ジブリ美術館1年半ぶりの新企画展示「映画を塗る仕事」展いよいよスタート 貴重なセル画約200点

貴重な資料がどっさり。

» 2018年11月16日 23時00分 公開
[福田瑠千代ねとらぼ]

 三鷹の森ジブリ美術館で企画展示「映画を塗る仕事」展が11月17日から始まります。前回の「食べるを描く。」以来、約1年半ぶりとなる新企画展。16日に行われたメディア向け内覧会のレポートをお届けします。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 入り口ではトトロがお出迎え

こんなに複雑なのを手作業で? 宮崎監督「そうだよ」

 内覧会では会見が行われ、館長の安西香月さんから展示の説明がありました。企画のきっかけとなったのは2年半前に美術館を大幅修繕したとき。当時展示されていたセル画が劣化してきていたことに気付き、張り替えのためスタジオを訪れたところ、手の混んだセル画を大量に発見。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 展示の様子

 着色作業は今でこそデジタルで行われますが、かつてはセル画を用いた手作業で行われていました。おまけにアニメーションの場合1枚だけ塗れば良いというわけではなく、特にセル時代には何枚も塗る膨大な手間暇が必要でした。こんなに複雑なものを手で塗っていたのかとその場にいた宮崎駿監督に訪ねたところ、「そうだよ」とあっけなく答えられた衝撃が「映画を塗る仕事」展の契機になったのだと、安西さん。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 中央に三鷹の森ジブリ美術館館長の安西香月さん。左右には協賛企業を代表して丸紅新電力 代表取締役社長の西山大輔さん(写真左)と、日清製粉グループ本社総務本部広報部長の町田英樹さん(写真右)

 会見では色彩表現の豊かさを示す例として、「となりのトトロ」に登場するネコバスについて解説がありました。アニメでは時間経過などを表すためにシーンごとに色が作られますが、今回取り上げられたのはネコバスの「黄昏色」「夕方色」「街灯色」。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 ネコバスのパネル。これが「黄昏色」「夕方色」

 「黄昏色」は妹のメイが行方不明になり、途方に暮れるさつきの元にネコバスが走ってくる、ほんのささやかなシーンのために考えられた色。黄昏時には日が落ちきっていないため、ネコバスは通常よりやや暗い色にはなっているものの、車内の電気も付いていません。続いての「夕方色」はメイが見つかったころの時間。だいぶ陽の光が弱くなっていることを表現するため、身体の色がさらに濃くなり、車内の照明も付いた状態に。

 そして最後に紹介されたのが「街灯色」。夜にお父さんをバス停で待っていて、なかなか来ないというシーンで用いられた色です。やってきたネコバスが街灯の光を浴びるため、いつもの茶色ではなく、やや緑色を帯びた独特な色味で塗られています。単体で見ると違和感がありますが、背景画に合わせると違和感がなくなるのだから不思議です。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 こちらが「街灯色」

 企画展では上記のネコバスの「時刻によって変わる色」の解説パネルはもちろん、「天候」「水の表現」「特殊な光」「リアリズムの追求」など、テーマごとにピックアップされたパネルを37枚展示。実際のセル画も196点が展示されるなど、濃密な内容になっています。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 宮崎監督が高畑監督と「長くつ下のピッピ」の制作準備中に感銘を受けたという、イワン・ビリービンによるロシアの絵本の挿絵の展示も。

三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 安西館長から、後のジブリ作品の水のゆらぎの表現に影響を与えた作品との紹介があったイラスト

三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 フィオに引っ張られる、水面に浮かんだポルコ。確かに水のゆらぎが特徴的

三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 セル絵具がずらり

三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 4分程度の解説映像も

 「映画を塗る仕事」展は 11月17日〜2019年11月(予定)まで開催。入場は日時指定の予約制で、毎月10日10時から翌月入場分のチケットを販売。チケットはWebのほか、ローソン店頭のLoppiからも予約可能です。


三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展 常設展示室にある色彩関連の展示も、今回の企画展の後に見ると新たな発見がありそうです

(C)Museo d'Arte Ghibli (C)Studio Ghibli



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  4. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」