ついやってしまう「プチプチつぶし」、始まったのは1970年代? 老舗メーカーに聞いた気泡緩衝材“プチプチ”の歴史(2/2 ページ)
「∞プチプチ」「プッチンスカット」 気泡“緩衝材”の枠を超えたプチプチたち
―― 長年のプチプチつぶしファンなら絶対に覚えているであろう、いつまでもプチプチできる玩具「∞(むげん)プチプチ」(2007年発売)。同玩具の登場に、川上産業はどう関わっていたのでしょうか。
2001年、プチプチの気泡1万個に1つの割合で、ハート型のものを混ぜる「ラッキープチ」を始めました。家具屋、お菓子メーカーなどで梱包作業をしていて、毎日のようにプチプチに触れている方に楽しんでもらおう、というのがコンセプトです。四葉のクローバーのようなイメージですね。
ラッキープチの存在を公表していなかったこともあって、しばらくは発見した方から年に1、2件連絡がくるくらい。ですが、2005〜6年ごろ、メディアで取り上げられるようになりました。
また、同時期に、弊社によるプチプチのムック本も刊行。こういった動きをご存じだったバンダイさんから「∞プチプチ」の企画のお話が来たんです。
―― 「プチプチつぶし」の感触が再現されていて、気泡代わりのボタンを押すと「プチッ」と鳴るんですよね。
それから、「100回に1回だけ、動物の鳴き声などが鳴る」という機能がありましたよね。あれは、開発時に「ラッキープチの要素を取り入れよう」と搭載したものです。
―― あ、あの機能にそんなつながりがあったんですね。……あのころは、どんな音声が収録されているのか聞きたくて、一心不乱にプチプチしてたなあ。
緩衝材ではなく遊び道具として使うことを想定したものでは、プチプチつぶし専用の「プッチンスカット」も2000年代に出しました。発売当初は、通常のプチプチを小さくカットして卓上サイズにした商品でした。
―― その大きさだと、包装には向きませんよね。どうして、そんなサイズに?
2001年にネットショップを作り、そこで一般消費者向けの商品を売ることになって、それならお届けしやすいコンパクトなものがいいだろう、と。現在は商品改良の結果、通常よりもつぶし心地がいい特殊なプチプチに進化しています。
―― 具体的には、どこが違うんですか?
例えば、気泡の形状ですね。
プチプチは2004年に大幅リニューアルしました。気泡の断面を見ると昔は四角なのですが、今は台形です。こうすることで耐久性を維持しつつ、原料節約、スペース削減などの効果があるんです。でも、プッチンスカットの形状は昔のままで四角。材料なども工夫していて、割れるときの音が良いんですよ。
プチプチの社会貢献
―― 「遊び道具としてのプチプチ」が注目された出来事として、「コピアポ鉱山落盤事故」(2010年/チリの鉱山内に33人が閉じ込められ、約2カ月後に全員救出された)があります。川上産業は、日本からプッチンスカットを送ったんですよね。
災害支援自体は、2004年10月下旬に発生した新潟県中越地震でも行っています。そのときは避難先でクッションなどとして使うことを想定して、通常のプチプチを送りました。実はプチプチは体に巻くと暖かいので、布団の補助としても役立つだろうと考えていました。
コピアポ鉱山落盤事故のときも、何か弊社に支援できることはないかと考えたのですが、通常のプチプチロール(ロール状に巻かれたプチプチ)を送っても、大きすぎて落盤した鉱山内に届けるのが無理そうでした。でも、コンパクトサイズのプッチンスカットならそのような心配がありませんし、電気を使わずに遊べるので、強いストレスを少しでも緩和していただけるのではないか、と。
―― 変わったアプローチですが、事故、災害時は心のケアも必要ですからね
迷惑になってはいけないので、まず大使館に相談してみたら、実際に現場まで送ってもらえることに。救助後のテレビインタビューで、鉱山に閉じ込められていた作業員の方から「プッチンスカットで遊んでいた」というコメントがありました。当社なりに貢献することができて、幸いでした。
―― それにしても、海外の人もプチプチするって、ちょっと意外ですよね。川上産業みたいに、プチプチつぶしに取り組んでいるメーカーって国際的にあるんですか?
材料のほとんどが空気なので、「くうきシート」の輸出入はあまり行われておらず、世界各地にメーカーがあるんですが、プチプチつぶしにここまで注力しているのは弊社だけだと思います。
―― ……ということは、「日本が一番、プチプチで遊びやすい国」になりそうですね(笑)
実用、娯楽の両方向に不思議な進化を遂げていったプチプチ。今年2017年には「Google 日本語入力プチプチバージョン」なるエイプリルフールネタまで登場しています。……いったいどこまで行くんだよ!
プチプチがまさかこんな風に愛されるアイテムになるなんて、誕生した1960年代当時には誰も予想していなかったはず。ですが、きっとこれからも、われわれの生活を便利に、そして、楽しくしてくれる製品として活躍し続けるのではないでしょうか。
※「プチプチ」「プッチンスカット」は川上産業の登録商標です
(マッハ・キショ松)
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