日本のマジック文化を変える――900人の手品愛好家が集合した「マジックマーケット」潜入レポ(1/3 ページ)

「コミュニティが形成されづらい世界」での、コミュニティ。

» 2018年09月07日 12時00分 公開
[Beeねとらぼ]

 みなさんのまわりに、マジックが趣味のひとは何人くらいいますか? まったくいない、あるいは、いても1人か2人というところではないでしょうか。


ごった返す人々

 これは、2018年8月18日に板橋のハイライフプラザいたばしで開催された、マジックマーケットの様子です。つまり、この写真に写っているのは、ほぼ全員が「マジックが趣味」あるいは「マジックが仕事」のひとです。その数900人以上!

 国内のマジック愛好家およびプロマジシャンの総数は不明ですが、首都圏在住のマジック関係者のうち、10人に1人くらいはここに集まったのではないかと思います。

 数百人のマジシャンが集まって何が行われたのか。その様子を紹介します。

ライター:Bee

アラフォーの手品愛好家。手品道具や手品資料を買うのが趣味だが、手品を演じるのはそれほど好きではない。手品歴大体15年。

Twitter:@small_magician

ブログ:Small Magician MINI



マジックマーケットってなんだ?

 そのネーミングから分かる通り、マジックに関する即売会です。プロ・アマ問わず、マジックに関係するいろいろなものを持ち寄って販売するイベントです。


マジックオンリー即売会イベント「マジックマーケット2018」(公式サイト

 そもそもマジックに関する資料や道具は、国内では、Web上を中心として、いくつかのマジックショップで販売されるものが大多数です。そういったショップでは、海外の卸から仕入れたもの、あるいは国内のクリエイターが卸したものが販売されています。

 つまり、ショップによるセレクションの個性はあれ、販売されているものはだいたい、どこも同じです。プライベートブランドがほとんどないコンビニみたいですね。

 一方で、趣味でいろいろなマジックの作品を考案してそれを発表したいと考えていても、ショップにチャンネルをもたないひとや、対面形式で自分の作品を販売したいと考えているひともいます。あるいは、トリックそのものではなく、その周辺についての考察を発表したいと考えるひともいます。

 そういった、従来のマジック文化から漏れるひとをすくい上げたのが、マジックマーケットです。


「緩やかな連帯の場」

 さらに、マジックは「秘密」を扱うため、それを趣味としないひととマジックの話をすることができません。

 ところで、「合コンでマジックをしたらウケる……あわよくば、モテるかも!」と思ってるひとがいるかもしれませんが、「ウケるのは一瞬、モテにはつながらない」と断言しておきます。というのは、仮にマジックを演じても、「そのタネどうなってるの?」と尋ねられるのがせいぜいです。タネを明かしたら、「なーんだ」と言われて終わりです。マジックにおける「秘密」の重要性は、こういう面にも伺うことができます。


筆者の部屋にたまった奇術道具の山

 横道にそれました。

 そういったわけで、マジックはコミュニティの形成がされづらい傾向があります。多くの趣味は、なにかしらのコミュニティに所属することで、その趣味が継続されることが多いと思います。しかしマジックの場合は、「始めたのはいいけど、どうやって続けたらいいのかわからない」と、早々に離れていってしまうひとが多いようです。

 しかし、このマジックマーケットは、そういった孤立した趣味マジシャンたちに、緩やかな連帯の場を提供しました。

 つまり、マジックマーケットは、日本におけるマジック文化を大きく変えるイベントである、ということです。


マジックマーケットに集まるひとたち

 12時の開場を前にして、すでに100人を越えるひとが列を作っています。当然ですが、これもみんな、マジック関係者です。列の中ほどで並んでいるひとに話を聞いたところ、10時半くらいから来ているとのことでした。


行列の様子

 マジックマーケットは、年1回の開催で2018年は5回目にあたります。年々、参加者は増えていて、1回目は170人でしたが、5回目の今年は920人になりました。昨年は420人だったそうですから、一気に倍増です。

 全57ブースだったので、170人くらいは出展者側、純粋な来客数は750人くらいの計算です。ブース比は13倍です。コミケが3万2000スペースに対して一般参加者55万ですから、スペース(ブース)比17倍です。コミティアがだいたいブース比10倍のようなので、かなり集客力の強いイベントであることが分かるかと思います。


マジックマーケット2018の会場レイアウト(公式サイトより)

 参加者の何人かに、何回目の参加か尋ねたところ、初めてという声も多く聞かれました。友人と2人で来ているひともいましたが、1人での参加もかなり多いようです。

 年齢層は若く、一般参加の半分以上が10代あるいは20代のように見えます。女性の割合は低く、30人に1人いるかいないかといったところでしょうか。

 開場の12時を過ぎると、一気に場内の温度が上昇したように感じられました。何かに似てると思ったら、コミケ3日目の「情報・評論」ブースの13時です。何があるかは分からないけど、面白そうなものがいろいろありそうだ、という来客者の空気を感じます。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  7. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  8. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  9. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. /nl/articles/2411/15/news132.jpg これ自宅なの!? 浜崎あゆみ、玄関に飾られたクリスマスツリーのサイズが桁違い 豪邸すぎてパーティー会場と間違われたことも
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた