好きな子に「家でやります?」って誘われてドキドキしない人いるの? アニメ「やがて君になる」5話(1/2 ページ)
人を好きになるとそんな風になっちゃうんですか、ってそりゃまあねえ。
人を好きになるって、なんだかとっても難しい。「やがて君になる」(原作/アニメ)は、思春期に体験する「止められない恋」と「恋がわからない」気持ちを繊細に描いた作品。しっかり者なのに好きな人に甘えてしまう先輩と、人を好きになれない後輩の、ちょっぴり厄介なガールズラブストーリー。
今までのあらすじ
高校一年生の小糸侑(ゆう)と、二年生の七海燈子。クールで優等生な燈子だが、侑のことがすっかり大好きになり、デレデレに。
侑は、完璧に見えて実は弱い燈子の一面を知ってからというもの、別に特別な存在とは考えてはいなかったが、この人の手助けになろうと考える。生徒会長の燈子を手伝うべく、生徒会に入る侑。燈子は毎日浮かれ気分。
ドキドキの歯止めがかからなくなってきた燈子は、放課後誰もいない生徒会室で、侑にキスを迫る。侑は、燈子を好きというわけではないものの、彼女の行動に応えた。
侑の迷走
先輩の相当なレベルのわがままを聞いている侑。もうそれは実質お付き合いしているってことでいいんじゃないの? なんて外側から見たら感じるのですが(実際、生徒会の少年・槙もそう感じていた)、彼女には1つ決定的な線引があります。
彼女は自分を「お人好し」だと判断しています。要は「七海先輩が自分にとって特別だから近くにいる」ではなくて、「困っている人だからまあそばにいてやらんこともない」というような扱いだと分析しています。
侑「相手が七海先輩じゃなくても 同じようにしてたと思う」
とはいえ生徒会にわざわざ一緒に入るって、ちょっと度合いが違いすぎないか。先輩ですら、優しすぎると言ったほど。でも侑はそうは考えていないらしい。ここが自己分析した上で行動し続ける彼女の強みであると同時に、自分の心が沸き立つような「特別」が見つからない彼女の最大のコンプレックスです。だって、先輩はそんなこと考えないでも、自分の欲求で動けるのに。
侑が学校で先輩と一緒に勉強をすることになった際、先輩は侑のわからない所を手取り足取り教えてくれます。もともとは向かいの席にいた先輩ですが、教えるというタイミングを逃しません、ちゃっかり彼女の隣に座ります。欲望に忠実!
この作品の中の先輩の行動は大体、侑といる時は「侑と一緒にいたい」「侑に近づきたい」が原動力になっています。以前の唐突なキスも、生徒会長選挙の推薦責任者抜てきもそう。次第にしれっと手をつなぐようになったりと、侑がいればスターをとったマリオ状態。こんなにわかりやすく恋をしてくれると、見ていてすがすがしいです。
だからこそ侑の心はねじれます。わたしってこうじゃないよなあ。
侑は一緒に勉強をする相手として、最初は生徒会の男子・槙に声をかけていました。彼女にとっての「先輩と一緒に勉強する」は、それと同様のことでしかない。全く特別な行為ではないです。
無論、先輩はそうは思っていません。大好きな侑と2人で放課後勉強できるなんて(また横に座ってるな!)、もう一大イベントです。先輩はほかの友人から誘われた際、それを断って侑の元に来ているほどです。最優先なのです。
人間に対しての「好き」は、どうあがいても順位が付きます。ここを侑は分析します。
- 自分は別に誰といても構わない、たまたま先輩がいただけだ。
- 先輩はわたしといたいと思っている。それはわたしでなければいけない。
- 先輩の中で一番に選ばれたことは、わたしはうれしくないわけじゃない。
- でも誰に選ばれても、うれしいかもしれない。
ものすごく複雑。「まあそういうもんさ」的に飲み込めれば、悪い気はしない、ってくらい。なので彼女が選んだのは「一緒にいる時間に慣れる」というものでした。
そりゃ意識するだろうよ
「好き」だと告白済みで、キスまでしていて、相手はそこまで好意を持ってはいなくても取りあえず受け止めてくれている、という状態の先輩。そんな相手から「家で(勉強)やります?」なんて言われて、意識しない若者がいるだろうか! 侑は「慣れる」ためらしいが、今の君は相当な小悪魔だぞ!
今回は先輩の心境に強く共感せざるを得ない。今まで知ることのなかった、好きな相手のプライベート。それをのぞく関係になるなんて。以前は侑の家の書店に入るだけでドキドキだったのに。
そりゃベッドに頬寄せて匂いもかぐでしょうよ。……いや、かがないかな……。七海先輩はそのくらいいま、恋愛へのドキドキ・ワクワクが止まらない。2人で勉強を始めてもまーったく落ち着かない。顔はずっと赤らんだまま。
四つん這い歩きでぐいぐいと七海先輩に詰め寄る侑。汗をかいて顔赤面させて心臓バックバクな七海先輩。
燈子「だって好きな女の子の部屋に来てどきどきするのは仕方ないでしょ!」
侑「先輩の変態」
正直ここの侑のムーブは、先輩ならずともコロリといきそうな小悪魔属性。でも本人、それに気付いていない。「特別」に振り回されていないからこそなのは、わかってはいるのですが、先輩気が気じゃない。
この作品で重要な単語の一つ「普通」が登場します。
燈子「普通だよ!!」
確かに読んでいて、燈子がこのシチュエーションにドキドキするのは「普通」に見える。
でも本当にそうなのか?
侑側としては、告白とかいろいろあったけれども、友人が家に遊びにくるのと感覚的には変わりません。一方先輩側は、初めて好きな子の部屋にあがって心中穏やかではない、友達の家とはわけが違う。
先輩と侑の感覚の溝は、こんなにも広がってしまった。
確かに今の先輩の「大好き」と、侑の「私はそうでもないけどいいよ」のぶつかりあいは案外バランスが取れているし、先輩はそれがいいらしい。無理強いはしてこない。心情の押しつけもしてこない。楽っちゃ楽。
けれども今回のことでより一層ギャップがわかりました。
侑「先輩はこんなにわたしを好きで それでもわたしはこのまま変われないのかな」
彼女は最初の時のような、「特別」な感情が見つからない、変われない自分にまた嫌気が走り始めています。
今の2人の関係に満足するよう、心を慣らしていくか。
理性的に自分の好きなものを洗い出して、優先順位を決めていくか。
自分が変わるまで歯を食いしばって待つか。
今はいずれもできていません。せめて、何か欲望が沸き立てば変わるのにね。例えばベッドの匂いをかげる先輩は、侑が言うように「変態」ではあるけど、「よくある願望」「普通」だとも思う。とっさに体を動かすことには理屈がないから、ややこしい。
もっとも「別に好きでも嫌いでもない」っていうのも、「普通」によくあることなんですよね。人の感情と自分の感情を比較し続けても、見つかるものは少ないかもしれない。
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