「あなたが落としたのは冬コミの原稿ですか?」―― コミケと童話が融合した『コミケ童話全集』が待機列で読みたい完成度
第1話「女神の漫画」を紹介します。
今年も始まった冬のコミックマーケット(C93)。そんなコミケにまつわる物語を、『鶴の恩返し』や『桃太郎』といった童話をベースにしたストーリーで描きあげた漫画があります。おのでらさん(@onoderasan001)が11月に発売した漫画『コミケ童話全集』から、「女神の漫画」をご紹介。
「女神の漫画」は、イソップ寓話の一つである『金の斧』をベースとした物語。主人公は、冬コミの原稿を落としてしまった青年。そんな青年のもとにある日、ロン毛のおっさんが調査会社の力を使って訪れてきます。自らを「女神」(Twitterのハンドルネーム)と名乗るストーカーのおっさん(通称「神おっさん」)は、青年の新刊を楽しみにしていたようで、「なんで落としちゃったんですか?」と詰め寄ってきます。
HDDの破損によりデータが消し飛んでしまったという青年。正直に答えた青年に対して、神おっさんはバックアップデータの入ったUSBメモリを手渡します。「なんでそんなの持ってるの!?」と読者の声を代弁する青年に、「遠隔からデータを抜き出すソフトがあります」と神おっさん。完全にアウトじゃないか……。
USBメモリの中にはデータが残っていましたが、原稿は白い部分が目立っている状態。「出したかったなあ……」と肩を落とす青年に、神おっさんは語りかけます。「質問です! どちらがあれば本が出せたと思いますか!」「料金そのままで締め切りをプラス3日してくれる印刷会社」「背景・効果・修正を秒でしてくれるプロ並アシスタント!」。あれ、この流れって。
喉から斧がでるほどの究極の2択を迫られた青年ですが、わずかに思案した後、出した答えは「自制心」でした。正直に答えた青年に、「両方あげましょう」と神おっさん。早速、コネがあるという印刷所に電話をかけ、怒鳴り散らす先方を無視して納品の期限を3日先まで伸ばすと、今度は、自らが神アシスタントとして原稿を手伝うことに。おっさん! 神おっさん!(号泣)。
コミケ当日。なんとか印刷に間に合い、スペースに新刊を並べることができた青年。するとそこへ、グラサンにマスクのどこかで見たおっさんが新刊を求めて現れます。「女神さんですよね?」という青年からの質問を全否定し、無理やり500円を押し付けて新刊を手に入れるおっさん。「あの! 本当にありがとうございました!」という青年からの感謝の言葉を背に受けた神おっさんは、「あっ データのバックアップはちゃんと取れよ ほんと!」と言い残して去って行くのでした。ありがとう、神おっさん……!
おのでらさんは、31日のコミケ3日目に「おのでら総本舗」(東リ16b)で参加予定。今回は、コミケ童話の裏側を描いた28ページの『コミケ童話の裏話』を頒布するとのこと。また、セルシス・ワコムのスペース(東3)では、ワコムの液晶ペンタブレットを使ってイラストを描く“神”コラボ動画も放送されているようです。
初めまして! コミケ童話を執筆しているおのでらさんです。今年も冬コミがはじまりましたね! 本作はコミケを題材にしていることもあり、参加前の予習として、また列待機中のお供として読むといい具合に楽しめると思います。またコミケ参加後改めて読むと、実際に見た風景やシーンが思い出されて少し違った楽しさを感じられると思います。これからも色々描いていきますので、ぜひよろしくお願いします!
画像提供:おのでらさん(@onoderasan001)さん
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