秘蔵の剥製が所狭しと並ぶ研究施設のとある空間 国立科学博物館を支える剥製保管部屋とは(1/3 ページ)

さまざまな人の思いや技(ワザ)が吹き込まれた博物館の命である標本の一つ「剥製」が保管されている部屋を見てきました。

» 2018年09月08日 11時00分 公開
[あだちまる子ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載中の人気漫画『へんなものみっけ!』(早良朋)とコラボした企画展標本づくりの技(ワザ) −職人たちが支える科博−が9月4日から国立科学博物館(東京・上野)で開催しています。

へんなものみっけ 標本づくりの技 博物館の“ウラ側”を知れる

 ねとらぼ生物部ではそれに合わせて、「国立科学博物館 筑波研究施設」(茨城県つくば市)を取材! 解剖調査の現場に立ち会ったり、大迫力の標本の山々に驚かされたり、実際に施設で研究をしている先生の生きものへの思いに感動したり……。企画展をますます楽しめる、貴重な研究施設の“ウラ側”をお届けします。

へんなものみっけ 標本づくりの技へんなものみっけ 標本づくりの技 『へんなものみっけ!』(C)早良朋/小学館、「標本づくりの技(ワザ) −職人たちが支える科博−」

漫画『へんなものみっけ!』

 市役所から博物館に出向することになった“ごく普通”の主人公、薄井透と、日夜獲物(資料)を求めて海へ山へ飛び出す若き鳥類研究者、清棲あかりを中心に、博物館で働く個性豊かな研究者たちや、博物館の日常を描いた作品。

企画展「標本づくりの技(ワザ) −職人たちが支える科博−」とは

 職人たちによって作られた数々の標本や、あまり知られていない標本づくりの「技(ワザ)」、貴重な研究成果など、漫画『へんなものみっけ』でも描かれている“博物館のウラ側”が知れる企画展。自然史や科学技術史研究の中核拠点として、研究施設と標本収蔵施設を置く「筑波研究施設」にいるような臨場感を味わえる。


標本づくりの技標本づくりの技標本づくりの技標本づくりの技
標本づくりの技標本づくりの技標本づくりの技標本づくりの技 展示の様子(クリックで拡大)

自然史標本棟見学スペース

 アザラシの解剖調査に立ち会った筆者たちは、続いて自然史標本棟見学スペースの公開収蔵庫へ。案内をしてくれるのは国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹で、海棲哺乳類のストランディング(海棲哺乳類が岸に打ち上がること)の原因を病気という観点から研究している田島木綿子先生です。


へんなものみっけ 標本づくりの技 自然史標本棟の見学スペース

へんなものみっけ 標本づくりの技 普段はガラス越しに標本や映像を見られる場所

 ここは大型動物の骨格標本を中心とした収蔵状況が見られるスペースで、普段はガラス越しでしか見学できませんが、今日は特別に中に入って見学させてもらうことに。国立科学博物館で展示されるクジラやゾウの大きな骨など、50点前後が収蔵されています。


へんなものみっけ 標本づくりの技 すごい迫力!

へんなものみっけ 標本づくりの技 特別に中に入らせてもらいました

 2005年に東京湾に現れ話題となったコククジラの頭骨標本も。クジラは椎骨(ついこつ)同士の癒合具合でその個体がまだ成長するのか判断できることなど、海棲哺乳類の生態や当時の様子を田島先生に直接うかがいながら標本の数々を見学しました。


へんなものみっけ 標本づくりの技 コククジラの頭骨標本

へんなものみっけ 標本づくりの技 左奥の象の標本と比べると大きいことが分かる

へんなものみっけ 標本づくりの技 クジラの椎骨標本

 中でも、新・江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)にいたミナミゾウアザラシの“みなぞう”くんの標本の大きさにびっくり。筆者の背丈の何倍もの大きさに、作り物かと思ってしまったほどです。標本になっているからこそ間近で感じられる迫力と生態。生きものへの関心や興味が駆り立てられます。


へんなものみっけ 標本づくりの技 みなぞうくんデケーッ

剥製保管部屋

 自然史標本棟の中にある「剥製保管部屋」にも案内してもらいました。研究用に作成されたものや、個人から寄贈されたものまで、何百点もの剥製が保管されています。


へんなものみっけ 標本づくりの技 剥製保管部屋

へんなものみっけ 標本づくりの技 漫画『へんなものみっけ!』の中に登場する標本庫と同じだ!

 漫画『へんなものみっけ!』第10話に登場する標本庫をそのまま実写化したような空間に大興奮。技術が高いことで知られるヨシモトコレクションなど、バラエティーに富んださまざまな剥製が所狭しと収蔵されています。


へんなものみっけ 標本づくりの技 ヨシモトコレクション、ウシ科哺乳類の剥製

へんなものみっけ 標本づくりの技 ワニの剥製も

へんなものみっけ 標本づくりの技 さまざまな剥製が厳重に保管されています

へんなものみっけ 標本づくりの技 標本庫(筑波研究施設における剥製保管部屋)の管理をするコレクション・マネージャー、刺原(作中のキャラ)にとって大切な場所

 ここに収蔵されている剥製はどれも誰かの手や知識が加わり作られたもの。それらを感じながら見る博物館はまた違ったものになりそうです。


へんなものみっけ 標本づくりの技 3Dプリンタで「なかご(剥製の中身)」を作製し、作ったアシカの剥製

 ちなみに、これだけ壮大な空間にもかかわらず、標本庫の管理をするコレクション・マネージャー(※)には専任者がいなく、研究者が兼務しているとのこと。国立科学博物館といえども台所事情は厳しいようです。生物の研究や論文の作成、博物館で行われる催事の企画や運営まで、あらゆることに向き合う研究者たちの現状も“ウラ側”を通して見られました。

※:仕事内容は、庫内の温度・湿度管理をはじめ、剥製を食い荒らす害虫(ミュージアム・ビートルことヒメマルカツオブシムシ)対策、コレクションの整理、データ入力など多岐にわたる


へんなものみっけ 標本づくりの技 収蔵されている標本は一つ一つが大事な“博物館の命”

博物館を支える職人たち

 解剖調査を行う研究者、標本を作る職人、それらを守る職員――。さまざまな人の思いや技(ワザ)が合わさり再び吹き込まれた一つ一つの“博物館の命”に、大きなロマンを感じました。


試し読み:第10話「ミュージアム・ビートル」

へんなものみっけ

へんなものみっけ

へんなものみっけ

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」