「ゲームやってない奴って話がつまんなくないですか?」 ガチゲーマー芸人「ヤマグチクエスト」のゲームへの異常な愛情(4/4 ページ)
中学時代の自分に会いに行って「お前はそのままで大丈夫だからな」って言ってあげたい
―― 「勇者ああああ」に出て何か変化はありました?
ヤマグチ: 僕、3月にコンビ解散したんですよ。同級生と組んで漫才やってたんですけど、相方がドロップアウトして芸人辞めちゃって。僕も辞めようと思ったんですけど「勇者ああああ」のオーディションがあるからって声かけられて、ピンネタなんて1個もないのに無理やりゲームネタ作って行ったんです。そこでプロデューサーの板川さんが「ネタはアレだけどこいつは本物(のゲーマー)だな」って思ってくださったらしくて。
で、ゲームハードを交互に言っていく古今東西をやったんです。後から聞いたら向こうは携帯で答え見ながらやってたらしいんですけど、僕がまぁ答えるんですって。だけど向こうは答え知ってるから絶対に負けない。当然僕が負けるんですけど、「もう分かんないっすね」って言ったとき僕、半ギレだったみたいで。「本気でゲームの知識で負けて悔しがれる人なんだ」ってなって、後々呼ばれた企画がゲームをプレゼンする企画だったんですよ。それまでもテレビにはたまに出てて反響は全然無かったんですけど、5月の末くらいに「勇者ああああ」のプレゼン企画が放送されたら反響がすごくて、今こうしてお仕事がいただけてます。
ゲームが好きなタレントって「自分がいかにゲームが好きか」をアピールすると思うんですけど、みんな僕には興味ないと思うんで「このゲームは何が面白いの?」を中心にやったらたまたま受けた感じです。そういう人が居なかったんでしょうね。
―― ゲームやってなかったら今の自分はどうなってたと思いますか?
ヤマグチ: いやー、めちゃくちゃつまんない人間になりますよ。……これ完全に偏見なんですけど、ゲームやってない奴って話めちゃくちゃつまんなくないですか?
―― (笑)
ヤマグチ: マジで偏見ですけど、自分の周りにいる「ゲーム全然やんないんだよね」って人ってマジでつまんないんですよね。空気が読めないじゃないですけど、やっぱゲームやってると気付くことはたくさんあるんですよ。(ゲームをやることで)話を組み立てるのがうまくなるんじゃないかな。
―― じゃあ、ゲームやってない芸人を見て「つまんねえな」と思ったりする感じですか?
ヤマグチ: いや、芸人ってほとんどゲーム好きなんですよ。詳しいとかじゃないですけど、ゲーム全くやったことない芸人って見たことないです。ゲームのプレゼンやって「俺もあのゲーム好きだったんだよ」っていう人も居ます。全くゲームやったことない人って人間的には面白いんでしょうけど、お話で面白いと思ったことはないですね。
やってるネタは「『星をみるひと』は果たして本当にクソゲーなのか」など
―― プレゼンをしたゲームの売れ行きが変わる現象もあるようだけど、どう思います?
ヤマグチ: 僕がリンダキューブアゲインをプレゼンしたら、リンダキューブアゲインのアーカイブがめちゃくちゃ売れたってことはあったみたいです。すごかったのは「ボクと魔王」で、もともと中古で何百円くらいの値段だったんですけど、プレゼン後は4000円くらいまで上がってました。中古業者は潤うかもしれませんけど、なんか申し訳ないですね。ソニーさんにお金が入るわけでもないですし。
―― やっぱり普段はゲームのネタをやっているんですか?
ヤマグチ: やってます。許可が下りないので曲が使えなかったりするんですけどね。「『星をみるひと(※)』は果たして本当にクソゲーなのか」とか、「ときメモ彼氏」ってネタで自分が全く動かなかったり、女の子が主人公の名前を呼ぶんだけどイントネーションがおかしかったりするとか。
※ 星をみるひと:ホット・ビィから発売されたファミリーコンピュータ用ソフト。「ストーリー説明が無い」「最初の街がワールドマップ上から見えない」「移動速度が非常に遅い」など理不尽な仕様を持つゲーム。
―― ゲームをネタにするのは結構勇気がいりますよね。
ヤマグチ: 事務所の人には止められてました。マニアックなネタを作っても「本当に置いていかれる人がいるから、説明しちゃうと長くなるし止めたほうがいいよ」ってアドバイスされてたんですけど、相方も同じ中学高校で同じ感覚を持ってたんで実際に舞台でやってみたら感情もこもるんでお客さんも笑ってくれるんですよ。
僕にとっての自然なのがそういう形だったんで、講師に何を言われても野球ネタやゲームネタをずっとやってて……。
―― でも、結局それで今仕事につながってますからね。
ヤマグチ: だから「ざまぁみろ」って思ってます(笑)。
中学時代の自分に会いに行って「お前はそのままで大丈夫だからな」って言ってあげたい
―― 今後の目標はありますか?
ヤマグチ: ゲーム好きとして仕事がもらえる内に、僕みたいな学生生活を送ってきた子たちに「これでいいんだ」って思ってもらえるような大人になりたいと思うようになりました。「ゲームやっても無駄」とか「ゲームやるくらいなら勉強しろ」みたいな風潮があって、ゲームばっかやってて友達も少ないような人がいる中で、僕みたいな大人も居てテレビに出てるのって夢があるじゃないですか。僕も中学時代の自分に会いに行って「お前はそのままで大丈夫だからな」って言ってあげたいくらいの思いがあるんで、僕みたいな鬱屈した毎日を送ってる子たちが前に進むようなきっかけになるような人物になりたいんです。
例えばとんねるずさんはスポーツ選手と対決したりうまいもん食って芸能人と会食したり夢のあることやってるじゃないですか。僕はとんねるずさんみたいな大物がターゲットにしてないような子たちを救ってあげたいっていう思いはあります。
―― 笑いにこだわらずって感じなんですね。
ヤマグチ: 面白いことを求められたらその期待に応えられるような人間ではありたいんですけど、もしそれが足かせになるようなら外しますよ。
漫才で売れたかった人間なんで、それができなかった時点でお笑い芸人としてのプライドはなんにも無いです。「つまんねぇ」って言われても全然悔しくない。しょうがねえじゃんって。もちろん頑張りはしますけど。
(イッコウ)
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