創元推理文庫に「FGO帯」が登場! 企画のワケを東京創元社に聞いてみた(2/2 ページ)

» 2018年08月01日 08時00分 公開
[青柳美帆子ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

 さらに、今回対象となった6冊のほかにも「FGO」ファンにオススメの本を教えてもらいました! 帯はなくても、いずれもFGOの世界をより深く楽しめそうなラインアップです。

『名探偵群像』

 さきほど、歴史と虚構の交差をFateシリーズの魅力のひとつとして挙げました。Fateシリーズの生みの親である奈須きのこさんが、山田風太郎さんの伝奇小説『魔界転生』のオマージュとしてゲーム『Fate/stay night』を構想したと仰っているように、似た趣向が凝らされている作品は、実は小説にもいくつかございます。

 まずご紹介するなら、シオドー・マシスンというアメリカの作家の『名探偵群像』です。本書は「歴史上の有名な人物がそれぞれの危機に際して、一生に一度だけ名探偵として活躍する」というコンセプトのもと書かれた11編の推理小説が収められていて、各編の邦題も「名探偵○○○○(人名)」で統一されています。

 例えば1編目は「名探偵アレクサンダー大王」。FGOのみならず『Fate/Zero』を読んだり見たりした方も興味を持っていただけるのではないでしょうか。本作は偉人が名探偵というワンアイデアにとどまらず、史実を踏まえた事件や謎解きが用意されています。アレクサンダー大王のほかには、レオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてフローレンス・ナイチンゲールが探偵役を務めています。それでいて各編30頁前後とコンパクトなことも、お薦めしやすいポイントです。

『シャーロック・ホームズたちの冒険』

 歴史と虚構が交差する趣向の作品は、ほかに田中啓文さんの『シャーロック・ホームズたちの冒険』がございます。

 歴史上実在した著名な人物や虚構のキャラクターが探偵役を務める短編集で、題名にもあるホームズや、かの有名な怪盗紳士アルセーヌ・リュパンの活躍譚のほか、忠臣蔵の最中に実は密室殺人が起きていたり、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が自ら集めた「怪談」を合理的に解き明かしたりと、一風かわった趣向の推理短編がそろっています。とりわけ、アドルフ・ヒトラーが〈シャーロック・ホームズ〉シリーズの一作『バスカヴィル家の犬』を読んでいたという談話から想を得て書かれた「名探偵ヒトラー」は、戦局を左右しかねない大事件にヒトラーが名探偵となって狂気の推理劇を繰り広げる壮絶な1編です。

 今年『シャーロック・ホームズたちの新冒険』という同じコンセプトの新作が刊行されましたので、併せてお薦めしたい作品です。

『シャーロック・ホームズの栄冠』

 そして、FGOをプレイされている方に何をおいてもお薦めしたいのは『シャーロック・ホームズの栄冠』。当代随一のシャーロッキアン(ホームズ愛好家)である作家・北原尚彦さんが自ら選んで翻訳したホームズ・パスティーシュのアンソロジーです。

 単にパスティーシュ/パロディーと言っても、目利きの方が選んでいるだけあって、その質の高さとバラエティの豊かさは折り紙つきです。シャーロック・ホームズが好きで正典はすっかり読み終えてしまった、という方も存分に楽しめると思います。

 特に亜種特異点の「悪性隔絶魔境 新宿幻霊事件」をプレイ済みの方は、本書に収録されている1編「小惑星の力学」という題名に聞き覚えがあるのではないでしょうか。「新宿幻霊事件」の真相の一部に触れるので多くは申し上げませんが……必読です!

黒後家蜘蛛の会シリーズ

 「小惑星の力学」に同じく某英霊がお好きな方にオススメしたいのが、アイザック・アシモフというアメリカ作家の〈黒後家蜘蛛の会〉というシリーズ。知的階級に属する六人の会員が月に一度晩餐会を開いて、ゲストが持ちこむ不思議な話をおのおの推理する連作短編集で、現在創元推理文庫よりリニューアルして刊行中ですが、その第2巻の最後を飾る作品が「終局的犯罪」といいます。概念礼装の名称にもなっているのでごぞんじの方もいるかと思いますが、当に〈黒後家蜘蛛の会〉の面々が「小惑星の力学」について議論するという話です。

『ラヴクラフト全集』

 亜種特異点「禁忌降臨庭園 異端なるセイレム」には、アメリカの作家H・P・ラヴクラフトが生み出した〈クトゥルー神話体系〉のモチーフがちりばめられているので、興味をお持ちの方は『ラヴクラフト全集』(全7巻+別巻2巻)をお手に取ってみてはいかがでしょう。ちなみに本章に登場するラヴィニア・ウェイトリーは、全集第5巻所収の「ダニッチの怪」に登場しています。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」