「e5489」「仮乗降場」「側面よし」――奥深すぎる“テツ語”満載『テツ語辞典』はいかにして作られたか テツな著者2人に聞いた(2/2 ページ)

» 2018年02月05日 20時00分 公開
[高橋ホイコねとらぼ]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「ドレミファインバーター」……アレは、実は??

 解説文を担当した栗原景さんは、旅と鉄道、韓国を主なテーマに、多くの雑誌や書籍、Webメディアで活躍しています。主な著書に『東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!』(東洋経済新報社)、『最後の国鉄電車ガイドブック』(誠文堂新光社/共著)があります。「テツ語辞典」では、「要所で登場する、ニヤッと笑える解説」が読みどころです。

―― 900語もどうやって選んだのですか?

 池田さんとそれぞれ候補を自由に出し合って、すりあわせました。かなり重複するだろうと思ったのですが、池田さんと僕では、同じ鉄道ファンでも興味の対象が大きく異なっていたので、意外なほど重複しませんでした。

 例えば僕は、列車に乗って旅を楽しむ「乗り鉄」なので、きっぷのルールや路線、昭和50年(1975年)以降の国鉄用語が多く、歴史や模型好きの池田さんは、鉄道史上の人物や海外の機関車についての用語が多かったですね。少なくとも1200個はピックアップしたと思います。

 用語の選択には悩みました。また、本当に全ての用語を掲載するならば、それこそ広辞苑のように、それこそ数万語を網羅しなくてはなりません。この本は、調べるための辞典ではなく「読んで楽しんでもらう辞典型の読み物」です。鉄道の言葉を網羅するのではなく、「僕と池田さんが紹介したい、面白い用語を載せる」という方針にしました。

 ですので、知識のあるレールファンの方からすると、「あの言葉がない!」「どうしてこの言葉が選ばれたの?」という意見はあるかもしれません。しかし、「これを取り上げるとは面白い」などの新しい発見もあるはずです。池田さんと僕流の「用語セレクトのツボ」を含めて楽しんでもらえればと思います。

コラムページ 変わった駅弁を紹介するコーナーも

―― 執筆にはどれくらい時間がかかりましたか?

 用語選定を2017年3月ごろにはじめて、7月から11月末ごろまで執筆していたので……およそ9カ月かかりました。その後も、校了ギリギリまで差し替えや追加作業をしましたね。

―― 残念ながらボツにした用語には、どんなものが?

 実はあまり記憶に残っていなかったり、後から復活した用語が多かったりするのですが……例えば「赤と黄」。池田さん提案の用語です。

 昭和40年代後半、どこからか「国鉄は赤と黄色に悩まされ」という川柳が一部で流行しました。赤は「赤字」で、黄は「当時の垂れ流しトイレ」のこと。いささか不快な話題だったことと、僕自身が全く知らなかったのでカットしました。このほか、「島式便所」もカットしましたね。トイレ関係はこの他にもいくつか削ったと思います(笑)。

 あとは、「えきねっと/エクスプレス予約」は単なるサービス紹介にしかならなかったのでカットしました。その一方で、JR西日本の「e5489」は残しました。このサービス前身である電話予約サービス(5489サービス)のオペレーターさんは「すごい熟練者揃い」でして、指定券確保の裏技だったことに触れたかったためです。

 そのほかには……「界磁添加励磁制御」「チョッパ制御」のようなちょっと難しい技術解説や、「五能線」「勝田線」といった路線名など、普通の解説になってしまったものは、もったいないのですがボツにしました。

―― では、気に入っている用語は?

 京浜急行電鉄新1000形・2100形の「ドレミファインバーター」です。

 発車時にインバーターが音階を奏でるのはレールファンに限らずよく知られています。しかし僕は常々「あれはドレミファじゃなくて、ファソラシインバーターだ」と思っていたのですよ。実際の音階のことを書けて、本当にすっきりしました(笑)。また、「E電」「仮乗降場」「日本特急旅行ゲーム」「側面よし」など、自分の記憶を解説に盛り込めた項目も気に入っています。どんな内容かは、ぜひ本書でお楽しみください!

 国鉄再建法によるローカル線廃止第1号となった「白糠線」の項目もお気に入りです。運行最終日の10両編成の「さよなら列車」には、当時小学生だった僕も乗車していました。池田さんが描いてくれたイラストを見て、自分もそこにいたんだなぁと感慨深くなりましたね。

白糠線のイラスト 「さよなら列車」この乗客の中には当時小学生の栗原さんもいたのです

―― この企画の依頼を受けた時にどう感じましたか?

 最初は、果てしない、終わりのない仕事になると思いました。とても1冊では語り尽くせそうもなく、自分の知識だけでは大変だぞと。しかし、網羅ではなく「面白いことをやりたいようにやる」と方針を決め、また、池田さんのほのぼのなサンプルイラストを見てからスッと気持ちが楽になりました。

―― 今回のタッグで、栗原さんから見た池田さんのすごかったところを教えてください

 どんな素材でも、優しいタッチで、しかも詳しくない人にも分かるように絵にされること。そしてなんといっても、ほのぼのタッチなのに、機関車などの描写が極めて正確であることに驚きました。

 あと、明らかなオヤジギャグでも、おしゃれにまとめてしまうのもさすがです。

―― あえて付けるならば、栗原さんは「**鉄」と自称していますか?

 自称はしていませんが、分類するなら「乗り鉄」ということになります。小学3年生の時に1人で山手線を1周したのを皮切りに、少年時代は国鉄全線完乗を目指して各地を乗り歩きました。中学卒業時に国鉄がJRに変わりましたが、その瞬間を函館駅の青函連絡船乗り場で見届けるなど、国鉄時代の末期を自分の目で見られた経験は本書にも生かされていると思います。

―― その「乗り鉄」の方に、「これからも続けていく/楽しんでいく」ためのひとことアドバイスをください!

 「楽しみ方は人それぞれ」ですから、自由に鉄道の旅を楽しんでいただければと思います。

 鉄道が好きで乗っていると、あの車窓を見なくちゃ、有名な駅弁買わなくちゃとついつい忙しくなるのですが、「また来よう」とのんびり構えると、より長く楽しめるような気がします。

「き」の解説 テツ語辞典では、映画「君の名は。」も、鉄道ファン視点で解説されていて面白いです

高橋ホイコ

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた