教師×作家×家事の“三足のわらじ” ネット小説大賞受賞作家はなぜ兼業の道を選んだのか(2/2 ページ)

» 2018年02月04日 18時00分 公開
[Kikkaねとらぼ]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

印税はがっぽりもらえる?

――すごくいやらしい質問なのですが、作家さんといえば印税はがっぽりもらえるイメージがあります。実際のところはどうなんでしょうか。

文野まず「印税」という言葉の夢を捨てていただきたいのですが(笑)。私の場合、発行部数が千冊単位で重版もあんまりないので本当に大したことないですよ。主婦のパートタイマーの方が稼いでいるのではないでしょうか。契約にもよりますが、基本的に「すごい印税だ!」となるのは数万冊単位の重版がかかってからだと思います。

――そういえば、公務員は副業が禁止されていると聞いたことがあります。

文野私の場合、もともとネット上で無料で読めていたものが、たまたま賞をもらっただけだったので、当初はそれが副収入になるという意識がありませんでした。また歌人の俵万智さんも元は高校の教員でしたし、吉村萬壱さんのように教員を続けながら芥川賞を受賞した作家もいたことから、公務員の副業は制限されるものの、“禁止”とまでは思っていませんでした。あくまでも本業をおろそかにしなければ大丈夫なのかなと。しかし黙っているのも良くないと思い、上司に報告したところ、教育委員会への説明を経て正式に兼業することの認可をもらいました(※)。

(※)編集部注:教育委員会に取材したところ、該当教員から学校長に申し出があった場合、学校長から教育委員会に「認可を出して差し支えがないか」の問い合わせをすることとなっており、「差し支えなし」と判断された場合には学校長の最終判断により該当教員に対して副業の認可が下りるとのこと。

――職場や家族は協力的ですか。

文野普段の仕事(教職)は熱心にする方なので、同僚からは割と理解されています。家人はあんまり関心がありませんが、それでいいと思っています。

――教員の経験がいきている作品もあるのでしょうか。

文野小学校教師を主人公にした『あの日茜色の君に恋をした。』(2018年2月21日発売)は学校を舞台にした作品なので、これまでの経験がとても役に立ちましたね。

――文野さんの場合、ネットで発表していた作品が書籍化になるというものが多いと思うのですが、はじめて作品の出版が決まったときはどんな気持ちでしたか。

文野本になるということは、「手に取れる重さが感じられる」ということなので、そこが一番うれしかったです。私の作品のイメージでイラストレーターさんが表紙やイラストを描いてくださり、プロのデザイナーさんが装丁をしてくださって、ロゴができて――と夢のようでした。

――ご自身の作品で思い入れのあるものはどれでしょうか。

文野しいて選ぶとすれば『ノヴァゼムーリャの領主』です。身分差、年の差、隠された姫君、軍人、戦争、別離、再会、王宮の陰謀など、自分の好きな要素を全て盛り込んだ作品で、第4回ネット小説大賞(旧:なろうコン)の大賞を受賞したと知ったときには通勤バスの中で変な声が出てしまうぐらいうれしかったです(※)。

(※)第4回ネット小説大賞では7612作中46作品が賞を受賞している。『ノヴァゼムーリャの領主』はその中の大賞受賞作。


文野さと ぷんにゃご 灰色のマリエ ノヴァゼム―リャの領主 『ノヴァゼムーリャの領主』

――『ノヴァゼムーリャの領主』は2016年にポニーキャニオンの書籍レーベル「ぽにきゃんBOOKS」から書籍化もされましたね。受賞から出版化まではどのような流れだったのでしょうか。

文野書籍化が決まってからは、まず編集担当者から助言を受けた部分について時間を掛けて修正していきました。そしてその修正を元にエピソードの順番を変えたり、さらに細かい修正を加えたりということを繰り返して初稿、2稿、最終稿と仕上げていきました。

――出版社の編集担当者からはどんな要望が多いのでしょうか。

文野レーベルのイメージを大きく逸脱する内容は基本的にNGなので、どの出版社からもそのレーベルに沿った内容(雰囲気)にしてほしいと言われます。このほかにもライトノベルの場合は、あまり難しい言葉や古い言い回しは避けてほしい。文芸作品の場合には“中二的描写”はよくない。といった要望もありますね。『ノヴァゼムーリャの領主』に関しては、編集担当者から細かい指定が少なかったので、自由にやらせていただきました。

――文野さんの方から「こうしたい」という要望したところはありますか。

文野表紙の絵をイラストレーターのヘビチヨさんにお願いしたいと言いました。ラノベ風の絵柄にはしたくなかったので、繊細な描写力と確かなデッサン力で以前から大好きだったヘビチヨさんに描いていただけてうれしかったです。

――最後に今後の展望について聞かせてください。

文野取りあえず今取り組んでいる作品を出版することが直近の目標です。また長編の『ノヴァゼムーリャの領主』は現在発売中の1巻だけでは伏線をほとんど回収できていないので、完結まで刊行したいですね。ぜひ応援していただければと思います。


 取材と時期を同じくしてアルファポリスで連載していた人気作『閣下、この恋はお仕事ですか?(旧題:閣下、この婚約はお仕事です!)』が2月1日にの出版が決まり、現在発売中の文野さん。自身の描く世界を楽しんでくれるファンの声を支えに、兼業作家としての多忙な日々に確かなやりがいを感じているようです。


(Kikka)


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/18/news145.jpg “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  5. /nl/articles/2412/17/news197.jpg 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  6. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  7. /nl/articles/2412/18/news059.jpg 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  10. /nl/articles/2412/18/news056.jpg 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」