思わずうなずく“都道府県あるある” マンガ『四十七大戦』の一二三が意識する「地元の視点」と「外部からの視点」:「WEBマンガ総選挙2018」1位受賞記念(1/2 ページ)
「WEBマンガ総選挙2018」の1位受賞を記念して、『四十七大戦』の一二三さんにインタビュー。記事後半ではコラボカフェの情報も。
全国47都道府県に存在する“ゆる神”たちが、次の首都を巡って戦いを繰り広げる人気漫画『四十七大戦』(一二三さん)。Webコミックサイト「コミック アース・スター」で連載中の同作が、ピクシブと日本出版販売の共同主催による「WEBマンガ総選挙2018」で1位に輝きました。
「WEBマンガ総選挙2018」では、Webで発表された後に書籍化されたマンガを対象として、ノミネート期間中に応募された「推しマンガ」の中から候補となる50タイトルを決定。その後、書店とネットの連動で投票を受け付け、多くの人気作の中から『四十七大戦』が初の栄冠を勝ち取りました。
1位〜10位までの結果
1位:13万3608ポイント 『四十七大戦』(一二三さん)
2位:9万0082ポイント 『うらみちお兄さん』(久世岳さん)
3位:2万9663ポイント 『おじさまと猫』(桜井海さん)
4位:2万8880ポイント 『セレベスト織田信長』(ジェントルメン中村さん)
5位:2万6541ポイント 『佐々木と宮野』(春園ショウさん)
6位:2万4987ポイント 『本橋兄弟』(RENAさん)
7位:2万2369ポイント 『マキとマミ〜上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話〜』(町田粥さん)
8位:1万9485ポイント 『先輩がうざい後輩の話』(しろまんたさん)
9位:1万9345ポイント 『極主夫道』(おおのこうすけさん)
10位:1万8968ポイント 『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』(松本ひで吉さん)
総票数:70万5716ポイント
ねとらぼでは『四十七大戦』の1位受賞を記念し、作者の一二三さんにインタビューを実施。都道府県ネタの魅力やネタにする際に気を付けていることなど作品にまつわる話を聞いた他、記事後半では東京・秋葉原にある有隣堂ヨドバシAKIBA店併設の「STORY CAFE」で9月14日〜10月14日にかけて開催される「WEB マンガ総選挙2018 コラボカフェ」に関する情報もあわせてお届けします。コラボメニューの写真もあるぞ。
- 『四十七大戦』特設サイトはこちらから
『四十七大戦』一二三さん受賞記念インタビュー
―― 「WEBマンガ総選挙2018」で1位となったいまのお気持ちを聞かせてください。
一二三 以前から部数規模の割に読者の熱量が高い作品だとは言われていたものの、なかなか結果を出せず申し訳なく思っていたのでやっと結果でお返しできたのが本当にうれしいです。当初は10位以内に入れれば上出来だと思っていたのですが、まさかこんなに高い順位をいただけるとは思っていませんでした。読者の皆さんがとても熱心に投票・応援してくださったおかげなので、今は応援してくださった方々にとにかく感謝を伝えたいです。
―― 本当に熱いファンに支えられた作品だと思います。作中では都道府県ネタをメインに扱っていますが、どういったところに魅力を感じますか?
一二三 一度知ると同じ生活・同じ風景でも受け取り方が全く変わるところだと思います。分かりやすい例だとマンホールの蓋の絵やナンバープレート、食生活などがありますが、よく見ると地域ごとにかなり違う上にどれもそれなりの理由や経緯(いきさつ)があります。
名産や気候、どの県とつながりが深いかなどを踏まえて見ると今まで意識していなかったところに特徴が見えてくるのはとても面白いですね。読んで下さった方にもそういう面白さを伝えられればと思って描いています。
―― そういったネタを描く上で気を付けていることはありますか?
一二三 やはりあるあるネタがメインなので、その地域の方に「分かる」と思って楽しんで頂けるものにしようとは思っています。ただ場合によっては(「これは違う」という意見があっても)「地元の視点」だけでなく「外部からの視点」も重視しなければと思っています。
例えば名産品をよく食べるかどうか、という質問でよくあるのが「普通です」という答えなのですが、具体的な頻度や統計、スーパーの棚の大きさなどを確認すると「明らかに全国平均より多い」ということがよくあります。
「その地域の人の“普通”が他の地域では“普通”ではない」ということが地域性を形作る大きな要素だと思うので、どの視点を取るかというバランスには常に気を付けようと思っています。
―― そうやって全国のことを調べていると、作品を描き始める前と比べて、かなり各地の事情に詳しくなられたかと思います。ご自身で何か変化を感じることはありましたか?
一二三 圧倒的に人と会話がしやすくなったように思います。仕事でお会いする方だけでなく、整体や美容院など店員さんと雑談するときも、相手の地域の知識があるだけで話の弾み方が全く違います。逆に言えば今までは会話で気付かなかったことがたくさんあったと思うので、昔のやりとりを思い返して考え直すことも多いです。
スーパーの売り場では産地だけではなくどの距離から輸送されているのかも意識するようになりました。ネットが発達した今でも、物流は地域ごとのつながりや輸送経路の発達度合いに左右されますから、いろいろ学ぶところが多いです。後は各地域に関する報道の量・SNSのつぶやきの量など、内容でなく割合の方にも少し意識を傾けるようになりました。
―― “ゆる神様”たちはそんな各地の特色を生かした必殺技をそれぞれ持っていますが、特に気に入っているものはありますか?
一二三 基本はギャグ漫画なので「総理の加護(プライド・オブ・ヤマグチ)」や「地産地消(アルティメット・オオイタ・サーキュレーション)」「京都鉄塔景観違和(京都タワー半分ビルやないか)スラッシュ」などしょうもなさすぎるルビ芸・演出ができた技は気に入っています。
純粋に演出がかっこよくできて好きなのは長崎さんの「百花葬送」、三重さんの「反転結界」、京都さんの「五魂昇焔」あたりでしょうか。
―― 9月14日からはコラボカフェもスタートします。メニューの開発にも携わられたかと思いますが、こだわった点など教えてください。
一二三 わざわざ遠方から来てくださる方も多いので、それだけの価値を感じて頂けるようにはしようと思っています。材料にあまり高価なものは使えない分、出てきたときにぱっと見で楽しさが伝わればという方向で監修させて頂いてます。具体的には「コンセプトを分かりやすく」「色合いが華やかになるように」という観点でいくつか提案をお伝えしました。
メニュー以外にもやってみたいことがあったのですが、それは今回は難しいのでいずれ自前でイベントができることがあれば挑戦したいです。
―― やってみたいこと……とても気になります。これまでに鳥取県知事に鳥取さんのコスプレをしてもらったり、人気声優の島崎信長さんと増田俊樹さんに声を当ててもらってコミックPVを制作したり、今回の1位受賞記念では新たに広島さん役に浅沼晋太郎さんを起用しての新作映像も制作されたりましたが、今後新たにやってみたいことはありますか?
一二三 取りあえず「総選挙10位以内ならLINEスタンプ製作」という公約を掲げていたので、ぜひ楽しく使って頂けるものを作りたいと思っています。
それと1巻発売時から言われていた「この作品の読者は行動力が高い」ということを今回会社の方でも強く認識して下さったようなので、これからは参加することで楽しんでもらえる体験型企画やイベントにもっと挑戦できないか考えています。扱う分野が広いので何かしらコラボレーションもしていければ面白いですね。
これからも地域の面白さをいろんな方に楽しんでもらえるよう頑張ります。
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