「今は、別府行くより、草津行こうぜ。」 別府温泉サイトにライバル支援する広告 掲載の意図は?
ネットでは別府温泉の姿勢に賛同する声が。
別府温泉(大分県別府市)の観光情報サイトにデカデカと掲出された「今は、別府行くより、草津行こうぜ。」という広告画像が、ネットで「粋だ」「よくやった」と感心や賛同の声を集めている。
別府市と西日本新聞が企画制作し、2月16日から掲出しているもの。西日本新聞・九州エリア版の16日朝刊(約66万部)にも掲載された。広告には他にも「元気があってこそライバル。」「草津へエール GO!草津」「#草津へ行こう!」と激励の言葉が書かれている。温泉観光地としてライバルである草津温泉(群馬県草津町)への観光を、別府市が自ら支援。一見すると不可解な行為だが……。
実はこれ、噴火の風評被害に困っている草津温泉に足を運んでもらおうと意図した意見広告。
草津町では1月末に草津本白根山が3000年以来に噴火し、気象庁による噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き上げられたままになっている。一方で草津温泉街は本白根山から5キロ以上離れ、まったく危険が及ばない位置にあるのだが、風評被害により宿泊予約のキャンセルなど観光面で打撃を受けているのだという。
そうした経緯を踏まえた上での、「今は、別府行くより、草津行こうぜ。」「元気があってこそライバル。」といった別府温泉からのエール。Twitterでは意図に気付いた人から「感動した」「いい心遣い」「草津が安全だということをもっと広めたい」など共感する声があがっている。
「もともと草津温泉に恩義があったので、微力ながらお力添えしたいと思った」と、企画の経緯について別府市観光課の担当者は話す。
別府温泉は2016年4月に発生した熊本地震の影響で、翌5月には観光客が前年比33%減となるなど大きな風評被害を受けた。しかし国や市から「九州ふっこう割」など支援策を受けたことで、年末年始は前年比1%減になるまで客足が回復。支援への感謝の意を込めて、2017年4月から「別府温泉の恩返し」と称し、47都道府県に別府温泉の湯をトラックで運んで入浴してもらう企画を実施している。
そこで群馬県に湯を運ぶ際に、草津温泉に「からっぽになったトラックに草津温泉の湯をくみ上げて持ち帰り、別府市民に無料で入浴してもらう企画をしたい」と打診したところ快諾してもらった。企画は2017年11月6日に「別府温泉の恩返し【番外編の湯】」として実現。別府にいながらして草津の湯に入れることに、市民も「貴重な体験」と喜んだという。
「今回の広告は、そうした草津温泉の粋な対応ありきのものです。何かしら感謝の気持ちを形にしたいと思っていた中、風評被害に困っているという報道を受けて、何かしら形にしたいと考えました。話題になることで風評被害が無くなって、草津温泉が元気になってくれたらうれしいです」(別府市観光課)
(黒木貴啓)
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