常識を覆す「投げ」の排除、徹底再現されたドラゴンボールの世界観―― 「ドラゴンボール ファイターズ」はいかにして最高の格闘ゲームになったのか(1/4 ページ)
これは究極のドラゴンボールゲーだ。
対戦格闘ゲーム「ドラゴンボール ファイターズ」が発売されたのは2月1日。同時期に発売された「モンスターハンター:ワールド」という絶対王者の陰に隠れてはいるが、ネット上のレビューでは絶賛されているゲームだ。筆者もこのゲームにハマった人間の1人だが、これまで大量の格闘ゲームをプレイしてきた自分でも、このゲームには明らかに過去に味わったことがない感動があった。
このゲームはただの良作ではない。通常の格闘ゲームにはない“ドラゴンボールっぽさ”のある駆け引き、「2.5D」と銘打たれたアニメのようなグラフィック、見ているだけでワクワクするeスポーツ界の盛り上がり、対戦なしでも楽しめるゲームバランスなど、オススメできるポイントは山のようにある。筆者の場合は発売日に購入したあと、「Bloodborne」がフリープレイで配信されるまで1カ月以上、他のゲームに一切触れず、「ドラゴンボール ファイターズ」をプレイし続けていたほどだ。
「ドラゴンボール ファイターズ」の何がそんなにスゴイのか――まずは、「ドラゴンボール ファイターズ」がいかにしてドラゴンボールっぽさあふれる格闘ゲームになったのかについて解説したい。
「通常投げ」排除によって生まれる「ドラゴンボールっぽさ」
通常の格闘ゲームには“打撃はガードで防がれる、ガードは投げを防げない、投げは発生の早い打撃やリーチの長い打撃に返り討ちにされる”を軸にした「打撃」「ガード」「投げ」の“3すくみ”があり、「打撃」「ガード」の他に「通常投げ」と呼ばれる全キャラが使用できる投げ技が設定されている。格闘ゲームは、この3すくみによって駆け引きの奥深さを成立させているのだが、「ドラゴンボール ファイターズ」には通常投げが存在しない。そして、「通常投げ」の代わりに“ガード不能の打撃”に近いシステムである「ドラゴンラッシュ」を採用している。
ドラゴンラッシュは、20〜30発の打撃を与えて相手を吹き飛ばすという全キャラ共通で出せる技。一見、通常投げとドラゴンラッシュを置き換えただけにも思えるが用途も若干異なる。「通常投げ」は基本的に「当てやすいがダメージは比較的少ない」といった特徴があるのに対し、ドラゴンラッシュには「発生が非常に遅く当てづらいがダメージは大きい」などの特徴がある。また、3オン3の形式で闘うこのゲームで「相手を強制的に交代させられる」というのも、ドラゴンラッシュの重要なポイントだ。
では、なぜ通常投げという格闘ゲームの超重要システムを排除し、ドラゴンラッシュを採用したのか――理由は簡単だろう。投げを駆け引きの根幹にしてしまうと「ドラゴンボールっぽくなくなるから」だ。ドラゴンボールの世界に投げ技はほとんどない。繰り広げられるのはバチバチの殴り合いである。そんな、ドラゴンボールの世界観を維持し、同時に駆け引きの複雑さを保つためにドラゴンラッシュを投げの代替手段として採用しているのだ。
ドラゴンボールらしさは、投げの排除以外の部分にも見られる。相手を追尾して攻撃する「超ダッシュ」、背後に一瞬で回り込み相手を蹴り飛ばす「バニッシュムーブ」、そして前に出れば出るほどゲージがたまるシステムは、必然的にキャラクター同士のぶつかり合いを生み、ドラゴンボールのようなスピード感のあるバトルになっていく。スピード感のあるバトルは格闘ゲームにおける「待ち」戦術を自然に拒絶し、結果としてまた更にドラゴンボールらしさを生んでいる。つまり、「ドラゴンボール ファイターズ」は「格闘ゲームの駆け引きの面白さ」と「ドラゴンボールらしさ」を維持しながら、相反する部分を自然な形で整合させているのだ。
「ドラゴンボール ファイターズ」は、世界的な人気を誇るドラゴンボールをほぼ完璧に再現したことで、発売直後から各国の格闘ゲームコミュニティーに広まった。今では、スマブラ、ストリートファイター、ギルティギアなど、幾多の格闘ゲームシリーズで活躍する猛者たちが続々と「ドラゴンボール ファイターズ」に参戦し、群雄割拠の状態になっている。――では数多いる格闘ゲーマーの中で、誰が最強なのだろう?
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