ミステリ好きが早口で語る! ドラマ「アンナチュラル」の面白さ(5〜7話)(1/3 ページ)

ここからがクライマックス。

» 2018年03月02日 12時00分 公開

 「2018年を代表する傑作」との呼び声も高い金曜ドラマ「アンナチュラル」(TBS)。前編に引き続き、ミステリ好きの赤いシャムネコさんにその魅力を語ってもらいました。後編は第5話〜第7話のレビューです。



5話「死の報復」

 話数としても、内容としても、シリーズの大きな折り返しポイントです。

 5話では、溺死した恋人が「自殺」か「事故」か、それとも「他殺」か――を突き止めてほしいという依頼がUDIに飛びこみます。ところが実は家族への許可を得ておらず、依頼主の青年が遺体を盗んできたということが判明。青年の恋人に対する真っすぐすぎる思いと、「どうしても謎を解きたい」という強い意志が浮かび上がってきます。

 それが、4話のラストから5話冒頭にかけて明かされる中堂さんの過去に重なります。中堂さんも青年と同様、恋人を亡くしていて、死の真相をいまだに探っている。そんな中堂さんが「今解き明かされなかったら、死の真実は永遠に分からなくなってしまう」というシリーズを通した重要なキーワードを口にします。

 冷静に見てみると、5話の中堂さんはやや過剰なくらい協力的です。でも視聴者は中堂さんの過去を知ってしまったから、「青年と自分と重ね合わせて、救ってあげたいと思っているんだ」と納得させられて、彼の暴走気味なところも受け止めてしまう。しかも中盤、UDIの面々が中堂さんの部屋を訪れ、みんなで調べものをするような「仲間感」を出したシーンがあるので、中堂さんに視聴者は感情移入するんですね。

 ただ、そんな巧妙なストーリー展開で覆い隠されていたのは、「中堂さんはなんのために自分の恋人の死を捜査しているのか」。ミコトはこれまで「人の死の謎を解く=生きる人のため」という行動理念で動いていましたから、視聴者は「中堂さんもきっとそうなのだろう」といつの間にか思い込んでいる。だからこそ、ラストの中堂さんの行動に衝撃を受けるんです。



 5話のラスト、雪の中で人々がたたずむシーンは、シリーズきっての美しいカットでした。みなが傘を差している中で、中堂さんと“犯人”だけが傘を差さずに雪を浴びている。それはつまり、彼らはミコトたちとは違うものを見ている――というのを、言葉で説明せずに描いているというわけです。

 ちなみに小道具的に入れられている「死後画像診断(AI)」は、海堂尊先生が「バチスタ」シリーズを通して描き続けているテーマです。脚本の野木さんのTwitterによると、「死後画像診断メインの回を作りたかったけど入らなかったので、5話に入れた」とのこと。それだけでメインを張れるようなネタを、さらっと効果的な小道具として扱うところに、脚本家の力量を感じました。

 そしてどうしても触れておきたい、米津玄師さんによる主題歌「Lemon」。毎度毎度「事件が決着した」計算されつくしたタイミングで流れますが、5話で初めて歌詞が中堂さんの心情に重なってくる。「これは中堂さんのキャラソンだったのか……」と震える名曲です。

編集担当からのどうしても言いたいひとこと

 「大事な人の復讐」×「金魚」というキーワードを見ると、どうしても思い出してしまうのは「ケイゾク」の真山刑事。何もない部屋にポツンと置いてある水槽で金魚を飼っている真山刑事は、いろんな人の萌えど真ん中を撃ち抜きました。中堂さんの部屋も“何もない系”でしたが、それでも最低限の生活をしている感じがあってよかった。真山も「Lemon」をキャラソンにできる男だと思います。


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