先輩、結局そういうことしたいんですか、学校で。 アニメ「やがて君になる」4話(1/2 ページ)
キスする際は周りに注意しようね!
人を好きになるって、なんだかとっても難しい。「やがて君になる」(原作/アニメ)は、思春期に体験する「止められない恋」と「恋がわからない」気持ちを繊細に描いた作品。しっかり者なのに好きな人に甘えてしまう先輩と、人を好きになれない後輩の、ちょっぴり厄介なガールズラブストーリー。
今までのあらすじ
高校一年生の小糸侑(ゆう)と、二年生の七海燈子。クールで優等生な燈子だが、侑のことがすっかり大好きになり、デレデレに。
侑は、人を好きになって夢中になる感覚がわからない子。先輩に対して、嫌ではないけど大好きではない、くらいの距離を取りつつも、押しの強い先輩に流されるはめに。
生徒会長になった燈子。意外と彼女が弱いと気付き始めた侑は、サポートをしようと思い切って生徒会に入る。燈子の「好き」はどんどん強くなり、侑に近づきたい思いは暴走気味になっていく。
ノンストップ燈子先輩
侑のことが大好きすぎる燈子は、選挙演説の際の応援責任者に一年生の侑を抜てきしました。ぶっちゃけ半分くらい私利私欲。
グイグイ迫りまくる燈子。一緒に登下校をする、侑にぴったり寄り添う、こっそり侑の実家の店を訪れる、などなど。別にストーカー気質だとかではなく、ただ単に好きな人ができてドキドキしているのがうれしい、という無邪気なものです。
学校の廊下を歩いていると、ニコニコしながら侑にくっつこうとしてくる。それ好き云々じゃなくて、ちょっと邪魔だよ! しかも無自覚。有能生徒会長のポンコツっぷり、漏れ始めています。
今までは「侑の前でだけ」だった彼女の本当の姿。ただ学校内のいたるところでダダ漏れ寸前なのはちとまずい。
生徒会室に二人きりでいたとき、燈子先輩は言います。
燈子「ねぇ侑 キスしたい」
この人何言ってるんだろう……。そもそもまだ付き合っていない。ここは学校であなたは生徒会長。「好きでいるだけでいい」と侑に発言したばかり。燈子先輩の言動は、ここしばらくでかなりシッチャカメッチャカになりつつあります。「特別」を見つけちゃったもんだから抑えが効かなくなっていますし、その感覚自体を楽しんでいる様子。
自分が散々「欲しくなっちゃう」と言っているのに、侑に対しては「好きじゃないのにキスしたいとか 侑えろい」とこぼしてしまう燈子先輩の感覚。要は「欲しくなる」のは恋愛的感情で、キラキラフワフワした素敵なもの、というのが燈子先輩の捉え方なのでしょう。その一方で、キスや性的接触を「好き」以前に求めるのは「えろい」と考えている。
恋愛感情と性的欲求が、頭の中でうまく結び付いていないようです。だからこそ最後の歯止め(無理やりはしないとか)はギリギリかかっているんでしょう。不意打ちでキスしたときのことは、さすがにダメだった、と思っているようですし。
このドキドキは誰のせい?
燈子先輩の「侑がいつも許してくれるからもっと欲しくなっちゃう」「侑のせいだよ」という発言。先輩ヒートアップしすぎだよ、少し冷静になろ!?
ただ、彼女が甘えてしまう気持ちがわかるような侑の言動、かなり多いです。
生徒会の仕事が一段落し、燈子先輩だけが学校に残ったとき。帰ろうとした侑は、チラリとこっちを見た燈子先輩を見て、居残りすることを決めます。先輩が子犬のようだからとはいえ、流されやすすぎるにもほどがある。
先輩も、「私用でパソコン使ってく」と言っておきながら、実は家に自分のがある、という策士っぷり。侑は残ってくれるに違いない、とわかっての言動です。まあ、残るんだけど。
じゃあ先輩がキスを持ちかけたときの反応はどうだったのか? 「別に嫌なわけじゃない」というのがアンサー。要は「許可」です。
だから、キスする瞬間の二人のテンションの違いが興味深い。燈子先輩はドキドキ恋する乙女状態。目をつぶっています。一方侑はほとんど頬も赤らめず、近づいてきた燈子先輩の顔をじーっと見て、冷静に「まつげ長いな」なんて思ったりしています。
それって普通ですかね
学校でのキスはさすがにうかつと言うか無防備というか。同じ生徒会・槙に見つかっていました。
この槙という少年がたまたま一人で見たのが良かった。人の恋をこっそり特等席で見ていたい、自分は混じりたくない、という傍観者的立ち位置の子。安全です。今まで二人の価値観の中で混乱していた侑と燈子先輩の関係を、第三者から見るとどう感じられるのかを気付かせる存在になりました。
槙が「見ちゃった」と言ったときの侑の反応。ここで彼女がまっさきに心配したのは、燈子先輩が苦しむのではないか、ということでした。自分の心配を一切していない。
侑「七海先輩には言わないで 見ちゃったってこと」「余計なこと言って怖い思いさせたくない」
槙視線・視聴者目線だと、この思いやりの様子は、形はわからないけれども「侑は燈子が好き」と受け取れてしまう。「嫌いじゃない」という段階ではない。これを槙は「七海先輩のこと特別なんだなぁって」と表現します。
この作品において、好きとか恋とかよりも重視されるのは「特別」です。定義のできるものではありません、だって人それぞれ特別の意味違うもの。一つじゃない人だっている。理屈じゃなく、自分の気持ちが突き動かされる存在がいれば、それは特別。
そして「特別」の反対語として侑が使うのが「普通」。この普通は、マジョリティというよりも「すごくない」「変わっていない」というネガティブな意味で使われているようです。あとは、困ったときの逃げでよく使う。
槙と話したことで、普通じゃないことに気付き始めた侑も、何かが変わりつつあります。
余談ですが、単行本のおまけイラストに、生徒会の入口にカーテンをつけるよう燈子先輩に言い出す侑が描かれています。ってことは、またキスされても見つからないように、ってことなの? えっ、そこ退ける方向じゃないの?? どうやらすっかり流されているようです。
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