中学時代「僕は頭がおかしい」と考えたことある人手ぇあげて 桜井のりお新作『僕の心のヤバイやつ』(1/2 ページ)
陰キャ男子は陽キャ女子に勝てない。
「中二病」の語が当たり前のように使われる時代になりました。でも中学時代は、そんなネタにできるようなカジュアルなものじゃなかったと思う。もっとめんどくさくて深刻な底なし沼だったよ。生きるか死ぬか殺すかレベルだよ。
週刊少年チャンピオンの『僕の心のヤバイやつ』は、『みつどもえ』の作者・桜井のりおの新連載作品。中二病少年が主人公です。まずはこのページを見てほしい。
この1ページで、リアルにとんがった中二病が描かれます。
14歳の市川京太郎。友達はいない。クラスで1人、殺人大百科を読みながら考える。「僕は頭がおかしい」。明るく笑うクラスメイトを見ては、殺害妄想を頭の中で繰り広げます。
彼の悶々は「本人がカッコよさを追求した中二病」と少し違い、かなり深刻。ヤバイ奴だとイメージし続けないと自分を保てない、脆い方のやつ。彼が目をつけたのは、学校イチ美人で雑誌のモデルもやっている山田杏奈でした。
「リア充爆発しろ」とかの軽さと違うよ。本当に殺したりはできないだろうけど、カッターナイフ握って周囲の人を殺す妄想となると、あんまりしないと思う。かと言って本当に狂っているわけでもなく、自分に酔っているのは間違いない。市川は、心を守るにはそこまでしないといけないくらいのぼっちだ、ということです。このページを笑える人は、おそらく今幸せだと思う。
その一方で山田は、スクールカースト頂点の子です。ただし、ものすごくマイペースで、あちこち抜けていて雑な子。
殺そうとしていたはずの山田、給食後にパーティ用のポテトチップスを鼻歌歌いながらモリモリ食べていた。楽しそうなのがかわいい。
「陰キャ」男子の「陽キャ」女子に話しかけられたい欲求、かなり強いと思います。だから最近ギャルヒロインマンガ増えているんですってば。
このマンガの場合、話しかけられるほどの関係では(まだ)ありません。けれども山田との接触で、市川側が意識してしまうようになります。
このよくわからないポテチの袋の渡し方! 陽キャな女子が適当にとった行動は、陰キャ男子のハートを打つ。それを一生の思い出にしたりするものだよ。
中学時代の悩みは、ささいなものかもしれないけれども、そのときは間違いなくとても大きなもの。市川の感情のアンテナがとても敏感で繊細だからこそ、山田の一挙一動が気になります。共感しようとします。「殺そうとしていた」というのは、実はもともと気になっていた、ってことなんじゃないかなあ。
2話のワンシーン。ずぼらな山田の、まさか涙。その原因をなんとなく知っている唯一の人間、市川。彼女は彼女なりに、ちょっと不器用なところがあります。カースト上位の間でも、人間関係のこじれはあります。
さあ、どうする。泣いているのはお前が殺そうとしていた女の子だぞ。でも女の子の涙にゃ勝てないぞ。
「陽キャと陰キャの青春格差ラブコメディー」というアオリになっている作品ですが、現時点ではラブコメの気配はまだ見えません。市川は大分意識しているので、山田次第なのかな。
視点がネガティブ男子なので作品の空気はしっとりめ。ぼっち経験のある人には「そうそう、中二病って大変だったよなー」「陽キャに話しかけられたらドキドキしたよなー」と共感できるはずなので、是非読んでいただきたい。そうじゃなくても山田かわいいので読んでください。
「僕の心のヤバイやつ」は4話までは週刊少年チャンピオンで掲載、5話以降は無料マンガサイトチャンピオンクロスで連載されます。
なお、底抜けに変態な中学生マンガが読みたい方には『ロロッロ!」もオススメします。
出張掲載:Karte.1「僕は奪われた」
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