「年間40万円台」でヨットは維持できる:キャプテンながはまの100万円で「船長」になる(5)(2/2 ページ)
PB責任保険で年1万2500円ほど「任意保険費」
小型船舶は、自家用車の自賠責保険のように法律で定められた強制保険の加入義務はありません。しかし、船舶事故やトラブルは起こり得ます。同乗者が亡くなったり、負傷したりする可能性があります。事故時に民間船が捜索に協力してくれたならば、その民間船に支払うコストも負担しなければなりません。
損害補償も高額になる傾向にあります。航行中に誤って漁師や漁協が設置した漁具を破損してしまったら、その修繕費用だけでなく、喪失した漁獲高も賠償しなければなりません。多くは数千万円規模、場合によっては数億円規模に膨れる額になり得ます。そのため契約するマリーナやフィッシャリーナによっては、利用者に保険加入を義務付けているケースが多くあります。
多くの利用者は、同乗者死亡負傷見舞金支払い保証、他船に損傷を与えた場合の修理費支払い保証、漁具を損傷させた場合の賠償金支払い保証を組み合わせた「小型船舶対象保険」に加入しています。参考保険料は、日本漁船保険組合の「PB責任保険」の場合、船体保険なし、補償金額を6億円に設定し、8メートル以下の船で、年間1万2500円です。
「船長」の維持費は、コンパクトカーの維持費と変わらないか、それ以下
以上、今回は「ヨットの維持に必要な費用」を説明しました。要点をまとめると以下のようになります。ちなみにヨットは、クルマのように取得時や、所有することで毎年かかる税金はありません。
- 係留代は月2万円台、年間約30万円
- 船底掃除と船底塗装は年10万円(作業依頼費含む)
- 燃料代は帆走主体の参考値で年1万3000円から
- 定期検査の手数料は6年に1度の本検査と中間検査をならして年6533円
- 任意加入保険料は船体補償なしで1万2500円から
ということで、維持費合計は年間約45万円です。
参考までに、JA共済の試算によると、1.5リッタークラスのコンパクトカーの平均年間維持費は約44万4542円だそうです。ヨットの維持費は、コンパクトカーの年間維持費とほとんど変わらないのですね。
「船長になる」コストは、国産コンパクトカーの維持費とほぼ同じ
もう一度、船長になるための費用をまとめておきましょう。
- ヨットを購入する費用:25〜26フィートの20〜30年落ちの中古ヨット「約100万円」 (関連記事)
- ヨットを係留する費用:漁港併設のマリーナ・フィッシャリーナで「年間約30万円」 (関連記事)
- 船舶免許を取得する費用:一級で4日間「14万円」(二級で3日間9万円) (関連記事)
- ヨットスクール受講費用:ディンギー向けヨットスクールで3日間「4万円」 (関連記事)
- ヨットを維持する諸費用:定期検査、船底整備、保険、燃料費など「年間約15万円(係留費込みで45万円)」
「係留費」はもっと安くなってほしい
最後に言っておきたいことがあります。かかる費用のうち「係留費」はもっと安くなってほしいです。まだまだハードルが高いですよね。セレブ的ステータスやショッピングモール併設施設など、そういった付加価値の高いマリーナが高額なのは分かります。対して「設備は船を管理できる最小限でいい」人もいます。
具体的には月額1万円台までで利用できる港があるならば、もっと多くの人が気軽にこの趣味を楽しめます。例えば「稼働漁船が減少している漁港をプレジャーボートに開放する」ことは、地域活性の有効な手段にもなるはずです。
ついでにボートメーカーには、国産バン・ワゴン車と渡り合える500万円台の価格帯くらいで「ヤマハ Y-25 マイレディ」に相当する新型ヨットの復活を強く強くお願いするところであります。
今回紹介した一連の記事で、「普通の人」も、ヨットを購入して、マリーナに係留して、「船長になれる」ことが分かっていただけたと思います。「初期編」はいったんこれで終了となりますが、機会があれば今度は「実際に島に旅するにはどんなことが必要か」についてのノウハウも紹介したいと思います。それでは皆さん、今度は「海上」でお会いしましょう。
長浜和也
IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。
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昔は難関といわれていた一級小型船舶も、今は結構簡単になりました。
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