伝説の髪形「昇天ペガサスMIX盛り」って実在したの? 「メガ盛りスタイル」のその後を歌舞伎町のヘアサロンで聞いてきた(2/2 ページ)

» 2017年09月22日 11時00分 公開
[あだちまる子ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

―― そうなると、“トルネード花魁アップ”や“鳥かごのせちゃいました! 盛り”も?

菅野さん:僕の知る限りではいませんでした。“昇天ペガサスMIX盛り”などの名称が付くもの、付かないオリジナルのもの関係なく、“メガ盛り”と呼ばれるヘアセットのオーダーをいただいたことはありません。まわりのスタイリストから聞いたこともないですね……。

advertisement

 どうやら、“昇天ペガサスMIX盛り”やそれに派生するメガ盛り髪は、あくまで雑誌の一企画として紹介されていたもので、菅野さんやまわりのスタイリストが実際にオーダーされる事例や目撃例はなかったそうなのです。筆者を含め、都心部では“昇天ペガサスMIX盛り”を頭にかかげるキャバ嬢がいたと信じていた方も多かったことでしょう。すると、当時のキャバ嬢たちは一体どんなヘアスタイルをしていたのでしょうか。


昇天ペガサスMIX盛り ヘアセットを施すためのさまざまな道具/ヘアセットアップス

―― その当時のキャバ嬢のヘアスタイル事情は実際のところどういうものでしたか?

菅野さん:“盛り髪”は確かに流行っていました。逆毛で作った“盛り”の部分が高ければ高いほど「目立てる!」ということで、高く盛ってほしいとオーダーをいただくことは本当に多かったです。


昇天ペガサスMIX盛り 髪を高く“盛っていた”キャバ嬢はいました(『盛り髪セットサロンバイブル/SAKURA・MOOK38』から)

―― そのような“盛り髪”のオーダーは今でもありますか?

advertisement

菅野さん:コンサートなどのイベントで目立ちたいお客さまからのオーダーはありますが、夜のお仕事をされてる方からの“盛り髪”のオーダーはありません。他のヘアセット専門サロンでは、盛り髪セット自体を取り扱っていないとも聞きます。

―― 現代のキャバ嬢のヘアスタイルはどういったものが主流ですか?

菅野さん:いかにナチュラルに見せるかを重視したヘアスタイルが主流だと思います。当時は盛り髪が作りやすいウルフカットが流行っていましたが、今は重心が毛先にあるワンレンが流行っていますよね。でも、ワンレンの髪の長さや重さが盛り髪には向いていないんです。そういったことから、盛り髪のオーダーがなくなっていったのではないでしょうか。

―― ちなみに、“昇天ペガサスMIX盛り”をオーダーすると時間や料金はどのくらいかかりますか?

菅野さん:“昇天ペガサスMIX盛り”などのメガ盛りに関しては、オーダーをされても料金関係なく承ることは難しいです。あれを作るのには針金や装飾品などといった材料が必要だと思うので、材料を持ち込んでいただくなど、準備が整っていて、こちらの時間に相当余裕がある場合でない限りは、基本お断りさせていただきますね……。

advertisement

―― 盛り髪などのブームはいつ頃がピークだったんでしょうか?

菅野さん:実際のところ、“昇天ペガサスMIX盛り”などが雑誌で紹介されていた2009年頃にはもう盛り髪ブームは下火でしたね。一番盛り上がっていたのはそれ以前の2005年から2008年頃だと思います。


昇天ペガサスMIX盛り 盛り髪をセットできるスタイリストは今や貴重とも語ってくれました/ヘアセットアップス

―― 歌舞伎町で働くキャバ嬢のヘアスタイルを見続ける菅野さんとしては、その当時や、今についてどのように感じますか?

菅野さん:当時のヘアスタイル文化はとても面白かったと思います。あの頃のような盛り上がりをもう一度巻き起こしたいと話しているスタイリストは結構多くて、それにはぼくも強く共感するんです。今後、盛り髪かどうかは別としても、あの頃のように話題になる新しいヘアスタイルを作れたらうれしいですね。

“メガ盛り”とはなんだったのか


昇天ペガサスMIX盛り “メガ盛り”(『盛り髪セットサロンバイブル/SAKURA・MOOK38』から)

 “昇天ペガサスMIX盛り”をしていたキャバ嬢は実在しませんでしたが、“盛った”髪の高さで自身をアピールしていた時代は確かに存在していました。

 レディ・ガガやきゃりーぱみゅぱみゅが奇抜なヘアスタイルを披露しても、生肉を体に巻きつけても、原宿でいやほいしても、それでも現在まで語り継がれる“昇天ペガサスMIX盛り”は、夜の街で華やかに、そしてたくましく生きる彼女たちの“強さ”が具現化したものだったのかもしれません。

 個性の置きどころが多様化し、嗜好のセンスや知識、ライフスタイルなど、あらゆるもので自身の“強さ”を主張することができる現代で、自分にとって“強い”と思えるものを愚直に主張した当時のキャバ嬢のスタイルは、その頃を知らない若い人たちにとっては新鮮なものとして目に映ったのではないでしょうか。

 これからも新たな文化が築き上げられていくことを予感した今回の取材。いつかまたストレートな“強さ”を示す時代が巡ってきたとき、“昇天ペガサスMIX盛り”がオーダーされる日が訪れるのかもしれません。

参考文献

盛り髪セットサロンバイブル/SAKURA・MOOK38

キラキラhair/SUN MAGAZINE MOOK

取材協力

ヘアセットアップス

あだちまる子

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  3. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  6. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  7. /nl/articles/2412/21/news005.jpg 藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの~」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」