「北九州市は修羅の国」ってうわさ、ぶっちゃけどこまで本当ですか? 市の担当者に直接聞いてみた(2/2 ページ)
どうして成人式の衣装がド派手なの? → 担当者「テレビカメラが来るようになってから、ああなった」
―― 北九州市といえば、ド派手な衣装の新成人が登場する成人式も有名。あれを修羅の国のイメージと関連付ける声もありますが。
本人たちも狙っているんじゃないですか。最初は「仲間内ではかま姿で式に出る」くらいの感じだったと思うのですが、テレビで取り上げられるようになってから、カラフルでインパクト抜群な衣装を着用する路線に変わっていったような覚えがあります。
あの衣装は何十万円もかけてオーダーレンタルしているらしく、「一生に一度のイベント。目立たなきゃ!」みたいなところがあるんですよ。テレビカメラだけではなく、毎年アマチュアカメラマンも来ていて、変な言い方ですが「ちょっとした観光資源」みたいになっています。
―― あのような格好をしているのは、どんな若者なんですか?
成人式参加者のうち数%くらいで、かなり少数派です。外の広場で集まって、式典会場内には入りません。でも、中身は普通の子が多いですよ。時折、いざこざがあると大きく取り上げられてしまいますが、基本的にケンカなどのトラブルは起こりません。レンタルした衣装をダメにしてしまったら大変ですしね。
中学対抗のクラスマッチのような側面もあって、この学校はこのカラーと決まっていたり、先輩の衣装を後輩が翌年着たり。代々受け継がれる若者文化になっているようです。彼らはそのために綿密に打ち合わせして、コツコツお金をためて、たった一度のイベントに臨んでいるんですよ。「今の若者はそういうことをやらない」と思われているなかで、あそこまで熱意が持てるのはある意味、すごいことだと思います。
個人的には、老婆心から「どうせ頑張るなら、他にやることがあるんじゃないの?」と思ってしまうところもありますが、ルールの範囲でやっている分には、まあ、いいのかな、と。
「住みたい田舎」第1位に選ばれた修羅の国
―― 修羅の国という呼び名についてどう思っていますか?
元ネタになっている「北斗の拳」(※)は、私も読んだことがあります。戦闘シーン、モヒカン・肩パッド姿の敵のような「危険な世紀末」要素が注目されがちですけど、その一方で、家族愛、師弟愛などの「愛」というテーマが通底している作品だと思います。
でも、修羅の国という呼び名だと、ヤバい方の印象だけ抽出されてしまうので……そりゃあ、どう考えたって良い気はしませんよね。
※ 第2部に登場する、死闘を勝ち抜かなければ生きることさえ許されない過酷な国家という設定。
―― まあ、そうですね。
なかなか修羅の国のイメージが払拭できていないのは、「北九州市といえばこれ!」といえる要素が特になく、自分たちの魅力をうまく発信できていなかったからかもしれません。キャラが立っていないというか。
でも、北九州市には「あまり発展しなかったことで、かえって良いものが残った」みたいなところがあって。実は「田舎暮らしの本」(宝島社)による「『住みたい田舎』ベストランキング 2018年版」で1位を獲得しています。
物価は安いし、食べ物はおいしいし、お酒が好きなら角打ちで安くおいしく飲めるし、インスタ映えする観光地だってあるし。本当は、いいところだと思うんですよ。定着してしまったイメージを克服するのは大変なことですが、修羅の国を乗り越えてやっていきたいですね。
取材中、印象的だったのは「北九州市に異動が決まった人は、2回泣くらしい」という広報担当者の話。
修羅の国というネット上のイメージから「どうして自分があんな治安の悪い場所に……」とつらくて泣くのが1回目。しかし、実際に引っ越すと予想に反して住みやすく、次の異動が決まると、今度は同市を出るのが嫌で泣いてしまう人がいるとか。
作り話かと疑うほどよくできたエピソードですが、筆者が調べた限り、「行く前」「行った後」で大きな印象の違いがあるのは事実のようです。複数のメディアが「『住みたい田舎』ベストランキング」の結果を、「修羅の国がまさかの1位」のようにギャップを強調した切り口で取り上げているのですが、「北九州市は住みやすくて良いところ」「修羅の国? 行ったことないんじゃないの?」などのコメントが現れています。
涙腺の緩さには個人差がありますが、「イメージの北九州市」「実際の北九州市」の差を考えると、本当に2回泣いてしまう人がいても不思議ではないかもしれません。
よくイメージされる北九州市
実際の北九州市
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