「分裂」する現代クイズ番組と、『高校生クイズ』35年目への挑戦 〜『国民クイズ2.01』としての現代クイズ概論〜(3/9 ページ)
クイズの持つ楽しさの3要素については先に述べたが、これに代わる面白さの枠組みを持ったクイズ番組が発明されるのである。いや、むしろそれらはクイズ番組を規定する楽しさの3要素を持たないのだから、既存のクイズ番組とは全く別物と呼んでも良いかもしれない。
そもそもクイズというものはルールが決められた上で競い合うという形式を取り、この点では元から競技的、スポーツ的である。しかしながらそれをゲーム的に受容され楽しめるものにしてきたのは「楽しさの3要素」であり、逆にいえばそれらが失われたとき、クイズ番組にはむき出しのスポーティさが残る。
このスポーティなスタイルは1980年代の後半に生まれたとされる。『アメリカ横断ウルトラクイズ』を受けて多く作られた大学のクイズ研究会が、番組研究を深めることによりクイズのノウハウが蓄積され、クイズ王乱立時代へと突入したのだ。
もちろんそれまでにもクイズ研究会というものはあったし、クイズ王がテレビ番組に出ることも少なからずあった。しかし、クイズ王たちがこぞって競い合ったり、研究が加熱して視聴者参加型番組を席巻したり、というほどの「数」がそろったのがこの時代、といえよう。
(余談だが、このような「時間のある大学生」がクイズの流れを変えるということは現代でも起こっている。詳しくは以下のコラムを)
前述の『国民クイズ2.0』や僕のコラムでも触れている通り、クイズ番組の問題には過去問を参照しアレンジする形で作られているものが少なくない。つまり、テレビでの既出問題を回収することはテレビでの活躍につながる。
このようなデータベースの存在がプレイヤーの練度を上げることによって競技性を加速させ、同時に「大きな物語」たる「教養」がクイズの裏付けではない状態を強めた、と徳久は主張する。
こうして、『ウルトラクイズ』でのクイズ王勢(長戸勇人、能勢一幸、田中健一ら)の活躍、『史上最強のクイズ王決定戦』での西村顕治による伝説的早押しの数々、『FNS1億2,000万人のクイズ王決定戦!!』における布川尚之、永田喜彰らのキャラクターへのフォーカスなど、ガチンコ化した番組とそこで活躍するクイズアスリートへの注目、という形で「スポーツ型」の時代が訪れた。
しかし、テレビ画面の中でこの時代が続いたのも、1995年まで。そこからは前述した「冬の時代」の波に飲まれ、クイズ王番組もまた消えていく。
人気を集めたクイズ王番組はゴールデンタイムへと進出していくのだが、そこに待ち受けていた「お茶の間」に適したバックボーンは、クイズ王番組には不足していたのだ。
そして、ゼロ年代後半、クイズ王ブームは復活する。
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