゃないの?」といった疑問の声があがっていました。
制作会社が語る、製作委員会の役割
製作委員会とは何なのか
批判的な意見が相次ぐ中、なぜアニメも実写も製作委員会方式を採用するのか。中堅アニメ制作会社の役員A氏が取材に応じてくれました。
――アニメ作品における製作委員会とはどういった組織なのでしょうか
制作会社A氏:アニメを作る際のリスクヘッジ組織であり、委員会に参加した各社の営業力によって委員会全体の収益を最大化するための組織です。ビデオメーカー(DVDやBlu-rayの販売元)、広告代理店、出版社、玩具メーカー、配信会社、アニメ制作会社、放送局など作品によってさまざまな企業が製作委員会に入り、作品に出資します。
広告代理店の中抜き疑惑
――ネット上で「アニメの製作費を広告代理店が中抜きをしている」という話が話題になっていますが、これは本当なのでしょうか
制作会社A氏:それはウソです。代理店が製作委員会に入る場合には、きちんと出資してリスクも負担しており、そのお金が制作費に回されます。アニメの製作費は後述する“主幹事会社”に集められ。100%アニメ制作会社に支払われます。
――ではなぜ「広告代理店とテレビ局が中抜きしている」というウワサが広まったのでしょうか
制作会社A氏:この誤った情報の元を調べると平成15年(2003年)6月に経済産業省が「アニメーション産業の現状と課題」という調査資料を出しており、この4ページに“中抜き”と勘違いされてしまうような模式図があるのを見つけました。
この模式図が表しているのは、ゴールデンタイムや日曜日の朝に放送されている子ども向けアニメのモデルです。なおかつスポンサーが広告代理店に支払っているのは“アニメの制作費”ではなく“広告宣伝費”(CMを流す費用)なのです。テレビ局はあくまで「番組を企画してアニメ番組を作り、代理店を通じてスポンサーにCM放送枠を販売する(視聴率が高ければ高いほど高い値段で売れる)」というビジネスを行っているのです。代理店は代理店で「営業をしてスポンサーを探していく」というビジネスを行っています。つまり、この模式図のモデルの中でも広告代理店は“中抜き”しているわけではないのです。このときの調査対象が主に子ども向けのアニメーション作品のビジネスモデルだったことからこの図が掲載されたようなのですが、現在のアニメビジネスにはほとんど当てはまらないモデルです。
――具体的な例でいうとどういうことでしょうか
制作会社A氏:例えば「サザエさん」は東芝がメインスポンサーとなっています。「サザエさん」は全国ネットのゴールデンタイムの番組ですので、東芝は広告代理店を通じてかなりの広告宣伝費を払っているはずです。しかし、これはあくまでも“CMを流すためのお金”であって“アニメの制作費”ではないことはご理解いただけると思います。
――そういうことだったんですね
制作会社A氏:この調査資料を作成した人はあくまで“お金の流れ”としてこの模式図を作ったのでしょうが、スポンサーが支払ったお金の名目の記載がないので「制作費の中抜きという」誤解を産む原因になっているかと思います。先ほどの模式図のビジネスモデルの場合、「視聴率を取れる」「スポンサーのグッズが売れる」ことが最優先されますので、スポンサーはおもちゃを売るため内容にまで細かく口を出してきます。それがアニメを作る上での制約となっていたときに、「制作費もCM放送費用も全額を負担するので、作り手側が作りたいものを放送できる」という形で生まれてきたのが“製作委員会”方式なのです。つまり現在のアニメ産業の多様性は製作委員会があるからといっても過言ではありません。すなわちわれわれのような子ども向けアニメではなくコア向けアニメを作っている制作会社は製作委員会がなくなると仕事自体がなくなってしまうのです。
製作委員会に入ればもうかるのか
――製作委員会に入ると大きな利益が得られるのでしょうか
制作会社A氏:そんなことはありません。基本的にアニメ作品10本に出資したとしても大体9本は外れます。そのうちの1本がヒットして9本分の赤字が埋まるかどうかという感じなのです。ただ各社が権利の窓口(※)を持っているので、その権利運用がうまくいけば、例えば製作委員会への出資自体が赤字でも、窓口での利益(パッケージの販売利益、グッズの販売利益、出版の利益、映画配給の利益など)で回収できる可能性もあります。具体的な例を挙げてみるとするとビデオメーカーが製作委員会に1000万円出資したところ、委員会からの戻しは800万円だった。ところがDVDはたくさん売れて、その販売利益が1500万円上がったなどの場合です。制作会社の場合は制作費が入ってくるだけなので、その利益は小さく、制作費は定額なので利益は上振れしません。つまり獲得窓口の権利運用ができない規模の制作会社が製作委員会に出資して利益を出すのは厳しいと思います。
※ビデオメーカーであればパッケージを作る権利、グッズメーカーであればグッズを作る権利など。
――製作委員会方式が増えてきたのはどうしてでしょうか
制作会社A氏:アニメ作品を大人が見るようになってきて、パッケージ(VHS)を売るというビジネスモデルが1980年代後半から1990年代初頭にできてからでしょうか。それ以前はテレビ局側が望む作品=視聴率を取れる作品か、ナショナルクライアント的なスポンサーが望む作品しか作れませんでしたが、OVA(オジリナル・ビデオ・アニメーション)などのパッケージで制作費が回収できるという方式が確立されてからは、作り手側が作りたい作品を制作できるようになりました。この場合、製作費は作り手で用意する必要がありますから、製作委員会方式が増えてきました。
――先ほどのお話にあったリスクヘッジというのは
制作会社A氏:先ほどお話した通り、アニメ作品の9割ははずれますので、そうなってしまった場合のリスクを複数社で負担して分散するということです。一般的な深夜アニメの制作費は1話あたり1500万円といわれており、13話で1億9500万円。これに宣伝費(1000万円程度)を加えた、約2億500万円が1クールで必要なお金になります。もしこれを1社で抱えて、さらにヒットしないとなると大変な損失になりますよね。さらに製作委員会方式で作品を放送するためには「番組提供費」というものも必要になるので、4社から5社、多い時は10社程度でリスクを分散する形が主流になっています。
――番組提供費というのは
制作会社A氏:アニメを放送するための放送枠を買うお金です。よく勘違いされるのですが、ナショナルクライアントの広告宣伝費に頼らず、アニメ作品をテレビ放送する場合には、テレビ局がお金を出してくれるのではなくて、製作委員会で放送枠をテレビ局から買うのが主流なんです。この場合放送枠を売ったテレビ局は、放送枠を販売した段階で売上が確定しますのでメリットが大きいです。製作委員会はこの購入した放送枠を委員会に出資した各社でどう負担するか、またどうやって外部からスポンサーを集めてくるかなど協議して決めていきます。つまり製作委員会システムでアニメを製作して放送するときには「アニメの制作費」と「番組提供費」という二重のリスク負担したところからビジネスがスタートするのです。つまり製作委員会に出資しないアニメ制作会社は、理屈上は受注下請けだけなので“ノーリスク”なのです。ただしこれはあくまで“理屈上の話”です。
――番組提供費の具体的な金額はどの程度なのでしょうか
制作会社A氏:放送枠や局ネットの数によっても違いますが、基本的には非公開です。ただし放送局の数が増えれば増えるほど番組提供費がかかっていると考えてよいと思います。
製作委員会の成り立ち
――製作委員会にはいろいろな企業が入るということですが、そもそもどうやって委員会が作られていくのですか
制作会社A氏:まずはビデオメーカーや制作会社などのプロデューサーが企画を練り、周辺の会社に声掛けをするところから始まります。賛同する会社が増えていくと、主幹事会社というものができて、「うちが責任をもってお金を集めます」ということになります。この“責任”というのは、「もし目標とする出資金を集められなければ自社で負担します」という意味です。
――資金調達に失敗して主幹事会社が多めに払うということはありえるのでしょうか
制作会社A氏:そういうパターンはありますね。ただそうなったとしても、作品がヒットすれば出資額が増えた主幹事会社には多めにはリターンが発生することになりますので、作品が当たれば利益は増加することになります。
――この作品はこの会社が主幹事、というようなことはオープンになっているのでしょうか
制作会社A氏:基本的には明かされませんが、パッケージメーカーや映画会社が主幹事になることが多いです。主幹事には、全体を調整する能力と資金力が求められますので、主幹事をできる会社は限られます。
――ネット上では「製作委員会に入りたくても入れない会社も多い」という情報が流れていますが、これは本当でしょうか
制作会社A氏:本当だと思います。製作委員会にとって最も重要なのは「収益を最大化できるか」、つまりその会社が獲得する権利運用窓口にどれだけの営業力や実績があるかです。出資を希望する会社の営業力が低かったりすると、最終的に製作委員会全体の収益が下がってしまいますからお断りする場合も多いと思います。また、アニメ制作会社が出資だけしても回収ができない確率が高いわけですから、ある種の親切心で「入らないほうが良いのでは」というお話が出るかもしれません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
-
「博物館行きでもおかしくない」 ハードオフ店舗に入荷した“33万円商品”に思わず仰天 「これは凄い!!」
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
「マジかーーー!」 新札の番号が「000001」だった…… レア千円を入手した人が幸運すぎると話題 「555555」の人も現る「御利益ありそう」「これは相当幸運」
-
浅田真央、男性と“デート” 驚きの場所に「気づいた人いるかな?」
-
身内にも頼れず苦労ばかりの“金髪ギャルカップル”→10年後…… まさかまさかの“現在”に「素敵」「美男美女でみとれた」
-
海岸で大量に拾った“石ころ”→磨いたら…… 目を疑う大変貌に「すごい発見!」「石って本当にすてき」【カナダ】
-
トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
-
生後1カ月の保護子猫、後頭部を見るとあのアルファベットが……→9カ月の現在にびっくり 「プレミアム猫」「本当にPですね」
-
辻希美、17歳長女・希空に「ダサすぎるって」とツッコんだ格好
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」