「エンジンを使って女の子が楽できるなら」 50年前の“やりすぎな耕運機”が、今プラモデルでよみがえる理由(後編)(3/6 ページ)
中島:営業的なことをいえば、決して成功したモデルではないです。でもデザインや、ディーゼルエンジンとかの歴史的なことに関していえば、非常にいろんなことにトライしたモデルだなという気がしますね。記録に残るより記憶に残るというか。
――実際のセールス面ではやっぱりダメだったんですか?
中島:非常に厳しい結果だったと聞いています。9馬力は魅力的だったと思いますが、価格や車体の大きさなどのネガティブな要素も大きかったのではないかと。
でも、このデザインのテイストは、当時の汎用機械ではちょっと考えられない、逸脱したものなんですよね。ここまでかっこいいのはF90だけです。だから2015年のモーターショーにも展示できた。社内的にもちょっと不思議なクルマなんです。
ホンダのカタログに見る、「女性が機械を使う写真」の意味
中島:(コレクションホール内の展示を見つつ)これが初代の耕運機です。F150っていって、さっきのF60よりさらに昔のやつ。
高久:ライトの位置も「そうなるよな」って感じですよね。7年違うけど。
――ずいぶんちっちゃくて、F90がいかにやりすぎなのか分かりますね。
中島:こっちは汎用エンジンですね。こういう製品も大体赤いんですけど、最初に開発したエンジンは全然そんなイメージはなくて、その次も別に赤は使ってないです。エンジンでいえば、うちはこういうボートにつける船外機もやってますね。うちはボート自体は作ってなくて、「船外機しかやってない」っていうふうに言ってます。
高久:船外機もヤバいんですよ。船外機オタクっていう人たちがちゃんといて、船外機プラモのブームっていうのもあったんです。実際にモーターで回るのもあって。除雪機も製品化したいんですよね。女の子の格好とかもモコモコにできて楽しそうだし。芝刈機を使っているお姉さんってプラモにしてもちょっと分からないじゃないですか。……この、広告用の写真がいちいちいいんですよね。ミニマムファクトリーですよ、もう。
――世界観がありますよね。
高久:広告の中で「女性にも扱える」っていうビジュアルイメージは一貫してありますよね。
中島:当然です。男性がこういう道具を扱えるのは、イメージ的にある意味当たり前なんですよ。われわれの商品が「家庭で扱うもの」ということになったときに、使用者としてあんまりお父さんってイメージしてなくて、「誰でも使える」というのを想定しているんですね。
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