1915年誕生「和文タイプライター」はいまだ現役だった! 日本の印刷を大きく支えた機械と人がつむぐ、103年後の言葉とは(4/5 ページ)
司法書士や戸籍担当者がまだ使っている
――いまだに和文タイプライターを使っている方はいるのですか?
直志さん:いるよ。司法書士関係だとか、役場の戸籍担当者とか。あとは、建設会社あたりは持っているのかな。
例えば役場で電算化されているところでも、いまだに和文時代の紙の戸籍が残っている。そこで昔書いた戸籍に記載漏れや間違いが見つかった際に、修正を入れるために和文タイプライターを使うんだ。
だから、印字に使うテープなどの消耗品はいまだ注文があるよ。一巻き1500円。昔は800円以下とかだったから。いまは倍の値段になったね。
奥さん:和文タイプライターが良いのは、字はキレイだし、全部そろって見えるでしょう。あとは、改ざんがしづらいっていうのがあるし。いまのパソコンみたいに、文章を訂正するのはカンタンじゃないから。
――ちなみに和文タイプをご自分で使うことはありますか?
直志さん:うん、使うよ。商品を納めるときに、保証書に、お客さんの名前や住所などを打ち込んだりとか。書くのがイヤだから(笑)。
いまも年配者には愛用されている
奥さん:和文タイプライターを個人で使った人は少ないと思う。ただ、学校の先生なんかにも納めたよね。学級通信みたいなものをタイプで打ったり。
――確かに昔、独特の字体の「クラスのおたより」をもらった気もします。
奥さん:いまも趣味で使う人もいるよ。サークルとか、ゲートボール協会とかで、自分で文章作らなきゃいけないっていうとね。お年寄りでタイプライターを使ってた人が、そのまま和文タイプを使うパターンがあるの。
グリコ・森永事件のとき、警察が何度も来た
直志さん:グリコ・森永事件のとき、ウチでもすぐ、どんな機械で打ったかは分かった。活字の書体などですぐ分かったな。あと、ウチにも何度か警察は来たよ。
――どんな和文の機種を使っているか、調べられたんですか?
直志さん:うん。まあ、うちの商品じゃなかったけどね。作った活字のメーカーによって書体が若干違うんだ。はね方とか、彫り方によって全然違ってくるから、それを見れば大体検討はつく。
――それだけでもけっこう絞られますもんね。
ネジの1つからぜんぶ分解して掃除。それから売る
――和文タイプライター本体は売っていますか?
直志さん:いまでも売ってくれっていわれれば、修理して整備して売るよ。ネジの1つからぜんぶ分解して、掃除して、そして直して。ただ、値段はつけない。買いたい人の言い値にある程度合わせて額を提示するの。あともともと「定価」があるものだから、それも考慮するよ。
――和文タイプライターの修理で、一番よくあるパターンはどんなことですか?
直志さん:部品の破損、摩耗が多いね。昔の機械だと、ツメの部分。昔の機械はギヤを使って、ツメを引っ掛けて、活字を打ち付けてたんだ。そのときの機械はツメやギヤの摩耗は多いんだ。
「絶対にミスタイプが許されない」緊張感
――修正液を使うことはあったんですか?
直志さん:修正液は打つものによって違ってくる。いまは白の修正液を塗って上から打つこともあるけど、昔は原紙っていう、印刷に使う紙に打ってたから。原紙用の修正液があって、そこを消して。印刷屋はしょっちゅう使ってた。
奥さん:ただ、和紙などへ直に打つときは、絶対に間違えられなかったね。
直志さん:昔は契約書も、間にカーボン紙を入れて3枚4枚と同時に打っていたから、絶対に間違えられない。
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