【木村祥朗×堀井直樹×なる×ZUN】「BLACK BIRD」爆誕祭 なぜゲーム開発者はシューティングを作りたがるのか、「原点にして究極」と語るその魅力(3/5 ページ)
ストーリーとゲームが同時進行する「アスタブリード」の衝撃
―― なるさんはこの中だと比較的お若いと思うんですが、なるさんはなぜ「アスタブリード」を作ろうと思ったんですか。
なる:僕はそれまで、シューティングってシューターとかすごいこだわりがある人たちが集まっている「コアなジャンル」というイメージがあって。「そういえば入門用のシューティングがないな」と感じていたんです。だから今までシューティングを遊んでいない、ライトな人たちにとっての「入門用シューティング」を作れればいいなと。それが最初のコンセプトです。
シューティングはもともとアーケードから始まっているせいか、それを今でも引き継ぎすぎているような気がします。だから「アスタブリード」は家庭用シューティングの文脈をベースに、意図的にFPSとか洋ゲーとか今の最新ゲームの要素をなるべく入れてみようと。で、入れた結果……めちゃくちゃつまんなくなって(苦笑)。
一同:(笑)。
なる:一回それで全て作り直しました。結局、普通のシューティングがやっぱ面白いなあと。PS4への移植でも、標準でコントローラーに右スティックがついてるからそれを使えるようにしたら、自機があまりにも強くなりすぎて敵配置も全部変えないといけなくなって。担当者が全部やってくれてなんとかなったんですけど。
木村:「アスタブリード」は新世界を見た感覚があった。メカなんだけど、機体に魂が乗っているようなところとか、なんかいちいち設定を込めてあって。いろんなことを考えながら遊ぶわけですよ。ストーリーを読んでいる感が強いのに、並行してゲームを展開させて大丈夫なんだ! と思って。
なる:(シューティングは)バックストーリーが重要だな、とは思ってます。でも見せ方としては失敗していて、普通のストーリーの書き方をして普通にしゃべらせると、尺が足りないんですよ。僕はシューティングは1ステージ1分半くらいがちょうどいいなと思っているんですが、1分半ってボイス入れたら全然ストーリーを語れないんです。しかもゲームを遊びながらだと、キャラ同士の掛け合いもゆっくり聴けない。
今風のゲームを意識したつもりだったんですけど、参考にしたゲームをあらためてちゃんと見てみると、FPSとかでもバトル中はそんなに大したことはしゃべっていなくて、重要な話はバトルが終わって次の戦場へ移動する間とかに挟むようにしてる。だからシューティングをやってる後ろでキャラがたくさんしゃべるのはホントはよくないのかもしれないと思いました(笑)。ただ、そこを逆に評価してくれるユーザーさんも結構多くて、複雑な気持ちですね。
木村:散々ダメージを受けたところでイベントシーンに入ると、イベントの間に自機のシールドが回復していくじゃない。あれが大好きで、回復できてほっとする気持ちと、イベント音声を聴けるうれしさが重なるのが面白いと思って。
なる:そこはうまくいったところですね。見せ方で意識したのは、メガCD版の「シルフィード」でした。画面のスクロールがとにかくかっこよくて。
ZUN:「シルフィード」も「アスタブリード」も、見せたい部分以外をそぎ落としてるから、世界がとがって見えるんですよね。「BLACK BIRD」もそう。面白くて売れてるゲームにはそういうところがあって、逆に面白くないゲームは変なところを作りすぎている。
なる:演出の部分で言うと、「東方」は会話シーンで進行を止めてますよね。そこが一番違うと感じました。
木村:「東方」はよくできてるよね、付いてくるテキストと中で出てくるテキストを両方読むと、「こういうことだったんだ!」と合点がいく。「BLACK BIRD」は今回、「テキストは書かない」って冒頭で決めたんです。言葉のないコマ撮りアニメみたいなのをやりたかったから。でも、今はテキスト入れてもよかったかなって思ってる(笑)。さすがにボスの名前は出しちゃった。
ZUN:僕はテキストあってもいいと思いましたよ。ボスの名前出すんだったら、もうちょっと説明があってもよかった。
堀井:いやいや! 画面内に情報がいっぱいあって、あとは黙して語らず、それで触れてみたくなる、あれがいいんですよ!
「スクロール」には原初の楽しさがある
―― 一般的に、シューティングは1面を派手に、というのがセオリーですよね。「BLACK BIRD」は1面がセピア調で地味なのにちょっと驚きました。
木村:それには意味があって、1面から3面は庶民の世界で、4面は貴族の階級の世界だから。庶民の世界から始まって、やがて貴族の世界を滅ぼしに行くゲームなんです。
木村:海外のユーザーでズバリ言い当てた人がいるんだけど、僕は世の中の権力が嫌いなんだと思います。だからそういう権力批判みたいなところもあって、例えばでかい観覧車のボスを攻撃していくと中から最後ネズミが出てくるんだけど、「どうせ偉そうな車とか乗ってるやつも中身はネズミみたいなもんなんだろ?」っていう……自分で説明するの恥ずかしいからこれくらいにしよ(笑)。
―― シューティングってスコアを稼ごうとすると反復して遊ぶことになるんですけど、遊ぶたびにいろんな発見があるゲームですよね。
木村:あと短いでしょ、このゲーム。これは開発の冒頭から短くしようと考えてました。スコアアタックをするようになったら、長々とプレイするよりも短く繰り返して短く終わりたい。早くクリアした方が点数が高くなる、その方がいいと考えたんです。プレイ時間も、昔ならみんな「10時間ほしいよね」とか「1週間遊べた方がいいよね」とか言うんだけど。
ZUN:その1プレイが短いところがいいんですよね。僕もそう思うんですけど、でも、多くの人はそう思ってない(笑)。
なる:シューティングちゃんと遊ぶ人にとっては短い方がいいですよ。
堀井:1プレイが短くても、結果として累計256時間遊んでしまいました! となるほうが楽しいですよね。
木村:でもそういう「短くても反復して遊べるのがいい」って方向に傾いていかないと2000円でゲーム売れないんですよ。
―― 「BLACK BIRD」は1周だいたい20分くらいですね。
木村:ノーマルモードで初心者がゆっくりやると30分くらい、スコアを稼ごうとすると1面3分くらいがボーナスがつくラインなので、3分3分3分3分で、ボスを入れるとそれくらいになるのかな。
―― ZUNさんの「東方」は、どうやって時間を決めていますか。
ZUN:1面あたり何分くらい、というのは考えていて、後半ほど長くなります。最初の方は1ループ1分程度でボスが出てすぐ終わる。4面は長くして6面は短くする、とか。僕の中でそういう盛り上がりの感覚があって、全部通してみると大体30分か40分くらい。
人間がその世界に入れる、入って飽きないギリギリの時間がこれくらいで、これを過ぎると多分集中力が途切れるんです。あと、これ以上は長すぎるけどこれ以下では味わい足りない、みたいな感覚も自分の中にあって、大体1分あればなんとか盛り上げられる。初めて30秒でサビが来て、曲がループするあたりからボスを出してボスの曲に変えるとか、そんな感じで音楽に合わせてステージの長さが決まってくる。
木村:ステージの話で思い出したんだけど、子供のころ、ノートとかに妄想で自分だけのシューティングの画面とか書いたりしなかった?
ZUN:マイ「グラディウス」を書きましたね(笑)。
―― 僕も「R-TYPE」みたいなゲームの妄想イラスト書いたりしてました。
木村:細長い紙とかに横長の地図や世界を描いて、巻物みたいにして遊んだりね。紙を引っぱっていくと、次から次へと新しい世界が見えてくる。それだけでもう面白いわけですよ。そういう原初的な楽しさがあるよねシューティングって。
堀井:スクロールの語源がまさに巻物(Scroll)ですからね。
ZUN:シューティングの強制スクロールの良さって、長く生きていれば先が見られるところなんですよ。自分はゲームの説明に「死ななければ先に進める」って書いてます。倒せなくてもボスは勝手に自爆して去っていきますしね。
―― 確かに、他のジャンルは何かしないと進まないものが多いけど、シューティングは生き残ってさえいればその時間分だけ先が見られる。
ZUN:そうすると積極的に撃ち込みにいくゲームよりも、避けているゲームの方が(ジャンルとしては)合うんです。だから弾幕ゲーになっていく。
「東方Project」はなぜここまでの人気を獲得できたのか
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