東京ビッグサイト問題、都知事の対応は「焼け石に水」 「対応の余地ある」と展示会関係者
オリンピックの関係で東京ビッグサイトが一定期間利用できなくなる問題。「コミケ関連で調整中」はどれだけ意味があるのか――関係者に取材しました。
オリンピック・パラリンピック2020東京大会に伴い東京ビッグサイト(東京都江東区)の利用が制限される問題について、9月29日に小池百合子都知事が記者会見で5月1日〜5日に会場の一部をコミックマーケット(コミケ)関連で使えるよう関係者と調整をしていると発表しました(関連記事)。
2015年から反発の声があがってきたこの問題に、都知事が初めて公式の場で発言。企業側からは「一歩前進」と評価の声があがる一方、緩和策の内容には「焼け石に水」「全く抜本的解決にならない」と厳しい声が続出しています。10月3日、日本展示会協会(日展協)は「若干の緩和 『しかし、抜本的解決ではない』の声、高まる」という速報を公開しました。
数多くの展示会が中止に追い込まれ、1兆円以上の売上損失をもたらす試算もあがっている、“ビッグサイト問題”。今回の都が提示した緩和策はどれほど効力があるのか、いまだ残る課題は何なのか――以下、詳しく見ていきます。
東京ビッグサイト問題の経緯
東京ビッグサイトは2020東京大会の開催計画で、各国が報道活動の拠点とする「国際放送センター」(IBC)や「メディアプレスセンター」(MPC)として使用されることが決まっていました。
しかし2015年11月に都の発表で、大会の開催時期を含む1年半は施設の半分以上、7カ月は全体が民間利用できなくなることが判明。同時期に代わりとして使える会場が都や近郊に無いことから、日展協や企業が計画の変更を求めた結果、2020東京大会の組織委と東京ビッグサイトは複数回に渡って軽減策を講じてきました(関連記事)。
2017年4月に発表された、一般利用できる状況は次の通りです。
- 東展示棟(5万1380平米)と東新展示棟(1万6000平米)は2019年4月〜2020年11月、利用不可
- 西展示棟(2万9280平米)は2020年5月〜9月、利用不可
- 南展示棟(2万平米)が2019年7月に開設して利用可能に、しかし2020年4月〜10月は利用不可
- 1.5キロ離れた東京テレポート駅あたりに仮設の青海展示棟(2万3200平米)が2019年4月に開設して利用可能に、しかし2020年7〜9月は利用不可
これでもなお例年4万1000社のうち3万7000社(ほぼ中小企業)が出展できなくなり、約1兆125億円の売上を失うとして、6月16日に日展協は公式声明文を発表。年に1度の展示会によって会社を存続できている中小企業や零細企業は倒産する恐れもあると訴えます。東京ビッグサイトと同規模の仮設展示場(8万平米)を首都圏に建設する、2020東京大会でMPC用の仮設施設を新たに作るなど“抜本的な解決策”を求めました。
6月22日には都庁前でデモを実施、請願署名は15万筆を突破しましたが、都は沈黙を保ち続けていました。9月26日、東京ビッグサイト問題に対する1ページの意見広告を日経新聞(関東版)に日展協が掲出。その3日後、都からようやく東京ビッグサイトについて公の場で発表があったのがこれまでの経緯です
都の緩和策に「これで幕引きは困る」 企業側の意見は
都知事が説明した東京ビッグサイト問題に対する緩和策は、次の通り。
- 西展示棟(2万9280平米)を5月1日〜5日にコミケ関連で使えるよう関係者と調整中
- 仮設の青海展示棟(2万3200平米)を新たに7月1日〜14日と9月10日〜30日、35日間利用可能に
この内容にネットでは「大幅縮小されることに変わりない」「コミケは問題の一端にすぎない」と、抜本的解決には至らないと厳しい声が相次いでいます。
問題に取り組んできた音喜多駿都議会議員はブログで「知事がコミケ問題について注力されていることを発表されたのは、前向きなことであると思います。しかし一方で、現時点で提示されている解決策には課題が多く残ります」とコメント。山田太郎元参議院議員もTwitterで「努力評価するもこれで幕引は困ります」と懸念を示しました。
2015年から本問題に警鐘を鳴らし続けてきた同人印刷会社「栄光」(広島県福山市)の代表取締役社長・岡田一氏に取材したところ、「わずかでも改善しようとしてるところは評価できる」としつつも、次のように述べます。
「多くの企業が展示会の中止に追い込まれるという根本的問題には、焼け石に水です。コミケだけが困っているような発言も的外れで、正直今度の衆議院選挙に向けた“オタク票目当てのリップサービス”のように見えました」
「コミケの開催だけを考えたとしても、同人誌のことをわかっていないなと感じます。調整中だというGW期間は、同人誌即売会が数多く開催されているシーズン。2017年も『SUPER COMIC CITY』『COMITIA』『博麗神社例大祭』など、3〜5日連続で同人イベントがありました。それらを押しのけてコミケを開催するというのは賢明とは思えません」
仮設展示棟の利用期間が35日間増えたことも、「改善率としては微々たるもの」と切り捨てます。
「仮設展示棟の広さは東京ビッグサイト全体の約12万平米に対して、2万平米と2ホール分しかありません。しかも入場者の待機列を配置できるようなスペースが周囲に全く無いですから、利用できるのは小規模なイベントくらいでしょうか。20カ月に渡る会場縮小と5カ月の完全閉鎖に対して『これで対応しました!』というのは違うのでは」
タイムリミットは年内 「対応の余地はある」
根本的な解決策として反対派が提案しているのは、1.首都圏に東京ビッグサイトと同規模の仮設会場を作る、2.メディアプレスセンター(MPC)用の仮設会場を作る、の2つです。
東京ビッグサイトは2020東京大会で報道施設のMPCとして使われる計画。しかし過去の北京、ロンドン、リオ3大会では、企業イベントや展示会に支障が出ないようMPC用の会場を建設してきました。
「東京大会は当初から“コンパクトオリンピック”をコンセプトに掲げていたこともあって、既存の会場である東京ビッグサイトを使う計画が決まったようです。しかしMPC用に整備し、もとに戻す費用が数百億円掛かると聞いています。コンセプトにこだわりすぎて、『MPC用の会場は作らない』という決定だけが独り歩きしているような」(岡田氏)
具体策としてどのような案が考えられるでしょうか。
「現実的には、東京ビッグサイトの目の前にある防災公園に仮設会場を建設するのが一番理にかなっている気がします。その際、非常時の防災機能は近くの空き地に移すものです。他にも神奈川・みなとみらいで進んでいる都市開発計画のなかで、2020年までに国際的な展示場の機能を持つ大規模な施設を建設してもらうこともあげられます」
6月には日展協から、築地市場跡地、羽田空港近辺、公有地なども候補地としてあがっていました。
「そもそも問題の発端は小池百合子都知事ではなく東京都であって、都として対応の余地はまだまだあると思っています。代わりとなる仮設会場を東京大会までに建設しないといけないことを考えると、計画変更を求めるタイムリミットは2017年いっぱいじゃないでしょうか。残り3カ月が勝負です」(岡田氏)
都議会の定例会が開かれる10月5日には、岡田氏らによる「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」が2回目の抗議デモを都庁前で行う予定。日展協も引き続き個人署名や賛同企業を募っています。
2020東京大会の運営と展示会の開催は両立できるのか――都の対応が注視されます。
(黒木貴啓)
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コミックマーケットを筆頭に東京ビッグサイトの東・西展示棟を使う大規模なイベントは、2019年・2020年度に同会場で開催するのは極めて困難に。
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