「これで310円とか冗談にもほどがある」 スリルと欲望の間でひたすら大空を滑空するゲーム「Superflight」の中毒性:週末珍ゲー紀行
極限状態で収束する世界。
「とにかく爽快」「これで310円とか冗談にもほどがある」―― 11月半ばごろ、そんな書き込みとともにTwitterで注目を集めたゲームがありました。ムササビのようなウイングスーツを身にまとい、死と隣り合わせの恐怖と爽快感を全身で感じながらどこまでも大空を滑空していくゲーム「Superflight」(Steam)を今回は紹介します。
ライター:Ritsuko Kawai
カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。
ただひたすらに、死ぬまで飛び続けるのみ
世の中にあふれる“変なゲーム(珍ゲー)”を紹介する「週末珍ゲー紀行」。第12回は、ムササビ人間になって超高速で滑空するだけのゲーム「Superflight」を紹介します。色彩豊かな岩山と、絶え間ない風切り音がかもし出す癒やし。壁面すれすれを翔け抜ける死と隣り合わせのスリル。その両方が同時に味わえる電子ドラッグのような作品です。
この大空に翼を広げ、飛んでいきたいと願ったことはありませんか。そんなあなたに朗報です。広げた翼をはためかせる暇もなく超高速で崖に激突して死んでしまうので、悲しみのない自由な空へとはいきませんが、進行方向ただ一点に収束していく世界の中で、文字通り風と一体化できます。求められるのは姿勢制御のみ。ただひたすらに、死ぬまで飛び続けてください。
ゲームを始めると、何の説明もなくいきなり空中に放り出されます。恐らく大半の人は操作方法も分からないまま数秒後に死にます。説明なんていらないほどシンプルなゲームなので、安心して死んでください。操作方法は、コントローラーなら左スティック、キーボードならWASDキーで身体を傾けるだけ。急降下で加速したり、急上昇で減速したりはできますが、止まってもいいのは死んだ時だけです。
カジュアルゲームとは思えない中毒性
単にリラックス目的でプレイするのもいいですが、本当の醍醐味(だいごみ)はスコアアタック。障害物の近くを滑空するとスコアが発生し、クラッシュ寸前の極限状態を維持し続けるほどポイントが加算されていく仕組みです。また、トンネル状になった空間を無事にくぐり抜けることができれば、さらにポイントが入ります。要するに、危なっかしい飛び方をすればするほど高得点につながるというわけ。
各マップはランダム生成によって構築されているので、プレイするたびに色彩や構造が異なります。前方もしくは下方に一定距離を滑空すると、新たに生成されたマップへ自動的に転送されるので、後はその繰り返し。また、マップ上には紫色のポータルが点在しており、くぐり抜けることでも別の空間に移動できます。ポータルをくぐればボーナススコアゲット。大抵の場合、ポータルは崖と崖の間や、激突必至の壁に発生するので、ランキングの高みを目指すならひたすらポータルを追い求めることになるでしょう。
定価はたったの310円。ゲーム容量はわずか32.4MB。特筆すべきは、そんな驚くほど安価で軽いカジュアルゲームとは思えないほどの中毒性を秘めている点です。ハイスコアが誘うスリルに魅せられたら最後。粉みじんになってすべてを失う恐怖と、果てしなく限界まで風圧という死神の吐息に触れていたい欲望のはざまで、時の流れを忘れること間違いなし。いつしかあなたの見る風景は、新記録の光が差し込むたった一点に収束していくでしょう。
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