「エンジンを使って女の子が楽できるなら」 50年前の“やりすぎな耕運機”が、今プラモデルでよみがえる理由(後編)(5/6 ページ)
“エンジン屋”としてのホンダが考える、エンジンと社会貢献
中島:これが本当の初代A型の自転車補助用エンジン(通称:バタバタ)です。最初から女神のウイングのマークが入ってますね。
――50年代の段階でもう広告で女子が乗ってますね。
中島:当時ホンダの販売は副社長の藤沢(武夫氏。本田宗一郎の名参謀といわれた)が旗を振っていました。藤沢の販促に対するこだわりは強くて、販促に女性を使用しているのは藤沢のアイデアといわれています。また、カブF型で使用の赤色のエンジンカバーと白いタンクも藤沢の提案だと考えられます。
この頃って、そこそこいろんなメーカーがいろんな補助エンジンを出しているんですよ。それで他社よりも目立つことを目的として、赤色と白色を使用したといわれています。
――当時から既にこの色だったんですね。
中島:本田宗一郎さんはデザインに非常にこだわったと聞いています。しかし、宗一郎さんがこだわったデザインのバイクは必ずしもかっこいいとはいえません。
逸話としてはCB750で初めてカラーの燃料タンクが採用された際にも、宗一郎さんは「こんな無駄なことはするな」っていったらしいんです。でも開発者が「これは世界初ですけど」って言ったら「じゃあやれ」っていわれたという話をOBの取材で聞きました(笑)。
同じCB750で、ディスクブレーキを見た宗一郎さんは「なんだこれ、なんでこんなもんがついてるんだ」「外せ」って指示したらしいんですが、そのときも開発者が「世界初です」といって採用が決まったと聞きました。
――基本そのパターンなんですね。
中島:もうみんな、何を言ったら親父さんが喜ぶか分かってるんですよ。一回怒らせといて、「でも世界初です」っていうと「ああそうか」ってなる。
この車からディスクブレーキが採用されたりカラーリングが増えたりしたわけです。これは非常によく売れて、ホンダが四輪に進出するときの資金源になったんですよ。CB750の販売成果がなかったらホンダは四輪に進出できてなかったと社内では有名な話です。
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