出版社における電子化の課題、1位は「権利処理の手間」 日本電子出版協会がアンケート結果を発表

電子化を反対する著者には「電子書籍では頭に入らない」といった意見も。

» 2018年06月21日 18時05分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 日本電子出版協会は6月21日、電子出版における著作権に関するアンケートの結果を発表しました。「書籍を電子化しない理由は」「書籍の電子化に対する著者の反対意見は」などの質問に対する回答から、書籍の電子化において障害となっているのは何なのか、課題を浮き彫りにする内容となっています。

電子化 出版社 アンケート 2018年 日本電子出版協会「著作権に関するアンケート」より

 アンケートは同協会の著作権委員会が4月から5月に実施したもので、出版社など136人から回答を得ました。刊行している書籍・雑誌のうち電子化している割合については、年間100冊以上刊行している出版社の場合は「半分以上」「ほぼ全て」が7割を超えましたが、年間100冊未満の出版社は「半分以下」「ほぼなし」が8割以上を占める結果に。

電子化 出版社 アンケート 2018年 「書籍・雑誌を電子化しない/できない理由」

 「書籍・雑誌を電子化しない/できない理由」で一番多かった回答は「権利処理の手間」(58件)。具体的には「紙版の契約と同時に電子化の契約がなされず、電子化に際してあらためて手間をかけなければならないことが多い」「ガイドブックの場合、寺社仏閣、遺跡の肖像権処理が難しいケースがある」「著作権者が複数おり、許諾の手間がかかる」といった問題があげられていました。

 電子化しない/できない理由で次に多かったのは「売上やコストの問題」(56件)。「図版等が多い本の場合、電子も含めた権利処理をコストに反映すると原価がUPしてしまう」「特に既刊本に関しては権利処理が必要な上、OCRスキャンによる製作コストがあり、売上が見込めるものでないと電子化は難しい」といった声が返ってきました。電子化した際の売上に、権利処理のコストが見合うかどうかは大きなカギとなっているようです。

 一方で「どちらかというと編集者の電子化についての意識があまり高くない」「電子化=利益/売上という意識が編集の現場レベルで希薄というか認知されていない」といった電子化への意識の低さについても意見もあがっていました。

電子化 出版社 アンケート 2018年 電子化に対する著者の理解は

 また著者の電子化に対する理解の程度については、「ある程度は理解がある著者が多い」「かなり理解がある著者が多い」で8割と高い内容に。しかし一部の著者には電子化に反対意見もあるらしく、中心となっているのは「不正コピーへの心配」「紙の売上への不安」の2つ。他にも「著者がセリフパブリッシングで儲けたいと目論む者がかなりいる」「あまり売れないだろうからやっても意味がない」「電子書籍では頭に入らない」といった意見があるそうです。

 紙の書籍・雑誌を制作する際、どれほど電子化を視野に入れた体制で進めているかについては「ほとんど考慮していない」が年間100冊未満の出版社で41%、100冊以上の出版社では14%と大きな開きが。過去の刊行物の電子化事業は、「ほとんど手を付けていない」が年間100冊未満の出版社で49%、100冊以上の出版社で21%と、出版社の規模が小さいところでは電子化に消極的のようです。

 なおネットの海賊版対策についてもっとも多かった回答は「特に何もしていない」(73件)。年間100冊以上の出版社をメインに「データ(電子書籍の場合)に技術上の措置を施している」「定期的な侵害調査を行っている」といった対策をとっていますが、いずれも30件未満で、海賊版対策への遅れを感じさせる結果となりました。

黒木貴啓


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/28/news195.jpg 岡田紗佳、一連の騒動を生中継で謝罪 頭を深く下げ「申し訳ございませんでした」
  2. /nl/articles/2501/28/news155.jpg がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
  3. /nl/articles/2501/29/news045.jpg 新潟のお葬式で香典返しにもらった“謎の白い物体” パッケージにも情報なし「これなんだかわかりますか?」
  4. /nl/articles/2501/26/news053.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2501/29/news086.jpg 鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
  6. /nl/articles/2501/28/news034.jpg 大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
  7. /nl/articles/2501/29/news058.jpg 「うちの祖父(81)わけてほしいわこのセンス……」 衝撃的な私服コーデに驚きの声「本物のイケジイ」「目標にします!!」
  8. /nl/articles/2501/29/news023.jpg 買ったばかりの家の風呂場に”ありえない欠陥” 信じられない状況に「そんなことある?」「取り付けた業者……」
  9. /nl/articles/2501/27/news073.jpg 「昔はモテた」と自慢げな父→娘は“絶対ウソやん”と思っていたけど…… 当時の姿に「ハハハ冗談だろ?」【海外】
  10. /nl/articles/2501/29/news122.jpg 正方形のスカーフ1枚→切ってゴムを縫い付けるだけで…… 魅力的な完成品に「デザインがきれい」「簡単に作れました」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」