コラム
» 2018年03月14日 11時00分 公開

犯罪者の顔写真を使った指名手配ポスターが、肖像権的に問題にならない理由

本人に掲載許可をとっているとは思えませんが……。

[QuizKnock,ねとらぼ]

 街中を歩いていると視界に飛び込んでくる、指名手配犯のポスター。普段は何の気なしに見ていますが、いくら犯罪者とはいえ、顔写真を使用することで肖像権的な問題は発生しないのでしょうか。

そもそも肖像権とは?

 肖像権は法律に明文化された権利ではありません。

自己の容貌,姿態をみだりに写真,絵画,彫刻などにされたり,利用されたりすることのない権利。人格権ないしプライバシーの権利の一種とされる。

(引用元:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

 人格権は憲法13条から導かれる基本的人権の1つで、自分の人格の本質的な部分が守られるという権利です。例えば生命とか自由とかですね。

 さらに、ここには私生活をみだりに公開されないというプライバシー権も含まれており、肖像権はこのプライバシー権の一部として位置付けられます。

犯罪者にも、肖像権はあるはずだけど……?

 当然ではありますが、警察が「犯人さん、あなたの顔写真を指名手配犯として公開していいですか?」と許可をとったうえでポスター制作をしているとは考えられません。そんなことができる状況だったら、きっとポスターを貼り出して情報収集しなくても逮捕できるでしょうから。

 つまり、警察は指名手配犯に無許可で、その人物の写真を公開しているはず。しかし、「それが許されているということは、犯罪者には肖像権がないのか?」というと、そんなことはありません。

 日本国憲法では全ての国民に基本的人権が保障されています。先ほど書いた通り、肖像権は人格権の一部ですから、基本的人権に含まれます。

 では、なぜ指名手配犯の肖像権を侵害することが許されるのでしょうか?

公共の福祉

 そもそも、基本的人権の保障の根拠となる憲法13条では「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされています。

 簡単に言えば、「全ての国民は基本的人権を保障されますよ(ただし、公共の福祉に反していいとは言っていない)」「公共の福祉のためなら、多少人権が制限されてもOK」ということです。

 ここでいう公共の福祉とは、

社会の構成員の権利,自由や利益の相互的衝突を調節し,その共存を可能とする公平の原理。

(引用元:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

 を意味します。

 極端な例になりますが、「殺人を禁止することは自由権の侵害である」としましょう。

 個人の自由な行為の1つが禁止されているわけですから間違いではないかもしれませんが、現在の日本では殺人は禁止されています。なぜかというと、殺人を許容することは公共の福祉に反するから。「多くの命を守るためには、殺人という個人の自由な行為を禁止しても仕方ないよね」と考えているわけです。

 これを今回の話に当てはまると「公共の福祉という観点から、指名手配犯を逮捕するためにはその肖像権が侵害されても仕方ない」ということになります。

逮捕のために“犯罪者トランプ”が作られることも

 海外の事例を取り上げると、米軍はイラク侵攻の際、「イラクのお尋ね者トランプカード」なるものを配布。これはフセイン政権のお尋ね者などを、米兵に覚えさせる目的で作られたものでした。中国でも、指名手配犯の顔写真を使ったトランプを作成して、公安局が住民に無料で配布したという話があります。

 これらの第一目的は、物騒なデザインのトランプで遊んで楽しんでもらうことではありません。ポスター同様、あくまでも犯罪者の逮捕を狙いとし、公共の福祉に基づいて作られているのです。

 ちなみに、日本ではこのようなトランプは作られていませんが、パチンコ店のチラシに指名手配の欄があったり、指名手配犯の写真入りティッシュを配布したりすることがあります。ポスター以外のアイテムも使って、より多くの人にアプローチをかければ、犯人についての情報が得られる可能性が高まりますからね。

参考文献

芦部信喜(2015)「憲法 第六版」


制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2112/06/news163.jpg 「普通に頭おかしい」 朝倉未来、一般人のジム乱入に困惑 週刊誌記者をかたっての不可解な訪問へ「マジ迷惑」
  2. /nl/articles/2112/06/news149.jpg 47都道府県の「県章」を仮面ライダーにアレンジ 各地の特色を宿した空想ヒーローに全国特撮ファン大盛り上がり
  3. /nl/articles/2112/06/news136.jpg ファミチキの“袋”の写真だけを淡々とツイートするアカウント「ファミチキへの怒り」が人気 気持ちは確かに分かる
  4. /nl/articles/2112/07/news122.jpg 「美賀君に会えました」大島優子、川栄李奈との2ショットを披露 大河ドラマ共演にファン「すごくないか?」
  5. /nl/articles/2112/06/news140.jpg どういう展開なんだ フワちゃん、有吉弘行からの贈り物で母が懐柔「宝物にする(ハート)」→「娘さんから僕が守ります!」
  6. /nl/articles/2112/06/news141.jpg 柴咲コウ、ヘアドネーションでロングへアから大胆イメチェン クールなショートカット姿に「美人が引き立ちます」
  7. /nl/articles/2112/06/news053.jpg 「竹とトラって、最高に似合っててカッコイイ」 ヘソ天で爆睡するトラに「思ってたのと違う」とツッコミ殺到
  8. /nl/articles/2112/06/news033.jpg 隣人が執拗に「引っ越せ」と嫌がらせをしてくる理由は? その「真実」を描いた漫画に切ない気持ちになる
  9. /nl/articles/2112/06/news051.jpg お風呂に呼ぶ父に息子が「行けるわけなかろーもん」 猫さまとラブラブな光景に「息子さん正しい」と賛同の声
  10. /nl/articles/2112/07/news028.jpg 柴犬の肉厚ほっぺをもんで、手を離すと……? “冬毛のコブ”ができた姿に「ハムスター?」「形状記憶ほっぺ」の声

先週の総合アクセスTOP10

  1. 東大王・鈴木光、“お別れの笑顔”で司法試験合格を報告「本当にありがとうございました」 SNS閉鎖に涙のエール続々
  2. 高嶋ちさ子、ダウン症の姉とさだまさしのコンサートへ 笑顔あふれる3ショットに「姉妹で素敵」「癒やされました」の声
  3. 「キレッキレ!」「何回見ても笑えるwww」 白柴犬の激しすぎる後ろ足の動きに国内外から大反響
  4. 45キロ減のゆりやんレトリィバァ、劇的変化の“割れたおなか”に驚きの声 「努力の賜物」「昔を思い出せない」
  5. 46歳と18歳の内田有紀、“2人そろって”『STORY』表紙へ 「自分の妹と撮影しているみたい」
  6. ダレノガレ明美、“痩せすぎ”指摘する声に「体絞っていました」 現在は4キロの増量 「ご安心ください」
  7. 渡辺美奈代、公開した自宅リビングが広すぎて“お姫様のお部屋” ゴージャスな部屋へファン「センスまで抜群」
  8. アイドルが「虚偽の発言」「繋がり行為」など複数の違反行為 ファンのため“卒業”を提案するもブロック→解雇へ
  9. 「美男美女の一言」「これぞベストカップル」 高橋英樹&小林亜紀子、“48年前の夫婦ショット”が絵になりすぎる
  10. ゴマキの弟・後藤祐樹、服役中に死去した“母との約束” 「1000万円企画」朝倉未来の計らいで首のタトゥー除去

先月の総合アクセスTOP10

  1. 池田エライザ、 “お腹が出ている”体形を指摘する声へ「気にしていません」 1年前には体重58キロ公表も
  2. 「前歯を取られ歯茎を削られ」 広田レオナ、19歳デビュー作で“整形手術”を強制された恐怖体験
  3. ゴマキの弟・後藤祐樹、朝倉未来とのストリートファイトで45秒負け 左目腫らした姿を自ら公開し「もっと立って闘いたかった」
  4. 清原和博の元妻・亜希、16歳次男のレアショットを公開し反響 「スタイル抜群」「さすがモデルの遺伝子」
  5. 小林麻耶、おいっ子・めいっ子とのハロウィーン3ショットに反響 元気な姿に安堵の声が続々「幸せそうでなにより!」
  6. カエルに普段の50倍のエサをあげた結果…… 100点満点のリアクションに「想像以上で笑った」「癒やされました」
  7. 「左手は…どこ?」「片腕が消えてる」 中川翔子、謎が深まる“心霊疑惑”ショットにファン騒然
  8. 「家ではまともに歩けてない」 広田レオナ、左股関節に原因不明の“炎症” 夫から「凄い老けたと言われてます」
  9. 小林麻耶、髪ばっさりショートボブに「とても軽いです!」 ファンも反応「似合います」「気分も変わりますよね!」
  10. キンタロー。浅田舞の社交ダンス挑戦を受け体格差に驚がく 「手足が長い!!」「神様のイタズラがすぎるぞ!!」