地雷を探して15年 マインスイーパ日本最速プレイヤーが挑む“思考のスピードを超越した戦い”(4/4 ページ)

» 2018年03月03日 11時00分 公開
[マッハ・キショ松ねとらぼ]
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上達のコツは「目標を立てる」「プレイする」「改善点を探す」

―― マインスイーパTAで上達するコツは何でしょうか?

 とにかくプレイすること。これに尽きると思います。

 マインスイーパの実力は、盤面を見て爆弾の位置を見極める「反応速度」が7割、「マウス操作」が2割、クリック数を減らすなどの「テクニック」が1割だと思っています。このうち、反応速度、マウス操作は、実際にプレイしないと身につきません。反対に言うと、プレイするだけで必要な能力の9割が鍛えられることになります。

 上級なら1日に3回以上、年間で1000回以上クリアするペースで練習すれば、個人差はありますが1年で10秒くらいタイムが縮まる可能性もあると思います。毎日コツコツ続けることが大切なので、プレイするならやりたいとき、調子のいい時に。マインスイーパは仕事ではなく趣味ですし、無理をしても良い記録は出ないはずです。

 ちゃんと目標を立てることも大切です。最終目標を決めれば、指標から「この数値がこれくらい良くなれば、タイムが届くようになるはず」と逆算できます。「1カ月間でこの指標をここまで上げる」「今日は何秒以下でクリアする」といった具合に、できるだけ細かい目標を作っておくと、モチベーション維持などに役立ちます。漠然とプレイしていると、単調になってしまいますから。

 それから、ダラダラ続けているだけだと成長できないので、自分のプレイ動画を見たり指標を確認したりして、改善点を見つけようにしたいですね。悪いところをつぶして、無駄な動作を省くだけでも上級で40秒切れるようになると思いますよ。ちなみに、録画も指標閲覧も「Arbiter」の機能で対応できます。

―― 「目標を立てる」「プレイする」「振り返って、改善点を探す」というのは、仕事でいうところの「PDCAサイクル」に近いものがありますね。

 あと、他人のプレイを見るのも勉強になりますが、いくつか注意点があります。うますぎる相手だと参考にならないので、「自分より少しだけうまい人」を選ぶことが大切です。上級なら、10秒いかないくらいの差でしょうか。また、その人のやり方を丸ごとマネるのではなく、自分にもできそうな範囲に絞るべきです。

 そもそも「他人のやっていることをかみ砕いて理解して、自分のものにしていく」というのは大変なことです。プレイスタイルの転換期で新しいやり方を学びたいならともかく、基本的には自分の悪いところを修正する方が効率的だと思います。

「自分の好きなものを、胸を張って得意だと言いたい」

―― 最後に、どうしてここまでマインスイーパを続けてきたのか、お伺いできますか?

 いろいろなことに通じることですが、「実力=センス×練習効率×練習時間」だと考えています。ただ私はあまりセンスがある方ではなく、もし全人類が同じやり方、同じ時間でTAを練習したら、平均よりちょい上くらいの実力になるんじゃないかと。

 この手の話になるとセンスに目が行ってしまうものですが、そもそもマインスイーパはセンスの比重が小さくて、老若男女を問わず誰でも、頑張ったら頑張った分だけ返ってくる世界だと思っていて。私が日本一になれたのは、練習時間が多かったからだと思います。強いて言えば、私には「やり続ける」という才能があったというか。

 マインスイーパTAという小さな世界ではありますが、「好きなことで日本一になってみたい」という夢がかなって、その歴史に自分の名前が残せたことは良かったですね。

 しかし、今でも「自分はうまくない」と思ってしまうところがあります。客観的に見てタイムが短いというのは分かっていますが、主観的なところで「まだ理想とするプレイができていない」という感覚があるんです。うまくなりたいというよりは下手でいたくない、自分の好きなものを得意だと言いたい。そういう気持ちで続けてきましたが、まだ胸を張るのは難しいですね。


 「マインスイーパ=暇つぶしにやるゲーム」と捉える向きがある一方、Win版だけでは満足できない人も多く、同作には多種多様なアレンジ版が存在します。

 例えば、パズルとしての難易度を追及したものとしては、68×48のマスに地雷777個という「マニア級」を搭載した「マインスイーパ2000」が。一時期、ニコニコ生放送でプレイ配信が行われていたほか、2016年には「約10年かけてようやくクリアした」というプレイヤーが話題になりました(関連記事)。きっとTAの世界にも、そんな“普通にクリアするだけでは飽き足りない”人々が集まっているでしょう。


マインスイーパ2000」マニア級の盤面。よわぽんさんによれば、開発者は日本人で、主なプレイヤーも日本人。また、一部中国人プレイヤーも楽しんでいるそうです

 マインスイーパは本来、オフラインで楽しめるゲームですが、TAの世界ではネット上のコミュニティーから生まれるランキングが重要な役割を果たします。それがなければ、自分のタイムがどれだけ早いのか知ることができず、よわぽんさんも、他人のプレイやそのタイムなどを参考にしながら腕を磨いたといいます。

 国内はもちろんのこと、世界ランキングのような国際的な交流が生まれることも少なくなく、よわぽんさんは2016、2017年と、中国で開催された大会の橋渡し役を務め、複数の日本人プレイヤーとともに参加。言葉の壁がありながらも、マインスイーパという共通項でつながる人々の絆が形成されているようです。


2017年冬に行われた中国大会の結果発表。よわぽんさんは日本人向けの参加募集などを行っていました


2015年にはオーストリア・ウィーンで世界大会。現地まで行ける人はオフラインで、行けない人はオンラインで参加する形式(Facebookページより)

マッハ・キショ松

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