「彼の逮捕の事からお話しましょう」 “世紀の大怪盗”はここから始まった 「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」1話:マンガ出張掲載(1/6 ページ)
神出鬼没な怪盗紳士「アルセーヌ・ルパン」。ミステリーファンを中心に世界中で愛されてきたルパン小説を忠実にコミカライズした「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」1話を出張掲載!
神出鬼没、大胆不敵、クールで華麗な大泥棒。これらはいずれも、フランスの小説家モーリス・ルブランが生み出した怪盗紳士「アルセーヌ・ルパン」を形容する言葉だ。
たとえ原作を読んでいなくても、漫画・アニメ好きにとって「ルパン」や「怪盗」は身近で魅力的な存在。最近では、現代のデジタル社会に舞台を移したアニメ「ルパン三世PART5」が話題になり、怪盗をテーマにしたゲーム「ペルソナ5」は全世界で累計出荷数200万本を超える大ヒットになった。
ちなみにペルソナ5・主人公の初期ペルソナの名前は「アルセーヌ」。シルクハットをかぶり背中に大きな羽を広げる、いかにもヒール然とした見た目はさながらダークヒーローだ。ゲーム内にも、「予告状」「逮捕」「脱獄」とルパンを語る上で欠かせないキーワードがちりばめられている。日中は普通の高校生活を送りながら、裏では“悪い大人の心を盗む”怪盗として暗躍する――プレイすればその世界観にあっという間に入り込んでしまうのでぜひ(経験談)。
話は戻り、ルパンをひと言でいってしまえば“泥棒”なのだが、善良な市民を助ける義賊の一面を持っていたり、多くの女性と恋に落ちたりと、どこか憎めない人間的な魅力にあふれている。
しばしば、アーサー・コナン・ドイルが生み出した名探偵「シャーロック・ホームズ」と対比されることもあるが、ルパンは決断に迷うことも多く、ミステリアスなイメージどは裏腹にほどよい“ダメ男っぷり”が垣間見えるのが楽しい。冷静沈着で行動力があるホームズも非常に魅力的な人物だが、やや神経質すぎるきらいもある。助手ワトソンと同居生活をしていたホームズだが、同居相手としては個人的にルパンを推したい所だ。
そんなルパンの物語を原作に忠実にコミカライズしたのが、漫画家・森田崇(@TAK_MORITA)さんによる「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」だ。
森田さんはこれまで同作を講談社やヒーローズなどの出版社で連載してきたが、今は「著者再編集版」として電子書籍をKindleで販売している(参考記事)。
各話の最後にあるコラムや各巻の最後にある作品解説が、物語の理解を助ける重要な役割を果たしている。舞台は19世紀後半から20世紀前半のフランス。現代の日本人が読む上でも当時の雰囲気をイメージしやすいよう作品内でも時代背景を手厚く解説しているのが特徴だ。
例えば、1巻の巻末ではルパンが生きた時代についての森田さんの解説がある。
ガス灯の照らすロンドンの街を辻馬車で移動したホームズに対し、ルパンは鉄骨で作られたエッフェル塔の立つパリを中心に、自動車、オートバイを積極的に愛用しました。原作者のルブラン自身、稀代の「新しいもの好き」でありまして、当時の最先端科学技術をその時のルパン譚に必ずと言っていいほど登場させています。
最先テクノロジーといえば、現在放映中のアニメ・ルパン三世PART5だ。SNSを使うわ、ハッキングするわ、仮想通貨を盗むわ、ダークウェブは登場するわで、原作同様テクノロジーの観点から同時代の空気を反映している。
怪盗ルパン伝 アバンチュリエの1話「アルセーヌ・ルパンの逮捕」では、無線電信や豪華客船プロヴァンス号などが登場するが、どれも当時としては最新鋭のもので森田さんも「(プロヴァンス号については)作品発表時から見ても少し勇み足ですね(笑)。ルブランどんだけ新しいモノ好きなんだ!と嬉しくなってしまいます」と評している。
ミステリーファンはもちろん、冒険・歴史・時代モノとしても楽しめる怪盗ルパン伝 アバンチュリエ。ちなみに、これから紹介する1話「アルセーヌ・ルパンの逮捕」では、ミステリーの定番である「2つのトリック」が使われており、なかなかルパンは出てこない。
一体ルパンはどこに潜んでいるのか? 誰がルパンなのか? 彼が活躍した「ベル・エポック」(フランス語で「良き時代」の意味。パリが繁栄した華やかな時代)を堪能してほしい。
出張掲載:『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』第1話 「アルセーヌ・ルパンの逮捕」
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