「クソゲーオブザイヤー2017携帯」まさかの「該当作品無し」 ゲーム界“裏の祭り”に何が起きたのか(1/2 ページ)
「クソゲーが出ないことは良い事です」。その言葉は、どこかむなしく感じた。
クソゲーオブザイヤー(以下「KOTY」)。それは、その年に発売されたゲームソフトの中で、一番の「クソゲー」をユーザーたちが決めるゲーム界の“裏の祭り”である。2004年から実に14年もの続くこの祭りに、今、ある“異変”が起きている。携帯ゲーム機版の大賞が、初の「該当作品無し」となったのだ。
一体何が起こったのか。携帯ゲーム機は良作ばかりになったのか。小説「ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム」の筆者で低評価ゲーム愛好家の赤野工作さん(模範的工作員同志/@KgPravda)に話を聞いた。
そもそも「KOTY」とは
赤野工作さんの話の前に、「KOTY」自体について簡単に説明をしておきたい。
この「KOTY」なる不名誉な賞の発祥は、2ちゃんねる(現「5ちゃんねる」)。据え置き機のゲームソフトは家庭用ゲーム板で2004年から、携帯ゲーム機のソフトは携帯ゲームソフト板で2007年から専用スレが立っており、その年一番のクソゲーを決めるべく議論が重ねられている(他にも乙女ゲー、エロゲーなど派生部門あり)。
大賞の選考基準は投票などではなく、「KOTY」に推したいと思ったゲームをプレイした人間がスレに選評を投稿するというユニークなもの。この選評を元に、最も多くのスレ住人を納得させたゲームソフトが大賞となる。最後は一連の流れをまとめた「総評」が投稿され、ノミネート作品とともにその年の低評価ゲームが総括されるという流れだ。
ちなみにこの「KOTY」、始まった当初の2004年〜2006年は「ゼノサーガ エピソードII」「ローグギャラクシー 」「ファンタシースターユニバース」が大賞に選ばれており、いかに面白くないかよりも「知名度や期待度の割に振るわず評価が荒れたゲーム」が選ばれていた。
しかし、2007年に「四八(仮)」というマイナーなゲームが、あまりにも筆舌に尽くしがたい内容だったため大賞を受賞。以降、「知名度や期待度よりも内容自体で大賞を決める」という方向転換をするに至り、その衝撃は四八ショック(ヨンパチショック)という名が付けられた程であった。
以降、「KOTY」はメジャー、マイナーを問わず、実に幅広く大賞を選出するようになった。この方針転換により、大賞はマイナーなゲームが選出されることが増え、「該当なし」となるような事態は今後も起こらないであろう……と思われていた。
「クソゲーが出ないことは良い事です」
「KOTY」携帯2017の結果が決定したのは、2018年6月6日。その総評は、以下の通りだ。
昨年のKOTYは稀に見る難産であった。
選評の届いていた一作を大賞に据える、それだけの事が遠かった。
2011年の終わりと共に闇へ葬り去られたはずの「Wizardry 囚われし亡霊の街」が2016年の訪れと共に蘇ったのだ。
スレ住民達に誤当地と恐れられた「人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ」と最後まで据置版KOTY大賞を争った"あの"亡霊である。
諸々の問題で疲れ切っていた携帯スレ住民は為す術もなく亡霊に蹂躙され、検証は困難を極めた。
更にはトドメを刺しにでも来たのだろうか、SSAからの刺客「太平洋の嵐 〜皇国の興廃ここにあり、1942戦艦大和反攻の號砲〜」が年末の魔物として現れる。
嵐と亡霊に呑まれ、携帯スレが焦土になりつつも2017年10月吉日、約22ヶ月に及ぶ戦いは「亡霊の大賞受賞」という結果で幕を下ろした。
二度と現世へ迷い出ない事を願う。
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そうして2017年、もはや住民にかつての力など残っていない。
それを象徴するかのようにスレが立つのが遅れ、候補に上がるゲームは一本も無く、総評案を篩にかける段になった今もスレはPart1のままである。
我々はクソゲーに敗北したのだろうか?
否、大賞候補となり得るクソゲーが存在しないことは本来喜ばしい事である。
携帯KOTY始まって以来の出来事を祝し、この言葉をもって締めくくりたいと思う。
「クソゲーが出ないことは良い事です」
事情を把握していないければ、文意を理解するのも困難なこの総評。ただこの文章からは、哀愁や無力感、そして諦めといった感情が漂うことだけはお分かりいただけるかと思う。
「クソゲーが出ないことは良い事です」。そうだ、まさにその通りだ。ぐうの音も出ないまっとうな正論である。しかし、なぜだ。なぜこんな悪のり好きなスレッドの5ちゃんねる住人が、正論を述べているのだ。ありえない。こんな正論がまかり通り、総評として選出されるなどありえないことのはずだ。こんなきれいな言葉は、ゲーム雑誌で業界人がろくろを回しながら語るべきである。
また、総評にも書かれている通り、携帯ゲーム板の「KOTY」2017のスレは選評が届かないまま終わってしまったのだ。さらに、もう2018年も折り返しを過ぎているというのに、なんと2018年のスレは“立っていない”。「KOTY」2018携帯のスレは、現在も存在してないのである。
一体どうしてこのような事態に至ったのか。事情に詳しい赤野工作さんに詳しい話を聞いた。
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