可愛げのない嫁とそんな彼女に惚れた男 戦時中のある夫婦の姿を描いた漫画「螢」に「心に響いた」

辛く切なくも温かい物語です。

» 2018年04月09日 20時00分 公開
[宮原れいねとらぼ]

 漫画家のふじた渚佐(@asakotofuji)さんが公開した創作漫画「螢」(ほたる)が、Twitterで「心に響いた」「尊くて泣いた」と話題になっています

 舞台は昭和初期。飛行機乗りを目指す勇(いさお)が、けなげ・従順・しとやか・旦那には逆らわない、そんな女性像が当たり前の時代に、「おれの嫁は違った」と話す女性が、昔からの幼なじみでいいなずけでもある久子(ひさこ)。子どもの頃には、泣き黒子があるというだけで勇のことを「泣虫野郎」と呼び、その性格は結婚してからも変わりません。


螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 『螢』表紙

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 その時代には珍しいタイプの女性だった久子

 勇は海軍に入り、目指していた航空隊に所属。一方で久子は家事はできるが得意ではなく、勇いわく「きっと久子は、不器用だった」とのこと。夫婦の会話では、相変わらずハッキリと物を言い、旦那をニヤニヤといじる久子が見られ、「ほんとうに可愛げのかけらもない女だった」と思う勇。またそれを口に出して言うと、「そんな可愛げのない女に惚れたのはどこのどいつだ」と返されてしまいます。


螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 小さい頃から一緒にいたふたり。いいなずけでもあったためそのまま結婚へ

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 結婚生活でのエピソードでは「可愛げのない」久子の姿が

 そして時は流れ昭和20年初夏、太平洋戦争(大東亜戦争)末期。出撃命令が下ったことを伝える勇に、久子はおめでとうと言ってから「敵艦の核にブチ当たれよ」と、当たる前に撃ち落とされるな「螢になって帰って来い」「螢だぞ、蝿だったら叩き潰してしまうからな」と平気そうな様子で伝えますが、徐々に顔をうつむかせます。するとその姿を見ていた勇は黙ったまま、しゃべり続ける彼女に近づいて目を合わせ、そのまま抱くのでした。


螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 ついにその日がやってきます

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 気丈に振る舞う久子ですが……

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 黙ったまま妻を抱く勇

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 「いいか、螢だからな」と言う久子と約束する勇

 久子に“螢”になることを約束した翌日、<出撃前に読め>と書かれた手紙を戦闘機の中で開く勇。そこには、

最後クラヒ、素直ニナッテ
ヤッテモイゝデセウ
オ慕ヒ申シテオリマス

久子

 という、短くも彼女からこれまで聞いたことのないような言葉が、流れ落ちた涙のあととともにつづられていたのでした。

 また同じく手紙を残していた勇。一人になった静かな家で久子が読むその手紙には、対照的に長い文章が書かれ、最後の最後には、軽々しくてあまり使いたくはないが、最後くらい素直にと、

愛シテイマス。

海軍少尉 斉藤 勇

 と思いを伝える言葉が。「最後の最後まで、不器用だったな。おれたち」という勇のモノローグと、手紙を握りしめて涙を流す久子が描かれ物語は終わりへ。


螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 久子からの手紙を出撃前に開きます

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 するとそこには久子からの素直な言葉が

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 一方で勇も手紙で素直に思いを告げていたのでした

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 なんて不器用な夫婦なんだ……!

 暗くなりだした空の下、「ばーちゃーん」と何度も呼ぶのは幸雄という、泣き黒子のある男の子。光る虫を捕まえたことを報告しにきたようですが、その“おばあちゃん”は「逃がしてやりな。そいつは螢だ。蝿は叩き潰していいが、螢は潰すなよ」と男の子に言うのでした。もう途中から夫婦2人の言葉とセリフ一つ一つに涙が……。


螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 時は経ち、勇に似た泣き黒子のある男の子が登場

螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 最後の“おばあちゃん”の言葉にまた涙……

 同漫画は、ふじた渚佐さんが2015年11月開催の「コミティア」にて頒布したコピー本(同人誌)で描いたもの。今でも気に入っている話なのと、再版できる機会がしばらく作れないため、今回Twitter上での公開に踏み切ったとのことでした。ちなみにあとがきでは、印刷代等の関係で仕方なくページ数を短くしたといった経緯も書かれています。本文13ページとは思えない内容が詰まった展開に、すぐに再読したくなる……!

 コメントでは「静かに涙がでてくる…」「号泣した」とたくさんの感動や称賛の声が寄せられ、その鉛筆でのイラストに趣を感じる声や、細かい部分まで作り込まれた内容に「素晴らしい」「すごく良い作品」といった声が集まっています。


螢 戦時中 特攻 許嫁 不器用 夫婦 漫画 「コミティア」頒布時のあとがきも公開しています

 ふじた渚佐さんは他にもさまざまな漫画やイラストをTwitterやpixivに投稿していて、現在はTwitterでも話題になった『ド直球彼氏×彼女』を月刊ComicREXにて連載中。またコミックス第1巻も発売中です。





画像提供:ふじた渚佐(@asakotofuji)さん



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた