大学の“猫サークル”ってどんなとこ? エサやりだけじゃない猫助け、京大ねこサークルのメンバーに聞いてみた

近隣住民や職員と一緒に、エサやりや避妊・去勢手術などに取り組んでいます。

» 2018年07月09日 11時30分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 大学の敷地内で生きる「大学猫」。「かわいい」と話題になる一方、キャンパスを汚すやっかいもの扱いをされることも。そんな猫たちを保護するサークルが、各地の大学で立ちあがっている。「京都大学ねこサークルCat-Ch(キャッチ)」(以下、Cat-Ch)の学生に、どのような活動をしているか聞いた。


京都大学 大学猫 お腹を見せているのは、少しずつメンバーに懐きはじめた「かたまる」

講義の後は猫の世話


京都大学 猫のご飯 必ず複数の種類のエサを盛りつけている

 Cat-Chでは、京都市左京区にある京都大学吉田キャンパスの近隣の住民、京都大学職員、学生が協力して大学猫を保護する「大学猫活動」を行っている。参加している学生の数は現在80人。「医学部医学科以外の、ほぼ全ての学部の学生がいます。大学院生の人もいるし、留学生もいます。他大学から来てる人もいるんです」と所属学生。なかなかの大所帯のようだ。

 活動は週に1〜2回のシフト制で、毎回10人程度の生徒が集まる。「最終の講義の5限目は18時に終わるから、無理なく参加できます。キツくないサークルなんで、兼部の人が多いです」(所属学生)

 学生たちは18時30分に構内の一角に集まり、職員が用意したエサを、晴れの日は屋外、雨の日は屋内で容器に盛りつける。ドライは1種類、ウェットタイプ2種類。数種類のエサを用意するのは、エサのタイプによっては食べられない猫がいたり、エサのロットによって品質にばらつきがあったりするので、どんな猫でもどれかは食べられるようにするためだという。エサ入りの容器はキャンパスの5カ所に置き、1時間後に片づける。


京都大学 大学猫 最近さわれるようになった「くりくりもどき」

 猫は全部で約40匹。全ての猫に名前がついていて、所属してしばらくすると、同じような大きさや模様の猫でも見分けがつくようになるという。触れる猫は5匹程度。ほとんどは人に馴れていない。「でも、なるべく人馴れするように、エサを置きっぱなしにせず、食べ終わるまで見守ることにしています。エサを食べに来たか、具合が悪そうではないかを確認します」

 どうして人馴れさせようとするのか。その問いに所属学生は「人が近づくことに慣れていると、ケガや毛並みの確認がしやすくなります。また、サークル以外の人からも受け入れられ、見守ってもらいやすくなると考えています」と答えた。

冬場の「ねこハウス」など、季節限定の活動も


京都大学 ねこハウス 寒い冬の京都を「ねこハウス」でしのぐ

 2週間に1度、回収しきれなかった容器を片付けるために、敷地内の掃除をする。猫と関係のないゴミも拾う。掃除という意味合いもあるが、誤飲を防ぐためでもあるという。

 さらに、大学猫活動では欠かせない猫の避妊・去勢手術も行っている。処置が終わってない猫を見つけたら、その都度捕獲し、手術を受けさせている。キャンパス内の猫の多くは手術済で、そうでない猫は周辺から入り込んできた猫であることが多い。そのことから、メンバーは活動の効果を感じているようだ。


京都大学 大学猫 避妊・去勢手術が終わった猫はオスが右耳をカット、メスが左耳をカットしている

 季節限定の活動もある。冬場は非常に寒くなるため、段ボールと毛布で『ねこハウス』を作る。近隣住民からもらったカイロも入れる。大学ねこの保護の他には、京都大学の学園祭「11月祭」での展示を行っている。活動の紹介や「大学ねこ総選挙」(人気投票)などのPRからCat-Chを知る学生も多いという。

 エサをやるだけでなく、キャンパス内を清潔に保つための片づけ、増え過ぎを防ぐために避妊・去勢手術も行い、人と猫との関係や、猫が暮らす環境を改善しようとするなどCat-Chの活動の内容は幅広い。「最初は単に猫にエサをやる活動だと思っている学生がほとんどです。私もそうでした。新入生歓迎行事で人と猫との関わりについて説明を受け、環境作りも含めた大学猫の保護について学びます」と取材に応えてくれた学生は話す。

たくさんの人による大学猫活動、しかし反対意見も

 京都大学吉田キャンパスの敷地は、自然豊かな吉田山や吉田神社と重なり、住宅地とも近いので、もともと野良猫が多かったという。近隣住民、大学職員が別々に野良猫の世話をしていたが、学生の団体が協力するようになり、2013年秋に三者が力を合わせて猫へのエサやりや掃除、避妊・去勢手術を行うCat-Chが設立された

 大学猫活動は分業されていて、エサは近隣住民など協力者が提供、エサやりや片付けなど日々の活動は学生の役割。近隣住民には高齢の人が多く、毎日のエサやりなどは難しい場合が多いそうだ。


京都大学 大学猫 おしゃれな名前の猫も。左から「ローズマリー」「シンデレラ」「ゼブラ」

 個人的に寄付をしてくれる教員もいる一方で、敷地内で猫にエサをやらないでほしいという大学関係者もいて、反応はさまざま。「私たち、エサだけやっていると思われているんでしょう。だから、ちゃんと説明の場を持ちたいと思っています」(所属学生)

全国のねこサークルをつなぐネットワークが!?


京都大学 大学猫 仲良しの「さび」(手前)と「あげ」(奥)

 Cat-Chは他大学のねこサークルとも交流があり、立命館と同志社との3大学の猫サークルで「KASP」(kyoto Ani-love Student Party)という連盟を結成。京都動物愛護センターによるイベント「Kyoto Ani-love Festival」にブースを出したり、定期的に情報交換をしあったり、地域での人と猫との関わり方についての勉強会をしたりしているそうだ。また、全国の大学のねこサークルの連盟「大学ねこ連盟U-Cats」にも加盟しており、今年の12月は京都大学がシンポジウムを主催する予定という。

キャンパス内での保護の先へ。これからのCat-Ch


京都大学 猫サークル ビラ 今年の新歓ビラ

 現在、Cat-Chはキャンパス内にいる猫を保護するという活動内容から、さらに一歩踏み込んだことを始めようとしている。「昨年、猫が車にひかれるなどして死んでしまうことが続き、メンバーはすごくショックを受けました。いくら私たちが世話や見守りをしていても、やっぱり外で生活するのは危険。本当は家のなかで暮らす方が幸せなのではないかという意見が出て、譲渡に向けて動いています」(所属学生)。現在Webサイトで里親を募集しており、エサを食べているときの見守りも、猫が人に馴れ、スムーズに譲渡するためには必要だととらえているという。避妊・去勢手術や譲渡で猫が減ってしまうとしたら寂しいが、猫の幸せを思うとそのままにしておくことはできないとのこと。


京都大学 大学猫 2017年大学ねこ総選挙グランプリの「ちび」。小顔の女の子。白い胸毛がチャームポイント

 猫を思い、地道に行動するCat-Chのメンバー。大学猫活動について、1人でも多くの人に関心を持ってもらえるとうれしいと語った。

画像提供:京都大学ねこサークルCat-Ch Twitter:@KUCatCh/Facebook

谷町邦子

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた