「ミュージシャンは食えない」ってホント? 元プロサックス奏者にあれこれ聞いてみた(前編)(3/3 ページ)
学生時代の同級生の活躍と己を比較し、胸を痛める
――25歳って、ふつうに大学を卒業して働き始めたら、ちょうど丸3年たっている時期ですよね。後輩もいたり、ちょっと出世が早い人なら主任になるとか、チームリーダーになっていることもある。
G: そうそう。後輩を指導したり、たまにおごったりすることもあったりして。学生時代の同期がバリバリ仕事しているのを横目に、「自分は何をやっているんだ……まだ自分は何者でもない……」って事実を突きつけられるのって、けっこうメンタルに来ますよ。
――経済力もなければ、ステータスもない。心のよりどころがない感覚かな。
G: ミュージシャンって向上心の塊な連中が多くって、ハンパない野心がある。だからプロを目指す。なのに何も成し遂げていない……その現実と同期の活躍のギャップで苦しむんです。
――成功する人って、こういうつらさをどうやって乗り越えるんでしょうね。
G: 「俺(私)は音楽しかない」って突っ走れる人じゃないですか。周囲と自分を比較しない、いちいち落ち込まない。我が道を進める人。
――映画やドラマで、ロックンローラーを目指す青年が「俺、来年で30になるし、そろそろ見切りをつけようと思うんだ」ってつぶやくシーンとかあるじゃないですか。あれって、遅いんですかね?
G: 一概にはいえないですが、一般論で語れば遅いです。遅すぎ。
――30歳で未経験の世界に入って来たら……いろいろつらいでしょうし、惨めな思いをすることもありそうですしね。
G: 僕は26歳で見切りをつけてビジネスマンの道を選びましたが、もしもあと3年引っ張って29歳で辞めていたら、今の自分はいなかったと断言できます。
――そうなんですね。
G: 自分が30歳になったときって、自分で言うのもナンですが一丁前に仕事はしてましたしね。
――プロになれなかった元ミュージシャンって、きっとゴロゴロいるわけじゃないですか。そういう人たちって、今も後悔したり、つらい思いを抱えながら生きているんでしょうか。
G: やりきった感があれば、後ろ向きな気持ちで生きてはいないと思いますよ。負けてすがすがしい……じゃないですが、やりきった結果、プロに届かなかった人は、切り替えて今の生活をエンジョイできている人がほとんどじゃないかな。
――それを聞いて、ちょっとホッとしました。
後編もヘビーなお話を……
想像通り、いや想像以上に音楽の世界は厳しいのが分かりました。まあ、小学生時代にピアニカすらまともに演奏できなかった自分はもともと縁のない世界ではありますが……。さて、後編ではお金の話とか、やりがい搾取の有無等、わが子がミュージシャンを目指したときにかける言葉など、若干ヘビーなお話を伺います。
中山順司(なかやま・じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。freee株式会社勤務&経営ハッカー編集長。ブログ「サイクルガジェット」運営。
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