「目には見えない見どころ」を探せ! 「横須賀トンネル旅」やってみた【観音崎・久里浜・衣笠編】:横須賀トンネルめぐり1日旅(2)(3/4 ページ)
目には見えない見どころってどれ? 「金子隧道」
横須賀市中央部の衣笠エリアに「金子隧道」はあります。トンネル南側から見て向かって左側が金子隧道、右が新金子隧道です。
金子隧道はれんが造りのよう。明治の古いトンネルかな? と思ってしまいますが、違います。よく見ると「剥がれ」がありますね。れんがのタイルで装飾をしているだけ。中身は平凡なコンクリート製のトンネルです。
なーんだと思うかもしれません。いえいえ。来歴を知ったら、きっと見に行きたくなるトンネルです。特に鉄道ファンならば大好物、新金子隧道は実は「計画途上で立ち消えになった路線の遺構」なのです。
三浦半島には幻に終わった京急の鉄道路線計画が多くあります。その1つが「武山(たけやま)線」。京急武山線はJR横須賀線の衣笠駅から三浦半島西岸の林地区までを結ぶ計画でした。
林地区には海軍施設があり、軍事色の濃い路線。昭和19年(1944年)に着工し、一部が完成したところで終戦を迎え、工事は中断。終戦から21年が経過した昭和41年(1966年)、正式に計画中止となります。長く休眠していた新金子隧道はこのときに道路用へと改修され、晴れて下り線として利用されるようになりました。
一方の金子隧道は昭和13年(1938年)に完成しました。当時は幅5.5メートル、高さ3.8メートルと今より小さいトンネルでした。昭和54年(1979年)に拡張工事が行われ、幅9.8メートル、高さ4.7メートルと大きくなりました。
拡張工事があった「証拠」がトンネル入り口付近の中央分離帯にあります。
置かれている石は改修前の金子隧道の扁額(へんがく)とキーストーン(要石)です。扁額は坑門に飾られる、トンネル名などを記したプレートのことです。よく見ると、右から左に読む戦前の表記で「金子隧道」と書かれています。キーストーンとは、アーチを構成するのに中央に置かれる大事な石のこと。どちらもトンネルを象徴するものですね。かつてのトンネルの活躍を伝える記念物が、ひっそりと置かれているのです。
一見、平凡なトンネルのようでも、調べてみると熱いドラマとか歴史が隠れています。平沼さんによれば、金子隧道は昭和にできたトンネルのはずなのに、明治時代の地形図を見ると既にトンネルが描かれているそうです。まだまだ謎が多いトンネルです。
お化けが出るウワサは、トンネルにとってステータス(!?)「千駄隧道」
トンネルといえば幽霊。心霊スポットになってしまうトンネルは数多くあります。この「千駄隧道」も例に漏れません。「お化けトンネル」という異名が付けられてしまいました。
もし心霊スポットになってしまうと、人が集まり、ゴミを散らかされるなどの弊害で地元の方に嫌がられることがあります。しかし「心霊スポットになることは、トンネルのステータス」と平沼さんは言います。「人の心を揺さぶるようなパワー」があふれるトンネルだからこそ、うわさが立つのです。さて、この千駄隧道は一体どんなパワーを持っているのでしょう。
最初に気が付くのは、その狭さ。ゴミ収集車が通るともう歩行者は通れません。車は当然すれ違うことなどできません。ちょー狭い。
次に気になるのは暗さです。トンネルは大抵は薄暗いものですが、地元の方の話によると、蛍光灯の照明が付いたのはここ数年のことだそうです。116メートルもの長さのトンネルに照明がなかったなんて、特に夜は真っ暗で怖かったことでしょうね。
こんなに小さくても、地元の方にとっては大事なトンネルです。トンネルができる前は、山を越えて小学校に通っていた人もいたそうです。トンネルの横にあった階段を見ると、すべり台を逆行するよりもはげしい斜度。毎日この山を越えることを想像すると、トンネルはお化けというよりも神様に見えてきます。
千駄隧道を北から南に抜けると、トビがピーヨロロロと海が近いことを教えてくれました。ちょっと歩けばそこは野比海岸。トンネルの楽しみである「ワープ感」を気持ちよく感じられる場所でした。
(次回予告)まだまだ続きます、横須賀トンネルめぐりの旅
さて、今回の「超愉快な喫茶店」「軍事要塞のトンネル」「武山線の遺構」「お化けトンネル」をめぐる旅、いかがでしたでしょうか? 横須賀トンネルカード第2弾で紹介しているトンネル10本のうち、6本が終了しました。残るは4本です。
残るトンネルも、線路の平面交差が見られる隧道やコンクリートブロックの美しい隧道ととっても楽しそうです!平沼さんが主宰するサイト「山さ行かねが」の長浦隧道レポートで予習しておくと、わくわく感がレベルアップすること間違いなしですよ!
次回もお楽しみにー!
「第2弾 横須賀トンネルカード」 キャンペーン
実施期間:2018年10月6日(土)〜2019年2月28日(木)
対象店舗:市内10店舗
主催:横須賀集客促進実行委員会(横須賀市、横須賀商工会議所、京浜急行電鉄)
公式サイト:ここはヨコスカ「第2弾横須賀トンネルカード」
監修:平沼義之氏 プロフィール
千葉県松戸市生まれ、東京都日野市在住。TV出演で注目を集めている廃道&隧道愛好家、フリーライター。WEBサイト「山さ行がねが」主宰。
「国道? 酷道!? 日本の道路120万キロ大研究」「廃道踏破 山さ行がねが」シリーズ(いずれも実業之日本社)などを執筆。最近は、廃道や隧道をテーマにしたトークイベントやツアーガイドも行っている。
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